離職率とは?
離職率とは、「ある時点で仕事に就いていた労働者が、一定期間後にどれくらいその仕事を離れたかを比率として表わす指標」です。
離職率が高いと良くないように思われがちですが、必ずしもそうとは言えません。業界や職種、企業規模、雇用形態などによっても平均離職率は異なりますし、反対に離職率が低すぎると、人材が固定化し、社内環境が変化しないといったデメリットもあります。
離職率の計算方法
離職率の計算方法は、法律で決められた定義があるわけではなく、様々な計算方法がありますが、その中でも厚生労働省が実施している雇用動向調査での計算式は『離職率 = 離職者数 ÷ 1月1日現在の常用労働者数 × 100(%)』です。
引用元:『厚生労働省 雇用動向調査:調査の結果 用語の解説』例①1年間の全社員対象の離職率雇用動向調査で用いられている式で計算してみると、「1月1日現在の常用労働者数が1000人の会社で1年間に50名が離職した」場合、 50 ÷ 1000 × 100(%) = 5%という計算で、その年の離職率は「5%」になります。例②新卒3年以内離職率他によく利用される離職率として「新卒3年以内離職率」があります。こちらは「○年度に入社した新卒社員のうち、3年以内に離職した社員数 」÷「○年度に入社した新卒社員数 」× 100(%)で計算することができます。例えば、「2021年度に100人の新卒社員が入社し、2021~2023年度の間にそのうちの30名が離職した」場合、 30 ÷ 100 × 100(%) = 30%という計算で、2021年度入社の新卒3年以内離職率は「30%」になります。離職率にお悩みの方は、こちらの資料もご覧ください。
なぜ人は辞めるのか?退職を科学する 離職率と近い指標
離職率と同じく、企業の状況の参考となる指標には、以下のようなものがあります。
平均勤続年数
平均勤続年数とは、現在会社に在籍している従業員の勤続年数を平均した数字です。入社から退社までの平均在籍年数を示す値ではないため、新入社員の入社時に計算すると、平均勤続年数は短くなるという特徴があります。国税庁の『
民間給与実態統計調査』によると、2022年(令和4年)の平均継続年数は、12.7年となっています。平均勤続年数は
常勤従業員の勤続年数の合計 ÷ 常勤従業員の総人数という計算方法で求めることができます。「平均勤続年数」は、上場企業が提出義務がある有価証券報告書の記載項目のため、四季報等で確認することができます。「平均勤続年数」が長い会社が、必ずしも良い会社というわけではありませんが、長く働きやすい仕組みが整っていることが推測できます。 定着率
定着率とは「ある時点で仕事に就いていた労働者が、一定期間後にどれくらいその仕事を続けているかを比率として表わす指標」です。この指標は、離職率を裏返した指標となります。定着率の計算方法として、一般的には以下の式があります。
定着率 = 一定期間終了時の残在籍者数 ÷ 一定期間開始時の入社人数 × 100(%)
式中の一定期間や対象者について、明確に決められているわけではなく、基準は企業や算出目的により様々である点は、離職率と同じです。また、離職率が算出されている場合は、以下のように計算することもできます。
定着率 = 100 - 離職率(%)
四季報で「3年後新卒定着率」など、「定着率」に関する値をアピールしている会社は、長期的な視野での人材育成に重きをおいていると考えられますので、一つの目安としてチェックしてみるとよいでしょう。
自社と比較したい平均離職率の調べ方
ここでは、様々な平均離職率の調べ方をご紹介します。自社の離職率と比較して参考にしたり、業界分析をする際にご活用ください。 日本の平均離職率
日本の平均離職率は厚生労働省の「雇用動向調査」にて調べることができます。『
令和4年雇用動向調査』によると、日本の全常用労働者における平均離職率は、15%という結果でした。
業界ごとの平均離職率
業界ごとの平均離職率は「雇用動向調査」の産業別離職率のデータから調べることができます。『
令和4年雇用動向調査』によると、産業別平均離職率の上位は、「宿泊業・飲食サービス業」が26.8%、「サービス業」が19.4%、「生活関連サービス業、娯楽業」が18.7%という結果でした。
新卒の平均離職率
新卒の平均離職率は、厚生労働省の発表している「新規学卒就職者の離職状況」で調べることができます。「
新規学卒就職者の離職状況(令和2年3月卒業者の状況)」によれば、令和4年度における就職後3年以内の離職率の割合は、高卒が37%、大卒が32.3%となっており、令和2年のデータと比べ高卒が0.1ポイント、大卒1.1ポイント増加しています。
他社の離職率の調べ方
自社と離職率を比較したい企業が具体的に思い浮かぶ場合は、以下の方法で調べることが出来ます。
四季報で調べる
「就職四季報」は東洋経済新報社が発行する雑誌で、就活生向けに採用実績や有休取得状況、残業時間などの会社情報をまとめており、離職率も掲載されています。
調べたい会社が大手企業であれば、この四季報で離職率を知ることができるでしょう。ただし、企業によっては離職率を開示しておらず「NA(No Answer)」という表示になっていることもあります。この開示の有無もまた、離職率に対するその企業のスタンスを示していると言えるので、その是非はともかく、企業分析において注目したいポイントと言えるでしょう。