人材流出とは?
「人材流出」とは、自社の社員が他社に転職したり、独立したりすることをいいます。「流出」という単語からわかるように、単純に個人の転職行動を表すだけでなく、企業目線でのネガティブなニュアンスが含まれています。
今の日本は、企業の採用に対して、転職候補者の数が少ない、いわゆる売り手市場な業界や職種が多く、戦力になっている社員が1人流出するだけでそのリカバリーコストが大きくなります。
日本の労働市場
人材流出が話題となる背景のひとつである、日本の労働市場全体の変化を見てみましょう。日本の人口減少に伴った生産年齢人口の減少は継続しており、2050年には現在の3分の2程度となる見込みです。引用元:『経済産業省 未来人材会議 中間とりまとめ 未来人材ビジョン』令和2年版厚生労働白書に掲載されたデータを見ると、生産年齢人口が減少している中でも女性と高齢者の就労率が向上していることで、就業者数は1990年代後半の水準を維持しています。しかし、生産年齢人口(15〜64歳)に対する就業者数はすでに9割に達しているため、ここから就業者数が減少していくことが避けられないと考えられます。また、特にエンジニアなどの専門性の高い人材の獲得はいっそう難しくなることが予想されます。引用元:『厚生労働省 令和2年版厚生労働白書』 人材流出のリスク
人材流出には、具体的にどんなリスクがあるのでしょうか。発生しうる主なリスクを3つご紹介します。
財務的な損失
人材が流出することで、退職する人材に費やした採用・教育コストのリターンが無くなり、さらに補填として行う採用のコスト、及び教育コストが余計に発生します。
採用から離職までの期間が短い早期離職であればあるほど、金銭的な損失は大きく、たとえばエン・ジャパンの試算では、入社後3ヶ月で社員1名が離職した場合の財務的な損失は187.5万円と多大です。採用活動や研修内容によっても損失額は異なりますが、生産部門の採用であればさらに、退職した社員と育成に関わった現場社員の機会費用(あげる予定だった売上)も加算されます。
他の社員への心理的悪影響
人材流出には、他の社員への心理的な悪影響もあります。優秀な人材や複数の人材 が同時期に退職することで「自社に何か問題があるのではないか」と考えたり、人員減少により業務負荷が増えたりすることで、職場全体のモチベーションやエンゲージメントが低下してしまいます。また、さいあくの場合、それに伴う連鎖的な離職が発生する可能性もあります。
顧客情報・業務ノウハウの流出リスク
退職した人材が同業他社に転職したり、独立することで、その社員が自社で得た顧客情報や業務ノウハウを流出させるリスクがあります。もちろん、社内規定等で退職時の情報持ち出しルールを厳しく規定するなど対策はできますが、「ノウハウ」や「関係性」といった無形の資産は少なからず社外に出ていってしまう可能性があります。
人材流出の原因と対策
会社にとって一見アンコントローラブルな「人材流出」にも、それを引き起こす原因には一定の傾向があります。以下で思わぬ退職につながる主な原因とその対策を解説します。
原因①「経営ビジョンが浸透していない」
会社のビジョンや経営戦略が社員に浸透していないことは、人材流出の遠因になり得ます。会社が大切にする理念から、具体的な事業の展望までを高い頻度で社員に伝達し、所属していること自体に満足できる状態を作る必要があります。
対策
事業規模の大小にかかわらず「会社のビジョンを実現するためには自分が必要なのだ」と思える、高いモチベーションを維持する工夫が求められます。たとえば、半期や四半期ごとに社内向けに経営全体や事業のステータスを共有する場を設け、定量的な進捗共有とともに、その背景にある戦略的な思惑や思想を語ることも一つの手段でしょう。最近では、より高頻度に1on1ミーティングなどの個別面談を用い、会社のビジョンを継続的に伝達する取り組みを行っている会社も少なくありません。
原因②「業務量・評価基準に納得感がない」
業務量の多さに報酬が見合わない、正当な人事評価がなされない、という不満は人材流出の原因となります。一時的な業務量過多であれば納得できても、それが常に続く場合は容認できない人が多くなることは必至です。
また、単純な業務量の問題以外では、人事評価基準に納得感がないことも退職モチベーション増大につながります。そもそも明確な評価基準を策定できていない企業も少なくありませんし、明確な基準がある場合も、時流に合わせたアップデートが行われていないケースが多くあります。
対策
評価制度について社員とコミュニケーションすることを厭わず、積極的に業務の量と質、それと対応する評価について会話する機会を作ることが重要です。定期的な個人面談で、担当業務の量とその評価に対する納得感をヒアリングすることも有効でしょう。
また、全社的な報酬アップが難しい場合は、中堅層の報酬を同業種・同職種よりも高い水準に設定し、「あと〇年頑張れば先輩と同じくらいの給与をもらえる」という見通しを示すことで、優秀な若手人材の流出を防ぐという方法論もあります。
原因③「キャリア・スキルアップの選択肢が少ない」
社内での多様な働き方が用意されていないと、結婚や子育て、介護などのライフイベントの発生やそれを見越した将来への不安から、働き続けるイメージができない社員の流出につながります。
また、担当できる業務の幅が狭く、スキルアップの選択肢が少ないことも、成長欲求が高い社員が他社に流出する原因になります。「募集段階で紹介されていたキャリアステップが実際には用意されていない」ことが不満につながるケースもよくあります。
対策
フレックスタイム制やテレワークの導入、時短勤務制度などの取り組みでキャリアの多様な選択肢をつくり、病気や育児、介護などのライフイベントを経ても長く働き続けられる仕組みづくりが、社員の定着につながります。
また、社員の成長欲求に応えるためには、社内外の研修制度を充実させたり、社内のスキルマップを作成してそれぞれの成長を見える化するなど、積極的な機会提供が有効です。同時に、各社員が「人材市場の中で相対的に優位なスキルが身につけられる環境である」と実感できているかを、定期的にヒアリングする工夫も必要でしょう
原因④「労働環境に問題がある」
社内にパワハラ、セクハラが存在するなど人間関係に問題がある場合や、オフィス環境が整っていないといった労働環境に問題がある場合なども、人材が流出しやすい状態と言えます。
対策
ハラスメント対策として相談窓口を常設したり、人間関係改善のための配置転換を実施する。あるいは、オフィス環境の不満を定期的にヒアリングして改善に務めるなど、大きなコストを要さずに実施できる対策から順に行うことが望まれます。とくに人間関係の問題は離職原因になりやすいので、直属の上司のみならず、第三者としてヒアリング可能な人を配置するといった対策は、問題の拡大を抑える有効な手段になるでしょう。
採用時のリファレンスチェックで人材流出を防ぐ
ここまで人材流出の原因と対策をご紹介しましたが、人材流出を抑えるためには、そもそも採用時点でのミスマッチを防ぎ、定着・活躍可能性が高い人材を採用することが重要です。自社に合わない人材を採用し、すぐに退職してしまうことは、企業にとっても求職者にとっても不幸なことです。採用時点でのミスマッチを防ぎ、入社後の配属・オンボーディングを経て社員が定着し、活躍するためには一貫したケア体制の構築が必要です。その手段として、採用選考だけでなくその後の定着・活躍にも役立つ客観的な情報を取得できる質の高い「リファレンスチェック」サービスを活用することをおすすめします。 人材流出対策にもリファレンスチェックサービス 『ASHIATO(アシアト) 』
そもそもリファレンスチェックとは「採用候補者の現職(または前職)の上司や部下、同僚などの関係者に、本人の経歴・実績、仕事ぶり、人柄などを直接問い合わせること」ですが、最近ではオンライン完結型のサービスでこの調査を実施する企業が増加しています。エン・ジャパンが運営するオンライン完結型のリファレンスチェックサービス「ASHIATO」は、採用企業での候補者情報登録は1人当たり約5分、推薦者からの回答は平均3営業日以内と、採用選考のスピードを落とさずにリファレンスチェックを導入できる特長があります。エン・ジャパンが培った採用支援のノウハウが注ぎ込まれた設問設計で、採用候補者の「パフォーマンスが発揮できる働き方」「コミュニケーションスタイルの特徴」など、入社後にも活かせる情報を広く集められるASHIATO。リファレンスチェックサービスにご興味をお持ちの人事ご担当者様は、まずはフォームからお気軽にお問い合わせください。▼関連記事・離職率の平均は? 新卒と中途、大企業とベンチャーで違いはある?・離職率とは? 高くなる3つの要因と具体的な対策を解説!・定着率とは? 計算方法と上げる方法について解説