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早期離職とは? 減らない要因と具体的な対策を紹介

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せっかく入社した社員がすぐに退職してしまうことは、金銭的・労力的な損失があるだけでなく、周りの社員へ心理的な悪影響を及ぼす恐れもあります。そんな早期離職者を減らすためには、どのような方法があるのでしょうか。本コラムでは、日本の早期離職の現状や減らない要因とその具体的な対策についてご紹介します。



早期離職とは?


「早期離職」とは、一般的に「入社した社員が数年以内に離職すること」を言います。「早期」にあたる期間がどのくらいかというのは文脈によって様々で、新卒社員の3年以内の早期離職、中途社員の数ヶ月以内の早期離職などのデータが調査されています。

早期離職率の平均値は、どの基準で計測するかはもちろん、業種や新卒・中途の違いなどでも異なります。詳しくは以降の段落で解説していきます。

早期離職の状況

新卒社員の早期離職

厚生労働省の『新規学卒就職者の離職状況(平成29年3月卒業者の状況)』にて、新規学卒就職者の就職後3年以内の離職率の調査結果が発表されており、高卒の場合39.5%、大卒の場合は32.8%となっています。ここ10年間のデータを見ても、大卒の約3割が就職後3年以内に離職している状況です。


中途社員の早期離職

エン・ジャパンの人事向け総合情報サイト『人事のミカタ』において、693社の企業におこなったアンケートの結果では、「直近3年間で入社した中途入社者の定着率」は以下のようになりました。


出典:『アンケート集計結果 第144回 「中途入社者の定着について」』(エン人事のミカタ)

このデータから考えると、40%弱の企業では、中途採用の3年以内の離職率が 31%以上と、新規学卒者(大卒)の平均と近い水準になっており、約16%の企業では、3年以内に半数以上が早期離職しているとが分かります。

早期離職率が高い業種

厚生労働省の『新規学卒就職者の離職状況(平成29年3月卒業者の状況)』によると、「平成29年3月新規大卒就職者の産業別就職後3年以内の離職率」は以下の通りです。



新規大卒就職者の3年以内での離職が多い業種は、上から順に「宿泊業、飲食サービス業」「生活関連サービス業、娯楽業」「教育、学習支援業」「小売業」「医療、福祉」でした(「その他」を除く)。

時期ごとの早期離職の理由


新卒社員の早期離職の理由は、独立行政法人労働政策研究・研修機構の『若年者の離職状況と離職後のキャリア形成Ⅱ(第2回若年者の能力開発と職場への定着に関する調査)』で男女別に調査されています。

男性の離職理由


この調査によると、男性が初めての正社員勤務先を1年以内に離職した人の離職理由上位は以下の通りでした。

「労働時間・休日・休暇の条件がよくなかったため」 31.2%
「肉体的・精神的に健康を損ねたため」 29.7%
「人間関係がよくなかったため」 26.9%
「自分がやりたい仕事とは異なる内容だったため」 26.9%
「仕事が上手くできず自信を失ったため」 25.8%

また5年以内の離職者をみると、「人間関係がよくなかったため」「自分がやりたい仕事とは異なる内容だったため」「仕事が上手くできず自信を失ったため」は勤続期間が短いほど回答率が高くなる傾向があります。

反対に、「賃金の条件がよくなかったため」「キャリアアップするため」「会社に将来性がないため」といった理由は勤続期間が長いほど回答率が高くなる項目です。

女性の離職理由


女性の場合、初めての正社員勤務先を1年以内に離職した人の離職理由上位は以下の通りです。

「人間関係がよくなかったため」 39.4%
「労働時間・休日・休暇の条件がよくなかったため」 38.1%
「肉体的・精神的に健康を損ねたため」 36.1%
「仕事が上手くできず自信を失ったため」 31.5%
「自分がやりたい仕事とは異なる内容だったため」 27.2%

順番や回答率は異なりますが、男性の場合と同じ理由が上位を占めています。

勤続期間が短いほど回答率が高いのは「肉体的・精神的に健康を損ねたため」「労働時間・休日・休暇の条件がよくなかったため」「人間関係がよくなかったため」「賃金の条件がよくなかったため」「自分がやりたい仕事とは異なる内容だったため」「ノルマや責任が重すぎたため」「会社に将来性がないため」という理由でした。

一方、「結婚・出産のため」の離職が、勤続期間3年超5年以内の離職者で39.4%、1年超3年以内の離職者でも26.7%と高くなっている点は、男性のデータと異なるポイントです。

早期離職に影響を与える「GRC」


エン・ジャパンでは、早期離職に大きな影響を与える3つの要因を「GRC」と呼んでいます。これは、年間約6万人の入社・定着支援をおこなう中で得た転職者の声を分析し、導き出した要因です。

「GRC」は以下のそれぞれの頭文字から取っています。

ギャップ(Gap):採用前に企業に対して抱いていた「期待」と、入社後の「現実」の乖離
リレーション(Relation):直属の上司との関係性
キャパシティ(Capacity):仕事の量のキャパシティ

中途採用においては、この「ギャップ」があることや、「リレーション」や「キャパシティ」に問題が生じていることで、早期離職に繋がりやすくなります。


早期離職者が増加するデメリット


早期離職者が増加することで生じる具体的なデメリットとして、以下があります。

採用コスト・教育コストの損失

せっかく採用した社員が早期に辞めてしまうことは、採用コストや入社前後の研修費用、OJT時の他の社員の労力や人件費などの損失と言えます。エン・ジャパンが試算した「社員が入社後3ヶ月で離職した場合」の損失は、一人あたり187.5万円と非常に大きな金額となっています。


出典:エン・ジャパン『なぜ人は辞めるのか?退職を科学する

企業イメージのダウン

早期離職者が多いことは、企業のイメージダウンにも繋がります。求職者や取引先に「働きにくい会社」や「社員を大切にしていない会社」だと思われてしまう可能性があるからです。

社員のモチベーション低下

早期離職が増えることで、周りの社員のモチベーションが低下するというデメリットもあります。特に、優秀な人材が辞めてしまうと「優秀な人が辞めるということは、自社になにか問題があるのではないか」と考えてしまい、モチベーション低下や連鎖退職に繋がることもあります。

早期離職が減らない要因


早期離職が減らない要因は状況によって様々ですが、よく生じる問題として以下が挙げられます。


評価制度・報酬が適切でない

そもそもの賃金基準が適切でなかったり、昇給・昇格に関わる評価制度が整っていないことは離職の大きな要因になります。入社前に納得した賃金でも、業務内容に見合わない、ボーナスが思ったよりも少ない、と感じて入社後に不満を抱く社員もいるでしょう。また、評価制度が整備・開示されていないと、本人がどのように昇給・昇格していけるかが分からず、長期的に勤務するイメージができず、退職してしまうこともあります。

能力開発・キャリアアップへの不満

研修や指導の機会が少ない、社内でのキャリアプランを描けない、といったキャリアに関する要因もあります。キャリアアップを考えている優秀な人材ほど、この理由で早い段階での転職を考えるでしょう。

休日数・労働時間への不満

休日数が少ない、有給休暇がとりづらい、労働時間が長いといった課題は他の問題と関連性が高く、モチベーション低下の土台になります。「健康上の問題が生じた」「ワークライフバランスを実現できない」「キャリアアップのための勉強時間が取れない」など、様々な不満が早期離職の要因となります。

現状では問題がなくても、今後年齢を重ねたり、ライフステージが変わったりした際に長く働ける会社ではないと判断し、早めに転職を考える人もいます。

人間関係への不満

他の労働条件に不満が無く、仕事にやりがいがある場合でも、職場の人間関係に問題が生じていることで離職を考える社員は多く、先述の新卒社員の早期離職理由でも上位に入っています。

人間関係の悪さは心理的なストレスになるだけでなく、業務の遂行にも影響を与えます。また、問題の当事者だけでなく、周囲の雰囲気も悪化させることで、より早期離職率が高まる要因となるでしょう。

会社・業界の将来性が不安

会社や業界の将来性に不安があることも、早期離職の要因となります。労働環境や人間関係が良好で、社内でのキャリアプランが描けている場合でも、会社や業界自体の行く先が全くわからないと、将来に不安を感じて離職を考えることになります。

早期離職を減らす方法とは?




要因を解消し、早期離職を減らすためには以下の方法があります。

人事制度の整備


離職対策として、人事制度の整備は重要です。人事制度の内容は多岐に渡りますが、実際に社員が不満に思っていることを把握し、解消していく必要があります。


評価・給与制度を適正化する

評価・給与制度を適正化することで、社員は不安なく業務に集中することができます。また、制度の内容を可能な範囲で開示することで、現状の待遇への納得度が高まりますし、昇給・昇格のための目標や計画も立てやすくなります。

社員のキャリア形成を支援する

評価制度の整備・開示のほか、「定期的なキャリア面談実施」「研修制度の充実」「資格取得のための費用補助」などで社員の能力開発やキャリア形成を支援することで、長く働きやすくなります。

働きやすさの追求


同じ企業で長く働くためには、賃金ややりがいだけでなく「働きやすさ」も大切です。働きやすい職場をつくるためには以下のような方法があります。

労働時間を適正化する

早期離職の要因の「休日数・労働時間への不満」で述べた通り、労働時間が長すぎることは様々な問題を引き起こします。社員の健康やワークライフバランスを保てる適正な労働時間・休日数とするためには、「業務効率化」「勤務間インターバル制度導入」「有給休暇を取得しやすい雰囲気づくり」「バケーション休暇の導入」などの施策が例として挙げられます。

福利厚生を充実させる

福利厚生を充実させ、社員が安心して働ける会社を目指します。基本的な福利厚生としては「社会保険加入」「交通費支給」「健康診断受診料の負担」「退職金制度」などがあります。これらの内容を充実させたり、対象者を広げたりすることははもちろんですが、社員の各人の環境に合わせた制度(「住宅手当」「家族手当」など)の導入も選択肢の1つでしょう。



社内のコミュニケーションの円滑化

人間関係における不満の解消方法としては、「社内コミュニケーションの円滑化」があります。円滑化のためには、「上司や人事との定期面談」「メンター制度」などで、不満の種を把握・解消したり、「チャットツール活用」「社内報の刊行」「フリーアドレス制度の導入」などで職場全体での社員同士の交流を促したり、といった方法があります。

社員同士の交流をより深める福利厚生制度としては「社員旅行実施」「懇親会費用補助」「サークル活動費補助」などもあります。

企業方針の明確化


企業の方針を明確化し、浸透させることで、会社の将来性への不安を和らげることができます。

企業の方向性・目標を明確にする

企業の方向性・目標を明確にし、社員に示すことで将来性への不安解消を目指します。予測不可能な「VUCA」の時代だからこそ、方向性を適宜見直しながらも、しっかりと示すことが大切です。経営理念やビジョン・ミッション浸透のための研修を行ったり、中長期計画の詳細を説明する機会を設けたりすることで、部署や個人単位で何をすべきかイメージできるようにします。

採用基準を明確にし、ミスマッチをなくす

採用基準は企業方針と密接に関連しています。そもそもの企業方針に納得や共感ができないミスマッチな人材を採用した場合、その人材が会社とその将来性に不満を感じるのは当然です。

ミスマッチをなくす手段としては、採用時にネガティブ面も含めた詳細な情報を開示する「RJP理論」、採用候補者の前職の上司や部下、取引先などに問い合わせ、当時の仕事内容や人柄、好んでいるカルチャーなどについての客観的な情報を得る「リファレンスチェック」の活用などがあります。


早期離職対策の第一歩は、採用のミスマッチを防ぐこと




早期離職への根本的な対策は「そもそも採用でのミスマッチを防ぐこと」と考えられます。中途社員の早期離職要因である「GRC」のギャップ(採用前に企業に対して抱いていた「期待」と、入社後の「現実」の乖離)を減らしたり、自社の文化にマッチした人材を選んだりするためには、採用前に企業と候補者が互いの情報をよく知ることが大切です。

リファレンスチェックなら『ASHIATO(アシアト)』

ミスマッチを減らす方法として、採用前のリファレンスチェックの導入が有効です。エン・ジャパンのリファレンスレポートサービス「ASHIATO」は、採用候補者の人柄や実務経験の客観的な情報を収集して、ミスマッチを防ぐことが出来ます。

また、入社後の研修・配属やマネジメントにも役立つレポートを提供しており、早期離職対策として、採用前だけでなく入社後においてもご利用いただけます。

さまざまな業種・職種でご利用いただいているASHIATOは、2020年10月にサービスを開始し、2021年8月には導入社数300社を突破いたしました。早期離職対策として、リファレンスレポートサービス「ASHIATO」をぜひお役立てください。お問い合わせはこちら。


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