昨今、人事領域において「オンボーディング(on-boarding)」という言葉に注目が集まっています。欧米では一般化している概念ですが、日本では新人研修やOJTと混同されているケースもあり、正しい認知を獲得できているとは言い切れない現状です。本コラムではオンボーディングを紹介するとともに、効果的に実施できる一助となるように具体的にプロセスも解説します。
オンボーディングとは? 意味や実施のメリット、具体的な手順を解説
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昨今、人事領域において「オンボーディング(on-boarding)」という言葉に注目が集まっています。欧米では一般化している概念ですが、日本では新人研修やOJTと混同されているケースもあり、正しい認知を獲得できているとは言い切れない現状です。本コラムではオンボーディングを紹介するとともに、効果的に実施できる一助となるように具体的にプロセスも解説します。
オンボーディングとは?
オンボーディングとは、もともと英語のOn-boardという、「飛行機や船に乗る」という意味の単語から生まれたもので、船や飛行機に新しく乗り込んだ乗船員や乗客に対して、新しい環境に慣れてもらうためのサポートを実施すること、を指していました。そこから派生して、人事用語としては、新入社員が活躍できるように組織の一員として定着させ、早期戦力化させる一連のプロセスのことを「オンボーディング」と呼ぶようになりました。
これまでの新人研修・OJTとオンボーディングの違い
従来日本では新入社員のサポートとしては、新卒社員であれば新人研修、中途社員であればOJTがメジャーでしたが、オンボーディングはこれらの手法と何が違うのでしょうか? いくつかポイントを紹介します。
新人研修との違い
新人研修は新卒社員向けであることが一般的でしたが、オンボーディングの対象は新卒社員から中途社員、エグゼクティブ人材までと、対象は絞られていません。
また、新人研修は、会社や業務の紹介・オリエンテーションをメインとしているため、短期間で集中的に行われていることが多いのですが、オンボーディングは「新規入社者の戦力化には継続的なサポートが必要」という思想のもと、中長期的な取り組みとして考えられています。
また、新人研修は、会社や業務の紹介・オリエンテーションをメインとしているため、短期間で集中的に行われていることが多いのですが、オンボーディングは「新規入社者の戦力化には継続的なサポートが必要」という思想のもと、中長期的な取り組みとして考えられています。
OJTとの違い
OJT(On The Job Training)は、新入社員が先輩社 員の指導のもと、実際の業務を通して仕事のやり方を覚えていくというもので、あくまでも仕事の習得にフォーカスした取り組みです。
一方オンボーディングは、OJTを包括する概念であり、その取り組み範囲は広く、新任者との1on1ミーティングや歓迎会の実施などの組織施策までがスコープに入る、新人受け入れプロセスすべてを指す考え方です。
一方オンボーディングは、OJTを包括する概念であり、その取り組み範囲は広く、新任者との1on1ミーティングや歓迎会の実施などの組織施策までがスコープに入る、新人受け入れプロセスすべてを指す考え方です。
オンボーディングが注目される背景「早期離職問題」
近年オンボーディングが日本で注目され始めた背景に、早期離職問題があります。早期離職の金銭コストだけ見ても、 社員1名が入社後3ヶ月で離職した場合、採用経費や人件費、教育研修費などの総計で187.5万円もの損失概算になるという調査(エン・ジャパン調べ)もあるなど、その影響は過小評価できません。
また、早期離職の中でも特に若者の早期離職が課題として顕在化してい ます。以下の2つの政府統計を見ても、この傾向が見て取れます。
出典:『令和2年雇用動向調査: 性、年齢階級別の入職と離職 』(厚生労働省)
厚生労働省の『令和2年雇用動向調査』の結果によると、離職率は20歳から24歳の若手層では、男性29.1%、女性28.4%と、それより上の世代よりも10%以上高くなっており、若手の離職が問題になっていることがうかがえます。
出典:『新規学卒者の離職状況』(厚生労働省)
2つ目は『新規学卒者の離職状況』の調査結果です。いわゆる新卒で採用した社員が1年以内、2年以内、3年以内に離職している率を調査したもので、大学卒の就職者の3年以内離職率は平成7年以降ほとんどの年で30%前後となっています。
若手、特に新卒については採用や育成に大きなコストがかかるため、早期離職してしまった際に無駄になるコストも多くなります。また、早期離職した人の穴を埋めるための人材獲得・育成がさらに必要になり、採用コスト全体が増加してしまいます。
もちろんこのような問題は若手・新卒に限らず、中途採用の中堅社員からエグゼクティブ層まで広く当てはまります。このような採用コストの無駄が多くの企業で問題視され、解決策を模索する中でオンボーディングが注目されるようになったのです。
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オンボーディングのメリット
オンボーディングの意義を理解し、その取り組み精度を向上させることには多くのメリットがあります。以下で代表的なものを見ていきましょう。
早期離職防止
前述の通り、早期離職という問題の解決策としてオンボーディングは注目されています。新入社員が早期に組織に馴染み、活躍のサポートが適切に行われることで、離職率を下げることができます。
採用・育成コストの削減
早期離職が減ることで採用コストが削減することはもちろんのこと、オンボーディングが成功することは育成コスト削減にもつながります。研修に充てる費用が減るだけでなく、新入社員が独り立ちするまでのスピードを早め、先輩社員の教育工数がトータルで減少することも期待できます。
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社員のエンゲージメント向上
オンボーディング期の適切なコミュニケーション設計により、新入社員の会社への愛着や思い入れが強まる効果も期待できます。入社オリエンテーションから始まり、先輩社員からの業務指導、その他既存社員との交流の場などの一連のプロセスが一貫したプラン・体制で実施されることで、新規入社者の心理的安全性が高まり、ひいてはエンゲージメントの向上につながると考えられます。
オンボーディングの主な施策
オンボーディングには具体的にどんな施策があるのか、代表的な例を紹介します。
導入研修
従来通りの研修もオンボーディングの施策の1つです。業務や会社についてのオリエンテーションなどが代表的なもので、複数人の新入社員に対して一括で行うことが 多いでしょう。
メンター制度
配属先の上司以外で、業務指導や相談相手となる先輩社員をメンターと呼びます。業務ノウハウの教育はもちろん、社内での過ごし方や人間関係、会社の文化など幅広い面で新入社員を支えるメンターには、面倒見の良い中堅社員が選ばれることが多く、新人メンバーへの細やかな配慮が求められます。上司には相談しにくいような些細なことでも相談できる相手がいることで、新人の不安感は和らぎ、結果的に業務の習得速度が向上するでしょう。
歓迎会
歓迎会もオンボーディングの施策の1つとして捉えることができます。新入社員が早い段階で配属先の既存社員とコミュニケーションが取れる機会を作ることで、組織に対しての帰属意識や、心理的安全性が高まるでしょう。大規模な交流会を開催する余裕がなくとも、新人交流ランチなど気軽な場を複数回設けることで、効率よくオンボーディングが進展します。
目標の設定
成長の指標となる目標設定は、入社後なるべく早く実施することを推奨します。まずは直近1ヶ月~3ヶ月程度にフォーカスした短期的な業務目標を設定することで、新規入社者の努力の方向性が定まります。上長からしても、成長スピードや引き継ぎの進捗を細かく把握することができるので、目標の設定は非常に重要なオンボーディング施策になります。
定期面談
週1、月1など一定間隔で個別面談を実施しましょう。業務の習熟度を測るためであれば、設定した目標の進捗を確認し、フィードバックをすることで成長を促すことができます。また業務内容に限らない困り事がないかを吸い上げるために、人事や第三者的な先輩との面談を実施することも有効です。
オンボーディングのプロセス
実際オンボーディングを行う際はどのようで手順で進めていけばいいのか、そのプロセスを紹介します。
目的を明確にする
まず、オンボーディングの目的を明確にしましょう。組織として、入社したばかりの社員に、どのようなスキルの習得、社内文化の理解、定量的な成果を求めているのでしょうか。また、それに達するまでの期間はどの程度を想定しているのでしょうか。まずは受け入れ側が適切に言語化できている状態を目指しましょう。期待する状態を定めておくことで、新入社員が一人前になるゴール地点と各地点の差分が明確化し、フォローの精度も向上するでしょう。
環境整備
オンボーディングが円滑に行えるような各種の環境整備が必要です。オンボーディングは多くの社員と連携しながら行うので、特にコミュニケーションが取りやすい環境には配慮が必要です。メンター制度や定期ミーティングなどの制度面と、社内SNSなどのコミュニケーションインフラ観点、受け入れ先のチームの体制面など、新入社員が過ごしやすい環境ができているか、多角的に検討してみましょう。
プランの作成
オンボーディングプランを作成しましょう。どの地点で、どのような状態になっていてほしいのかマイルストーンを設定し、それに必要な施策をそれぞれのタイミングに配置していきます。
プラン作成には現場社員の意見も取り入れることが重要です。人事の考えている理想像が現場の考えと乖離しているケースはままありますので、この事前のすり合わせがオンボーディングプラン全体の精度を左右すると言っても過言ではないでしょう。また、このすり合わせを通して現場社員もオンボーディング施策についての理解が深まりますので、実施する際に自分事として関わってくれる可能性も高まるでしょう。
プラン作成には現場社員の意見も取り入れることが重要です。人事の考えている理想像が現場の考えと乖離しているケースはままありますので、この事前のすり合わせがオンボーディングプラン全体の精度を左右すると言っても過言ではないでしょう。また、このすり合わせを通して現場社員もオンボーディング施策についての理解が深まりますので、実施する際に自分事として関わってくれる可能性も高まるでしょう。
PDCAを回してプランを改善する
実施フェーズにおいても、常にオンボーディングプランには微調整が加えられるべきです。現場社員からの改善点の吸い上げと反映を行い、できるだけ新入社員ごとにユニークなネクストアクションを作り上げましょう。
また、オンボーディングを受ける新入社員を不安にさせないためにも、事前にプランが完璧なものではなく改善する用意があること、意見があれば挙げてほしいことを伝えておくという選択肢もあります。
また、オンボーディングを受ける新入社員を不安にさせないためにも、事前にプランが完璧なものではなく改善する用意があること、意見があれば挙げてほしいことを伝えておくという選択肢もあります。
オンボーディングにも活用できるリファレンスチェックサービス『ASHIATO(アシアト)』
このように、オンボーディングは非常に注目度の高い施策ですが、特に最近話題になっているのがリファレンスチェックとの連動です。
リファレンスチェックとは、採用候補者の人柄や仕事ぶりについて、上司や同僚にヒアリングを行う採用プロセスの1つですが、エン・ジャパンが提供するリファレンスチェックサービスのASHIATOなら、レポートで得られた情報をオンボーディングにも役立てることができます。
推薦者(採用候補者の関係者)からのレポートをもとに新入社員の特性を把握することができるので、入社後の配属やマネジメントの方針をより最適化することができ、導入した会社では、中途入社者の入社3ヶ月生産性が昨対150%アップした事例もあります。
2020年10月のリリースから約1年で導入企業が300社を突破したASHIATO。まずはフォームからお気軽にお問い合わせください。
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