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中小企業の離職率は大企業よりも高い? 離職の要因と対策を解説

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「中小企業の離職率は大企業よりも高い」と思われがちですが、実は、必ずしもそうとは言えません。たしかに、日本の従業員100~299人規模の会社の離職率が高いという事実はあるのですが、99人以下の企業の離職率は大企業とさほど変わらないのです。

では、中小企業特有の社員の離職に関する悩みはないか? というと、決してそうではないでしょう。本コラムでは、政府の統計データをもとに、中小企業の離職率の実情や、小さな企業ならではの離職要因とその対策をご紹介します。



そもそも「中小企業」とは?

「中小企業」とはよく言いますが、日本においてこの概念は、1963年に国が定めた『中小企業基本法』によって、業種別に定義されています。


出典:『中小企業庁 中小企業・小規模企業者の定義

しかし、この定義は基本的な政策対象の範囲を定めた、あくまで「原則」であり、法律や制度によっては「中小企業」の範囲が異なることがあり、注意が必要です。

また、下のグラフの通り、日本の非一次産業において、法人の99.7%は中小企業であり、従業者数のうち約7割が中小企業で雇用されています。まさに社会を支える大多数の日本人はこの「中小企業」に属しているのです。


資料:総務省・経済産業省「平成28年経済センサス‐活動調査」再編加工
(注)1.企業数=会社数+個人事業者数とする。
2.「サービス業」には、「情報通信業」、「不動産業,物品賃貸業」、「学術研究,専門・技術サービス業」、「宿泊業,飲食サービス業」、「生活関連サービス業,娯楽業」、「教育,学習支援業」、「医療,福祉」、「複合サービス事業」、「サービス業(他に分類されないもの)」が含まれる。「その他」には、「鉱業,採石業,砂利採取業」、「建設業」、「電気・ガス・熱供給・水道業」、「運輸業,郵便業」、「金融業,保険業」が含まれる。

資料:総務省・経済産業省「平成28年経済センサス‐活動調査」再編加工
(注)「サービス業」には、「情報通信業」、「不動産業,物品賃貸業」、「学術研究,専門・技術サービス業」、「宿泊業,飲食サービス業」、「生活関連サービス業,娯楽業」、「教育,学習支援業」、「医療,福祉」、「複合サービス事業」、「サービス業(他に分類されないもの)」が含まれる。「その他」には、「鉱業,採石業,砂利採取業」、「建設業」、「電気・ガス・熱供給・水道業」、「運輸業,郵便業」、「金融業,保険業」が含まれる。

出典:『2020年版 中小企業白書 第1部 令和元年度(2019年度)の中小企業の動向  第2章 中小企業・小規模事業者の実態 第1節 多様な中小企業・小規模事業者


離職率とは?

離職率とは、「ある期間で働いていた人のうち、退職した人の割合」を示す言葉で、一般的には以下の式で計算できます。どの期間の離職者数を対象にしなければならない、という単一的なルールはなく、目的によって「◯年以内離職率」といった形で使い分けられています。

離職率 = 離職者数 ÷ ある地点での常用労働者数 × 100(%)

離職率は、業界や会社規模、従業員の属性などによって変わるため、「すべての会社にあてはまる適正値」というものは存在しません。

このようなことを前提に、以降の文章では、企業規模別の離職率や、中小企業特有の離職要因・それに対する改善策について解説していきます。


中小企業の離職率は高い?

厚生労働省が実施した令和2年度の雇用動向調査によると、企業規模別平均離職率は以下の通りです。

1,000人以上:14.0%
300~999人:13.3%
100~299人:17.4%
30~99人:14.7%
5~29人:13.6%

令和2年度は「100~299人」規模の企業の離職率が最も高くなっています。


データ元:『厚生労働省 令和2年雇用動向調査:性、企業規模別入職・離職率

平成の初めの頃は「300~999人」や「1000人以上」の大企業の離職率が低い傾向にありましたが、近年は、必ずしも大企業の離職率が299人以下の中小規模企業群の離職率より低い、という状況ではなくなってきています。

一方、「30~99人」「5~29人」といった小規模の会社も近年は、年によっては大企業群以下の離職率になっています。したがって、一概に「中小企業は離職率が高い」と言うことはできません。しかし、「100~299人」規模の企業は、直近10年強で最も離職率が高い企業規模群になっており、このことが「中小企業は離職率が高い」という一般的なイメージに繋がっているのかもしれません。


小さな企業特有の離職要因

先述したように一概に「中小企業の離職率が高い」とは言えませんが、やはり中小企業ならではの離職要因も存在します。ここでは、小さな企業特有の離職要因を、データも交えて解説していきます。

給与への不満

中小企業庁の『2020年版 中小企業白書』における、従業者規模別の給与額を見ると、企業規模によって給与額に大きな差があることがわかります。また、中小企業では大企業とは異なり、昇給の仕組みがしっかり構築されていない場合も多く、このこともまた給与に対する不満に繋がっていると考えられます。
資料:厚生労働省「賃金構造基本統計調査」
(注)1.「正社員・正職員」を集計している。
2.給与額は、「きまって支給する現金給与額」であり、各年の6月分として支払われた給与額で基本給と、あらかじめ定められている諸手当の合計額をいい、残業代を含む。



労働環境への不満

人数が少ない中小企業の場合、1人当たりの労働量や労働時間の負担が大きくなっているケースも見受けられます。さらに、労務管理が疎かな組織においては、この過重労働の傾向は強まります。

また、従業員数が少ないことや制度の未整備を背景として、勤務時間の柔軟な変更や休暇の取得ができず、子育てや介護がしにくいといった不満も中小企業では生まれやすくなっています。


狭い人間関係への不満

中小企業では、従業員数や部署が少ないことから人間関係の幅が狭く、「相談できる相手がいない」「一度関係性が崩れると逃げ場がない」といった不満を生むケースも多くあります。

上司や同僚と相性が悪い場合でも部署移動で即解決とはならず、ストレスを抱えたまま仕事をした結果、最終的に離職という選択を下す人もいるでしょう。


成長を実感が湧かないという不満

一概には言えませんが、中小企業は大企業と比較すると業務やプロジェクトの数が少なく、多様な業務を経験しにくいという一面があります。また人員に余裕がないことで配置換えやジョブローテーションが実施されず、人によっては求める成長機会が得にくいと感じて退職を選択してしまいます。


企業の先行きへの不安

中小企業で働く人の中には、自分が勤めている会社の存続や成長に不安を抱えている人も一定数います。もちろん、大企業勤めでも同じ悩みを持つケースはありますが、大企業の下請けとして中小企業が仕事を受注するケースが多い日本の産業構造においては、景気や取引先の影響を受けやすい中小企業、及びその社員の心理的負荷は大きいと言えるでしょう。


中小企業の離職率改善策

中小企業特有の離職要因に対して、どのように改善を図っていけばよいか、いくつかの施策の例をご紹介します。

給与・労働環境の見直し

労働環境に対する不満を解消するためには、労働に見合った賃金体系の構築、評価制度の導入、業務効率化による残業時間の削減、などの総合的な見直しが求められます。またフレックスタイム制や裁量労働制、在宅勤務の導入など、働き方の選択肢を広げられる施策が行えると、社員の士気も向上するでしょう。


コミュニケーション円滑化施策

上下関係に根差した一方的なコミュニケーションではなく、年齢や役職を問わず発言がしやすい、風通しの良い企業文化を醸成することが重要です。

たとえば、上司とのコミュニケーション量を担保する1on1ミーティングや、先輩社員を相談相手とするメンター制度の導入、社内イベントの実施など、通常業務とは異なるコミュニケーションの仕掛けを多様に用意することは、人間関係の問題に対して有効でしょう。

また、そもそものコミュニケーションのハードルを下げるため、チャットなどのツールを導入することも手段の1つになり得ます。


成長機会の提供

成長を実感できることは、仕事を長く続けるための重要なポイントです。裁量のある仕事を任せることはもちろんのこと、若いうちから多様な業務に触れる機会を提供することも、モチベーション向上に繋がるでしょう。

また外部研修の導入や資格取得支援を行うといった、成長実感が可視化される仕掛けも有効活用できるとよいでしょう。


企業のビジョン示す

社員が抱く企業の将来性の不安を解消するために、経営目標を明確化して共有することが大切です。経営理念を浸透させるために研修を実施したり、中長期計画の詳細を社員に説明する場を設けたりすることで、会社の将来と現在の業務が結びつき、余計な不安がなくなることも大いにあるでしょう。


中小企業の離職率改善事例


大企業と比較してリソースが不足しやすい中小企業で、実際に離職率を改善できた企業はどのような施策に取り組んだのでしょうか。2つの事例をご紹介します。

働きやすい環境づくり

働きやすい職場環境づくりの事例として、厚生労働省の『働き方改革 特設サイト』でも紹介されている、拓新産業株式会社の取り組みをご紹介します。

拓新産業は「一流の中小企業」を目指して約30年前から働き方改革を行い、30年前には1人も応募がなかった状態から、今では採用枠3〜4人の募集に対して60〜70人の応募がある状態まで引き上げました。

具体的な施策として、週休2日を実現させた「休暇取得の徹底」、能力開発と人事配置による「仕事の属人化防止」、営業マンが直接出向き「顧客に(自社の休暇取得推進や残業なしの)経営方針の理解を求めること」などを行ってきました。当初は、他の会社がやっていないことだったため周りからの強い反発もありましたが、次第に社内外から理解が得られるようになったそうです。


中堅層の給与引き上げ

新潟にある、とある中小企業では、中堅層の給与引き上げによって人材の定着率が向上した、という事例があります。

この企業では、将来的な活躍が見込める優秀な若手人材の定着のために、会社全体の賃上げは難しいながらも、中堅層の給与の引き上げを行いました。同業種・同職種と比較して高い給与水準に設定したことで、相対的に高待遇となり、社員が自社でのキャリア展望にポジティブなイメージを持てるようになったといいます。


中小企業こそ求められる採用の精度向上&効率化

中小企業では、1人が離職した際の部署や会社全体への影響が大きい、という特性があります。そのため、採用者の早期離職を避けることはもちろん、長く働いてくれるマッチ度の高い人材を確保する必要があります。しかし、人材不足が慢性化している中小企業では、募集からオンボーディングまでの採用に関わる様々なタスクを少ないメンバーでこなさなければいけません。企業にとって特に重要な採用業務において、効率化と見極め精度の向上が必須と言えるでしょう。


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