リファレンスチェックは拒否可能?
候補者がリファレンスチェックの実施を断ること自体に、違法性を含めて問題はありません。むし ろ、企業側は内定提示後にリファレンスチェックの実施とそれを参考にした「内定取り消し」を行った場合、「解雇権の濫用」の観点で違法性を問われる可能性があります。一方、内定前であれば、リファレンスチェックの拒否は、一つの意思表示にはなりますが、それをどう評価するかは企業ごとの個別の判断になります。また前提として、リファレンスチェックはその実施内容について候補者の同意が必要な調査です。採用企業としては、頭ごなしにリファレンスチェックを断る候補者に不信感を持つのではなく、拒否する背景に寄り添う努力も必要でしょう。 リファレンスチェックは採用判断に影響する?
リファレンスチェックに対して採用候補者が拒否反応を示す背景にある「リファレンスチェックの影響度の大きさ」について、データを参考に考えてみましょう。下の図は、エンワールド・ジャパンがリファレンスチェックを実施している企業に行った2021年のアンケートです。「リファレンスチェックで得た情報が採用の判断にどの程度影響しているか」という質問に対して、「採用の判断に影響している」(大きく影響している、少し影響している)と回答した企業は68%と高い数字になっています。■質問「リファレンスチェックで得た情報は、採用判断にどの程度影響していますか。」参考:エンワールド・ジャパン『中途採用における、リファレンスチェック実施状況調査』また興味深いことに、日系企業の回答が外資系企業の回答を19ポイント上回り(外資系企業:62%、日系企業:81%)、リファレンスチェックを行っている割合は外資系企業が高い一方で、採用判断への影響度は日系企業の方が高い、という実態が見て取れます。このような、「採用の合否に大きな影響を及ぼす」という事実が、リファレンスチェックを拒否する背景になっていると考えられます。▼「リファレンスチェックと採用判断」のより詳しい記事はこちらリファレンスチェックが原因で不採用になることはある? 不採用に繋がるケースと留意点を解説 リファレンスチェックが拒否される理由
海外ではリファレンスチェックを採用活動に導入している企業が約95%に及ぶほど一般化していますが、日本での浸透度はまだ低く、候補者や推薦者がリファレンスチェックを断る可能性も考えられます。ここではまず、リファレンスチェックが拒否される理由として考えられるパターンを解説していきます。 候補者にリファレンスチェックを拒否される理由
リファレンスチェックを候補者が拒否する背景として、第一に「リファレンスチェックに対する不安感」が考えられます。
例えば、在職中に転職活動を行っている場合、候補者は上司や同僚に転職活動をしていることや退職を考えていることを知られたくない、あるいは、頼める人が思いつかない、といった懸念を感じることが想像できます。
また、転職前の会社のメンバーや上司との関係性が悪く、ネガ ティブな内容で回答されてしまうのではないか、と不安を覚える方もいるかもしれません。
場合によっては、候補者が採用応募書類や面接で、学歴・職歴・実績などを詐称していたり、誇張して伝えてしまっている場合も、その発覚を恐れて、リファレンスチェックを拒否することが考えられます。
推薦者や前職の企業に回答を拒否される理由
通常、候補者の前職・現職の上司や同僚に対してリファレンスチェックの回答を依頼する場合が多いですが、その推薦者や企業に回答を拒否されてしまう、といった場合もあります。
そもそも退職してほしくないという思いや、社員の個人情報を他社に伝えることへの抵抗感、多忙のため回答の時間を確保できない、といった理由が主に考えられます。
他にも、候補者との関係性が悪く転職活動への協力意識が薄かったり、自身の回答内容によって合否が左右される責任を感じて拒否をする、といったケースもありえます。
リファレンスチェックを拒否されてしまった場合の対処法
それでは、リファレンスチェックを拒否されてしまった際はどうすればよいのでしょうか? 対処法をご説明していきます。 リファレンスチェックを拒否する理由を丁寧に確認する
まずは、なぜリファレンスチェックを拒否したいと考えているのか、その背景を丁寧に確認することが重要です。候補者本人が拒否したいのか、それとも推薦者や企業側の意向なのか、といった点の確認から、拒否理由を深掘りしてヒアリングすることが大切です。
前職・現職の上司や同僚以外の推薦者を検討する
もし、当初想定または指定していた推薦人がリファレンスチェックの回答依頼を拒否してしまった場合は、依頼できる別の関係者がいないか、候補者に選択肢の幅を提示する、という打ち手があります。
別の同僚や後輩、前職の上司、取引先であれば依頼できる、といった場合もありますので、回答を依頼する対象者は、状況に応じて柔軟に考えましょう。
推薦者がいない情報も加味して、他の採用手法を検討する
元同僚・上司の関係性によっては、どうして も推薦者がいない、という場合も考えられますが、その事実もまた採用における1つの客観的情報になり得ます。
もちろん、候補者の前職がいわゆるブラック企業であるなど、候補者に否がなく推薦者を選定するのが難しい状況も想像できます。推薦者がいないという事実を加味しつつ、リファレンスチェック以外の選考方法と合わせて総合的に候補者を見極めましょう。
リファレンスチェックを拒否されないための工夫
そもそも拒否されることを回避するのも重要です。以下ではそのための工夫をご紹介します。
早い段階で候補者にリファレンスチェック実施の旨を伝える
リファレンスチェックを実施する旨を、早期に候補者へ伝えておくことを推奨します。事前に伝達をすることで、リファレンスチェックより前の段階で行う書類選考や面接時の経歴詐称を防止する効果もあり、伝達内容と実情のズレを気にしてリファレンスチェックを拒否される、といった事象も防ぐことができます。また、早いタイミングから候補者に、推薦者探しを進めてもらうことで、最初に検討していた推薦者に拒否された場合でも、別の選択肢に変える調整が容易になります。>採用候補者へのリファレンスチェックの依頼については、こちらも参考にご覧ください
リファレンスチェックガイドー採用候補者への依頼編ー 候補者にとってのメリットも伝達する
リファレンスチェックを実施することが、企業側にとってのみならず候補者にとってもメリットがあると伝達することも有効です。
候補者にとっての主なメリットとしては以下があります。
書類や面接で伝えきれなかった強みや経験をアピールできる
書類や面接で自身を最大限アピールできることが理想ではありますが、実際は緊張や時間の制約により全てを伝えることは難しいです。更に、コロナ禍で採用活動がオンライン化しており、慣れないオンライン面接でアピールしきれなかった、という候補者も多く存在します。リファレンスチェックの内容によっては、自身がアピールしきれなかったり、認識できていなかった強みを伝えることができます。
自分の適性を活かせる配属となる可能性が高まる
入社後のミスマッチを防ぐことができる
入社後のミスマッチは、企業側にとってだけでなく、候補者にとってもデメリットが大きいです。自分がフィットしない企業に就職してしまう可能性を下げることができることも、候補者にとってのメリットと言えます。▼「リファレンスチェックとミスマッチ」のより詳しい記事はこちらミスマッチとは? アンマッチとの違いや原因、対策を解説 ツールを導入し、候補者と推薦者の負担を軽減する
候補者と推薦者の負担を軽減するために、効率的に情報入力が可能なリファレンスチェックツール・サービスの導入を推奨します。
採用候補者と推薦者がリファレンスチェックに費やす時間を最小限にとどめ、信頼できるツール上で、安心してレポート作成ができることが、何よりも拒否率を下げる上で重要だと考えられます。
例えば、エン・ジャパンのリファレンスチェックサービス「ASHIATO」であれば、採用企業での候補者情報登録などは1人当たり約5分、推薦者からの回答は平均3営業日以内と、採用選考のスピードを落とさずにリファレンスチェックを取り入れることができます。
リファレンスチェックを受ける候補者や推薦者にとって、仲介するサービスを大手が運営しているということも、大きな安心ポイントになるでしょう。
リファレンスチェックサービス「ASHIATO(アシアト)」という選択肢