日本の平均離職率とその計算式
離職率は業界や会社規模、従業員の属性などによって変わるため、すべての会社にあてはまる適正値はありませんが、特定の国や企業・業界の労働環境の変化を確認する際 には大いに役立ちます。例えば、厚生労働省の統計(『令和2年雇用動向調査』)を見れば、日本の全常用労働者における2020年の平均離職率は、14.2%で、近年の離職率はおおむね14~16%で推移していることがわかります。また、2020年は9年ぶりに離職率が入職率を上回り、コロナ禍で失業状態となった人が増えた様子が見てとれます。出典:『令和2年雇用動向調査: 入職と離職の推移』(厚生労働省)また、離職率は「一定期間のうちに、どのくらいの人がその仕事を離れたか」を示しており、次の式で計算できます。 離職率 = 離職者数 ÷ 1月1日現在の常用労働者数 × 100(%) 引用元:『厚生労働省 雇用動向調査:調査の結果 用語の解説』例えば、1月1日現在の常用労働者数が1000人の会社で1年間に30名が離職した場合、その年の離職率は「3%」となります。▼「離職率の計算方法」についてのより詳しい記事はこちら離職率の計算方法は? 業界平均の調べ方や企業ごとの比較方法を解説 業界別の離職率の平均
離職率の平均は業界によっても異なります。『令和2年雇用動向調査』の産業別離職率のデータによると、上から順に「宿泊業・飲食サービス業」が26.9%、「サービス業」が19.3%、「生活関連サービス業、娯楽業」が18.4%と、サービス系の業種が高い値になっています。この3つの産業では離職率が入職率を上回っており、他業種への人材流出が多いと考えられます。出典:『令和2年雇用動向調査: 産業別の入職と離職』(厚生労働省)一方で、比較的離職率が低い業界の値は「鉱業、採石業、砂利採取業」が5.6%、「金融業、保険業」が7.7%、「複合サービス事業(郵便局、協同組合など)」が7.8%です。 会社の規模やフェーズによっても離職率は変わる
企業の規模やフェーズによっても、離職率は変わってきます。ここでは、企業の従業員数による平均離職率の違いと、ベンチャー企業やスタートアップ企業の離職率について解説します。 企業規模別離職率の平均
雇用動向調査によると、令和2年度の企業規模 別平均離職率は「1,000人以上」の企業が14.0%、「300~999人」が13.3%、「100~299人」が17.4%、「30~99人」が14.7%、「5~29人」が13.6%と、「100~299人」規模の企業の離職率が高くなっています。直近10年間のデータを見ても、「100~299人」規模の企業の離職率は常に他よりも高く、約15~21%の間で推移しています。その他の企業の離職率は年度によって異なりますが、おおむね14~16%の間です。出典:『令和2年雇用動向調査:性、企業規模別入職・離職率』(厚生労働省)「中小企業の方が離職率が高い」とよく言われますが、中小企業基本法における中小企業の従業員数は、「小売業」は50人以下、「卸売業」と「サービス業」は100人以下、「製造業その他」は300人以下です。よって、最近のデータを見ると一概にそうとは言えません。しかし、従業員が100~299人の中規模の企業では、他の規模よりも離職率が高いと言えます。▼「中小企業の離職率」についてのより詳しい記事はこちら中小企業の離職率は大企業よりも高い? 離職の要因と対策を解説 ベンチャー企業やスタートアッ プ企業の離職率は高い?
実は「ベンチャー企業」に明確な定義はなく、テレビや新聞などのメディアでは「設立から5年程度」「インターネットサービスなど新規性の高いビジネス領域で活動」という要素で区分できる企業群をベンチャーと呼称しています。
このように曖昧な定義のため実態が把握されにくい傾向にありますが、一般的に、創業年数が若く成長段階にあるベンチャー企業の離職率は、その他の企業よりも高いと言われています。
しかし、ベンチャー企業やスタートアップ企業のように、めまぐるしく環境が変化する企業においては、人材の流動性を高め、そのときどきの環境に適した社員に在籍してもらった方が企業のパフォーマンスが上がるという考え方もありますので、高い離職率が必ずしも悪いというわけではありません。
企業の成長段階や環境の変化度合いによって、離職率を適切にマネジメントすることが大切です。
採用方法による離職率の違い
新卒採用の場合と、中途採用の場合でも離職率は異なります。それぞれの離職率の平均と離職理由についてご紹介します。
新卒採用の離職率の平均
新卒の社員の離職理由
『平成30年若年者雇用実態調査』によると、若年労働者(15~34 歳の労働者)が初めて勤務した会社を辞めた主な理由は上から順に、「労働時間・休日・休暇の条件がよくなかった」が 30.3%、「人間関係がよくなかった」が 26.9%、「賃金の条件がよくなかった」が 23.4%、「仕事が自分に合わない」が 20.1%出典:『平成30年若年者雇用実態調査:これまでの就業状況 』( 厚生労働省) であり、労働条件や人間関係、そもそもの業務内容のミスマッチが理由として挙げられています。 中途採用の離職率
エン・ジャパンが人事向け総合情報サイト『人事のミカタ』を利用する企業693社に「直近3年間で入社した中途入社者の定着率」についてアンケートを行ったところ、以下のような回答が得られました。出典:『アンケート集計結果 第144回 「中途入社者の定着について」』(エン人事のミカタ )
もっとも多い回答は「100%」と「70~79%」で、全体の約6割が定着率「70%以上」でした。このデータから逆算すると、中途採用の離職率は6割以上の企業で30%以下、3割の企業で10%以下です。 中途の社員の離職理由