1. リファレンスチェックのASHIATO
  2. お役立ち情報
  3. 経歴詐称は発覚後に解雇できる? リスクと見抜き方、対処方法を解説

経歴詐称は発覚後に解雇できる? リスクと見抜き方、対処方法を解説

お役立ちコンテンツ公開日最終更新日


中途採用の最初のステップとして行われることが多い書類選考。まずは、提出された履歴書や職務経歴書の内容を見て、自社が求めている人材なのか、必要なスキルや経験があるのか判断するかと思います。しかし、その書類に事実と異なる内容を記載してしまう「経歴詐称」が問題になることは、実は少なくありません。

経歴を偽っている人を採用してしまうと、期待していたパフォーマンスが出なかったり、他の社員からの反発が出たりと、社内の秩序が乱れるなどのリスクがあります。採用を行っている企業としては、経歴詐称は事前に見抜いてトラブルを避けたいものですし、採用後に経歴詐称が発覚した場合、解雇したいと考える場合もあるでしょう。

このコラムでは、どういった事項が経歴詐称にあたるのか? 発覚した場合に解雇できるのか? 経歴詐称を事前に見抜く方法はあるのか? といった疑問にお答えしていきます。



経歴詐称とは? あてはまる6つの代表的な項目

経歴詐称とは、「履歴書や職務経歴書に事実と違う経歴や実績を記載したり、面接の場で虚偽の申告をすること」であり、学歴詐称や職歴詐称の総称です。
 
ここではまず、経歴詐称にあたる代表的な6つの項目を見てみましょう。

学歴の詐称

大学名や、最終学歴を偽ることは代表的な経歴詐称の例です。これは大卒を高卒と偽った「逆学歴詐称」でも懲戒解雇になった事例がニュースになっていて、記憶に新しいかもしれません。他にも、留年や浪人を隠すために入学・卒業年度を偽るなどの行為も学歴の詐称にあたります。


転職回数・在籍期間の詐称

転職回数を少なく見せたり、転職に不利になるような早期退職を隠ぺいするために、一部の職歴を書かなかったり、複数社の在籍期間を合計して記載するなどの行為は経歴詐称にあたります。

年収の詐称

年収を水増しして申告することも詐称になります。主に年収交渉を有利にする目的で、現職や前職の年収を高く申告するようです。

資格・免許の詐称

取得していない資格や免許を、取得していると詐称するものも少なくありません。実際には不合格だったのに合格と記載する、3級しか取得していないのに1級と記載する、TOEICの点数を高く申告する、などがよくある事例です。

業務内容・職位の詐称

実際には経験のない業務内容についての詐称は、即戦力を求める中途採用において企業へのダメージが大きいものの1つです。具体的には、経験のない業務を行ったことがあると申告する、マネジメント人数を多く水増しするなどが挙げられます。

雇用形態の詐称

派遣社員や契約社員などの非正規雇用だった経歴を正社員雇用だったと偽るものだけでなく、正社員雇用で早期退職だった事実を隠ぺいするために契約社員だったとすることも経歴の詐称となります。


経歴詐称はなぜ発生する?どんなときに起こる?

経歴詐称はなぜ発生してしまうのでしょうか。ここでは3つの発生パターンをご紹介します。

 

無意識の記載ミス

採用候補者が採用書類に「意図しない記載ミス」をしてしまうケースがあります。具体例としては、有効期限を過ぎている資格の記載や、学校への入学・卒業年度や企業への在籍期間の誤りなどがあります。企業側としては、故意ではない可能性も考慮し、少しでも気になったら本人確認をするなどして、正しい情報を得る努力が必要といえるでしょう。
 

自ら評価向上を目論んだ詐称

採用される可能性を上げるために故意に詐称するケースです。学歴・職歴の詐称にはじまり、留年・浪人歴などの省略や、在籍期間、必要資格の有無を偽る場合などその内容は多岐にわたります。
 
これらの意図的な経歴詐称の背景には、採用に際して自分の評価を上げ、「採用確率を上げる」、あるいは「採用された場合の年収交渉を優位に進める」という目的があると考えられます。これぐらいは許されるだろう、という甘い考えが前提になっていることも多く、採用側も注意が必要です。
 

関係者にそそのかされての詐称

転職エージェントや紹介者など、採用に関わる利害関係者の助言によって、経歴詐称を行ってしまうケースがあります。候補者が採用されると発生する仲介手数料やインセンティブを目的に、このぐらい誰でもやっている、というような形で、いわゆる経歴を「盛る」行為を勧めてしまうのです。


経歴詐称した人を雇用するリスク

経歴を詐称した人を雇用した場合、企業には様々なリスクが生じます。
例えば「学歴」「職歴」「資格・免許」等の項目を詐称して入社した場合、企業が求めるレベルに対して業務に関するスキルや知識が不足し、期待している成果をあげられない可能性があります。

また、意図的な経歴詐称を行う人物の場合、誠実さに欠けていたり、コンプライアンス意識が低かったりする場合があります。
これらが原因となってトラブルに発展すると、社内の秩序が乱れたり、企業イメージが損なわれることになる可能性もあります。

▼「問題のある社員」のより詳しい記事はこちら
問題社員とは?正しい対応や適切な解雇方法はある?特徴と対処を事例付きで解説
モンスター社員とは? タイプごとの特徴と対処法。採用しないための方法を解説


経歴詐称が発覚した社員は解雇できる?発覚した時の対処方法



経歴詐称と一口に言っても、違法性の高い重大なものからちょっとしたミスや嘘まで、幅があるため、一概に解雇理由にできるというわけではありません。ここからはどういった場合に懲戒解雇、または一般解雇にできるのかを解説していきます。

懲戒事由にあたるのは「重大な経歴の詐称」

経歴詐称が懲戒解雇の事由になる1つの基準として、「重大な経歴の詐称」であったかどうかがポイントになります。詐称の内容がこの基準にあてはまり、かつ、会社の就業規則内に経歴詐称が懲戒解雇理由として挙げられている必要があります。

この「重大な経歴の詐称」とは、その経歴詐称が事前に発覚していた場合には、会社が雇用契約を締結しなかった、もしくは、少なくとも同一条件での契約にならなかったと認められ、客観的に見てもその判断が相当な場合を指しています。主には「最終学歴」「職歴」「犯罪歴」などがこれにあたります。

経歴詐称で「懲戒解雇」になるのか?

経歴詐称が発覚し対処する場合、解雇という選択肢があります。その中でも「懲戒解雇」と「普通解雇」、どちらになるかによって処遇が変わってきます。


普通解雇とは

普通解雇とは、会社側が一方的に従業員との労働契約を解約することです。通常、解雇予定日の30日以上前の予告が必要で、解雇予定日まで30日を切っている場合は、不足した日数分の解雇予告手当の支給が必要になります。また、退職金も支払われることが一般的です。採用時の経歴詐称については、就業規則に記載がない場合はこの普通解雇として処分することになります。

懲戒解雇とは

懲戒解雇とは、就業規則に基づく労働者への懲戒処分として行う解雇です。懲戒解雇の場合は普通解雇と異なり、違反行為に対する制裁という扱いなので、30日以上前の予告なしに即日解雇することができ、就業規則に基づいて退職金を支払わないことも可能です。

重大な経歴の詐称について就業規則での規定があれば、この懲戒解雇の扱いになることがありますが、懲戒解雇はかなり重い処分のため、解雇権濫用にあたらないか注意が必要です。

それぞれ、実際の判例をご紹介します。


「重大な経歴の詐称」で懲戒解雇になる可能性があるパターン


学歴詐称

自動車教習所の指導員が、高校中退を高校卒業と偽って採用されていたため、懲戒解雇となった判例があります。(正興産業事件 浦和地裁川越支部 平成6.11.10)

また、「逆学歴詐称」についても、令和3年、実際は4年制大学を卒業していたのに、高卒と偽って採用された神戸市の水道局職員が懲戒免職処分となった事例があります。大卒の採用試験での合格は難しいと考えたため、高卒の採用試験を受けるために学歴を詐称したということです。

▼「学歴詐称を見抜く方法」のより詳しい記事はこちら


職歴詐称

雇用契約時に、給排水工事について5年の経験があり、どのような仕事でもできると述べていたにもかかわらず、実際にはあまり経験がなかったことが発覚し、懲戒解雇が有効とされました。(環境サービス事件 東京地裁 平成6.3.30)

他にも、プログラム開発がほとんどできないのに、できるかのように詐称して採用された労働者に対する懲戒解雇が有効と判断された事例もあります。(グラバス事件 東京地裁 平成16.12.17)

一方で、職歴を偽って給与の増額を行っていたにもかかわらず、実際プログラミングはほとんどできなかったエンジニアに対しての普通解雇が認められたものの、「真実を告知していたら採用しなかったであろう重大な経歴の詐称」にはあたらないとして懲戒解雇が否定された事例もあります。(KPIソリューションズ事件 東京地裁 平成27.6.2)

「重大な経歴の詐称」にあたるかどうかが、懲戒解雇か普通解雇かの判断の重要なポイントになっています。

▼「職歴詐称を見抜く方法」のより詳しい記事はこちら


犯罪歴

採用選考当時、公務執行妨害などの罪で有罪とされ釈放中だったにもかかわらず、履歴書の賞罰欄には「賞罰なし」と記載し、面接時も起訴されていることを隠して採用された労働者が、経歴の詐称などで懲戒解雇になっています。(炭研精工事件 最一小判平3.9.19)

犯罪歴に関しては、事例のように有罪が確定しているものについては申告の義務がありますが、それ以外の逮捕歴や起訴の経験などについては、直接問われない限り積極的に告知しなくてもよいとされる例が多いようです。



経歴詐称はどんなときにバレる?見極め方について



このように、経歴詐称が裁判沙汰にまでなることは少なくなく、時間も労力もかかるため、トラブルは事前に見抜いて防ぎたいところです。採用前に経歴詐称を見抜く工夫としては、以下が挙げられるでしょう。

提出書類や面接でのヒアリングで発見する

提出書類は、履歴書と職務経歴書だけの会社も多いと思いますが、あらかじめ経歴を保証するような資料の提出を志願者に依頼しておくのも1つの手です。
・学歴・資格:卒業証明書、資格証明書
・職歴:退職証明書、雇用保険被保険者証、源泉徴収票
などと突き合わせて確認すれば、履歴書や職務経歴書の内容が本当か確認できます。

また、面接時に履歴書の空白期間や、職歴についての突っ込んだ質問をすることでも、怪しい点がないか確認することができます。
特に職歴については、その仕事を行っていた当時のエピソードや数値感など、具体的な質問をするようにしましょう。回答があやふやだったり、具体的な話について明確に答えられないなど、怪しいなと感じるところはとことん聞くことで、本当の能力や経験を引き出すことができます。

リファレンスチェックを導入する

経歴詐称を防ぐ手段として、もう1つ挙げられるのがリファレンスチェックです。
リファレンスチェックとは、企業、または委託を受けた外部業者が候補者の同僚や元上司、部下などの関係者から、その仕事ぶりや人となりについてヒアリングを行うことです。

本人の申告しか情報がない面接や書類審査と異なり、一緒に働いていた人からの客観的な情報を手に入れることができるため、経歴の信憑性を確かめるうえでは非常に有効な手段です

エン・ジャパンが運営する転職サイト『ミドルの転職』を利用する35歳以上のユーザーへのアンケートによると、リファレンスチェックに対する年収1000万円以上のミドルの認知度は7割近くに達しています。さらに、リファレンスチェックを利用するメリットとして最も多く挙げられたのが「面接内容や職務経歴書が事実であることの裏付けができる」という理由です。つまり、経歴詐称のチェックができることが既に広く知られ、実際に活用されている現状がよくわかります。

【図3】リファレンスチェックのメリットだと感じることを教えてください。(複数回答可)
 
また、採用合否に関わる経歴詐称を見抜くことを目的としてリファレンスチェックを行う場合は、「内定前」に実施することがおすすめです。

▼「リファレンスチェックの実施タイミングについて」のより詳しい記事はこちら

▼「経歴詐称が発覚するタイミング」のより詳しい記事はこちら


入社後も活用できるリファレンスチェック「ASHIATO(アシアト)」とは

「ASHIATO」はエン・ジャパンが提供するリファレンスチェックサービスです。
リファレンスチェックを挟むことによって、候補者の経歴について第三者からの情報を得ることができ、実際の働きぶりが分かったり、経歴詐称の発見につながるケースもあります。

顔見知りが回答するリファレンスチェックだと、候補者に有利な回答しか返ってこないのではないか、気になる方も多いかと思いますが、「ASHIATO」ではエン・ジャパンが長年培ってきたノウハウをもとに、候補者についての事実情報や人物像が具体的に引き出せるような設問が設定されていますので、一般的なリファレンスチェックよりも、より客観的な視点での回答が得られるようになっています。

また、選考時の経歴のチェックにも使えるのはもちろん、採用後もオンボーディングに使えるレポートを提供しているのが特徴です。入社受け入れ時の相互理解を深めることで活躍の可能性を高め、離職のリスクも低減させることができます。

しかも1人あたりの調査価格もリーズナブルで導入しやすいのがうれしいポイントです。
リリースから約2年で2000社以上の導入実績があり、注目度の高い「ASHIATO」。経歴詐称を防ぎたい人事担当者様はぜひ、お問い合わせください。


▼関連記事
履歴書に嘘を書くと犯罪? 嘘を書いてはいけない理由と、発覚時の対応方法
学歴詐称は犯罪? 採用時に履歴書から詐称を見抜くには
ASHIATO編集部

この記事を書いた人

ASHIATO編集部

人事・採用担当者などのビジネスパーソン向けにお役立ち情報を発信しています!