リファレンスチェックとは
そもそもリファレンスチェックとはどのようなものなのか、言葉の定義や質問内容、どんなフローで行われるのかをご紹介します。
言葉の定義・概要
「リファレンスチェック」とは、「採用候補者の現職(または前職)の上司、部下、同僚といった関係者に本人の経歴・実績、仕事ぶり、人柄などを問い合わせること」をいいます。
コロナ禍でオンライン面接が増え、面接での見極めがより難しくなったことなどを背景に、日本でもリファレンスチェックの注目度が高まっています。
エン・ジャパン株式会社「ASHIATO」の調査では、リファレンスチェック導入企業の75%が採用ミスマッチの減少、71.5%が活躍人材の増加、72%が早期離職の低減を実感しています。
リファレンスチェックの実施率
実際、エンワールド・ジャパン株式会社が2021年に行った調査では、リファレンスチェックは既に41%の企業で実施されています(外資系企業は58%、日系企業は23%)。
また、リファレンスチェック自体の認知率が外資系企業で93%、日系企業で73%である現状から考えても、認知が広がるにつれ、さらに実施率も向上していくことが予想されます。
リファレンスチェックの質問内容と扱う情報
リファレンスチェックでは、
・経歴
・仕事の実績やスキル
・仕事に対する価値観
・勤務状況・勤務態度
・人柄や人間関係の築き方
といった内容を推薦者(回答者)に尋ねます。
個人情報やプライバシーに関わる情報も扱うため、採用候補者本人の同意を得なければ実施することが出来ません。
▼関連記事「リファレンスチェックの質問内容」についてのより詳しい記事はこちら
どのようなフローで実施される?
オンライン上で完結するリファレンスチェックサービスの場合、調査は以下のようなフローで実施され、採用候補者の現職(前職)の関係者から回答をもらいます。
リファレンスチェックは調査会社に依頼したり、採用企業の担当者が自分で行うこともありますが、大まかな流れは上記と同様です。どの方法においても本人の同意を得ずに行うことは出来ません 。ただし、連絡方法については、本人を介さずに候補者の現職(前職)の企業に直接電話やメールで連絡をとるパターンもあります。
リファレンスチェックはなぜ「怖い」
リファレンスチェックのどのような点が「怖い」と思われているのでしょうか? よくある3つのケースをご紹介します。
昭和的な身辺調査との混同
リファレンスチェックのことをよく知らずに、昔ながらの採用前調査のイメージで「怖い」と思っている方が一定数います。本人の同意を得ない調査や、周囲に迷惑がかかる不適切な聞き取り調査によってプライバシーが脅かされるのではないかと危惧する候補者もいるかもしれません。
しかし現代のリファレンスチェックでは、個人情報保護法に抵触しないよう本人への利用目的通知と同意取得が必要ですし、厚生労働省の指針により「応募者の適正・能力とは関係のない事柄」は把握はしないよう推奨されているため、コンプライアンスを重視した企業ではそれらの点に配慮した調査を行っています。
ア 公正な採用選考を行うことは、家族状況や生活環境といった、応募者の適性・能力とは関係ない事柄で採否を決定しないということです。
そのため、応募者の適性 ・能力に関係のない事柄について、応募用紙に記入させたり、面接で質問することなどによって把握しないようにすることが重要です。これらの事項は採用基準としないつもりでも、把握すれば結果としてどうしても採否決定に影響を与えることになってしまい、就職差別につながるおそれがあります。
イ なお、個人情報保護の観点からも、職業安定法第5条の4及び平成11年告示第141号により、社会的差別の原因となるおそれのある個人情報などの収集は原則として認められません。(注:これらの法令中の「公共職業安定所等」「職業紹介事業者等」には、「労働者の募集を行う者」も含まれます。)
引用元:厚生労働省ホームページ 『公正な採用選考の基本 (2) 公正な採用選考を行うためには・・・・』
経歴詐称や秘匿情報が「バレる」ことが怖いケース
採用選考で提出している情報に経歴の詐称や誇張があったり、過去の大きなトラブルについて隠している候補者が、その内容が「バレる」のではないかと不安に思っているケースもあります。
リファレンスチェックを実施する理由の1つは、このような人物が採用候補となっていないか見極めることですので、企業としてはこのような理由に配慮してリファレンスチェックの実施をためらう必要はありません。
▼関連記事「経歴詐称」についてのより詳しい記事はこちら
辞職意向が関係者に知れ渡ることが怖いケース
現職の関係者に辞職意向が知れ渡ってしまうことが「怖い」と思う方も多くいます。実際、リファレンスチェックを行えば、企業への在席確認や推薦者(回答者)への回答依頼の時に、転職活動を実施していることが伝わります。
しかし、転職意向はリファレンスチェックが無くともいずれ伝えなければならないものです。推薦依頼を一つのきっかけとして、円満退職に向けてリファレンスチェックのやり取りをうまく活用できているケースもあります。
もし、現職の上司や同僚に回答を依頼できない場合は、採用企業と相談の上、取引先や前々職の関係者に依頼するという選択肢もあるでしょう。採用企業としては、リファレンスチェックの実施体制が信頼のおけるものだと候補者に伝え、余計な不安を取り除きたいところです。
リファレンスチェックで落ちることはある? 断ることは可能?
リファレンスチェックの実施自体ではなく、「リファレンスチェックの結果が原因で不合格になるのが怖い」という候補者もいるでしょう。もちろん、リファレンスチェックの結果は選考のために利用され、ネガティブな情報が企業に伝わることもあります。しかし同時に候補者のポジティブな面が推薦者から伝えられるケースもありますし、それは候補者が面接や職務経歴書でアピールできていなかった事項かもしれません。決してマイナスに働くだけの調査ではないと、求人者・採用企業の双方が意識すべきでしょう。
また、リファレンスチェックの結果をもとに内定を取り消すことは困難です。内定は労働契約とみなされ、「労働契約法」が適用されます。「解雇権の濫用」にあたる恐れがあるため、客観的に見て合理的な理由がなければ、内定提示後にそれを取り消すことはできません。
(解雇)
第十六条 解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。
引用元:『労働契約法 第三章 労働契約の継続及び終了』
内定後にリファレンスチェックを行っても合否判断には利用できないので、実施は内定前がおすすめです。特に、最終面接の前に行えば、リファレンスチェック結果を最後の面接内容に活かすことが出来ます。リファレンスチェックの実施には、採用候補者の同意が必ず必要です。知らない内に調査されていた、といったことはないので候補者にとっては安心です。リファレンスチェックの実施を採用候補者が断ることは問題ありません。それをどう判断するかは各企業の判断になりますが、企業は実施が難しい理由を確認のうえ、事情を加味して採用候補者に寄り添うことも必要になります。▼関連記事「リファレンスチェックで不採用になるケース」のより詳しい記事はこちらリファレンスチェックが原因で不採用になることはある? 不採用に繋がるケースと留意点を解説 リファレンスチェックが怖くない理由
採用候補者にとってリファレンスチェックが怖くない理由をさらに深ぼって解説します。候補者がリファレンスチェックは怖いと考えている場合は、不安を和らげるために以下のような理由を説明すると良いでしょう。 コンプライアンスへ配慮があり、勝手に実施されることはない
信頼できる調査会社やオンラインサービスの場合、法令を遵守してリファレンスチェックを実施しています。個人情報保護法に抵触しないよう、本人へは利用目的が通知され、必ず同意が取得されます。
▼「リファレンスチェックの同意」のより詳しい記事はこちら
推薦者選びには複数の選択肢がある
在職中に転職活動を行っていて現職関係者に辞職意向がバレたくない方、採用企業が指定した人物との関係性が良くないためにリファレンスチェックを頼みづらい方の場合、推薦者(回答者)を変更するという方法があります。
そのような理由でリファレンスチェックを悩んでいる候補者には、辞職意向を明かすことが出来る信頼のおける方や、直属の上司以外で本人の業務内容を把握している他チームの上司や取引先などに、推薦者を変更できる旨を伝えるのがおすすめです。
もし、採用候補者が指定した推薦者の「なりすまし」を危惧するのであれば、推薦者の本人確認をきちんと行っているリファレンスチェックサービスを選んで利用しましょう。
▼「リファレンスチェックのなりすまし」のより詳しい記事はこちら
ネガティブチェックだけでなく候補者のメリットも大きい
採用前調査はネガティブチェックのイメージが強いかもしれませんが、リファレンスチェックの場合は候補者にもメリットがあります。上述のとおり、候補者をよく知る推薦者から客観的に見た良い点が企業に共有されるため、「面接が苦手」「自己アピールの仕方がわからない」といった人材にとっては思わぬ加点を得られることがあります。
エン・ジャパンが運営 するリファレンスチェックサービスASHIATOが人事向けに実施した調査では、リファレンスチェックの実施により「採用候補者の面接ではわからなかったポジティブな発見があった」と回答した担当者は82.5%にもおよびました。実際に、ASHIATOでは「リファレンスチェックの結果が元で、採用につながった」といった事例も少なくありません。
仕事の進め方や周囲との人間関係の築き方に関する客観的な情報は、入社後の研修や人員配置を考える上でも利用でき、候補者の定着や早期活躍のために役立つでしょう。
リファレンスチェックの実施方法は?
では実際にリファレンスチェックを実施するにはどのような選択肢があるのでしょうか。ここでは、代表的な3つの選択肢について紹介します。
企業が独自に実施
企業の採用担当者がリファレンスチェックを独力で行うことも選択肢の一つです。その場合は、採用候補者はもちろん、候補者の前職企業や関係者に直接接触する必要があります。
この場合社外への支払いは発生しませんが、担当者の業務が増え ることや、依頼から社内向けレポート作成まで2週間程度が見込まれることを考えると、簡単とは言えない方法です。
調査会社を利用
調査会社にリファレンスチェックを委託する選択肢もあります。電話での聞き取り調査や裏取りを代行してもらうことができ、人事の負荷削減につながります。プロの調査員が聞き取りを実施することで、詳細なレポートを得られる可能性が高いことも特長です。
一方でコストの負担は大きく、調査の内容や方法によっても異なりますが、1件あたり10万円程度からの会社が多くなっています。また、調査会社がコンプライアンスを遵守した調査を実施しているか否かを完全に把握することは難しく、この点に一定の企業倫理上のリスクが存在するとも考えられます。
オンラインサービスを利用
昨今主流になりつつあるのが、オンライン完結型のリファレンスチェックサービスです。採用企業側は簡単な情報入力を行って候補者に連絡した後は、推薦者からの回答をもとに作成されるレポートを待つのみであるという手軽さや、既存の採用フローに導入しやすい点で注目が集まっています。
また採用大手が運営するような信頼度の高いリファレンスチェックサ ービスであれば、個人情報保護や情報セキュリティの観点も安心で、候補者が怖さを感じずに調査実施を受け入れやすい、という特長があります。
▼関連記事「リファレンスチェックの実施方法」のより詳しい記事はこちら
リファレンスチェックサービス『ASHIATO(アシアト)』なら候補者も安心