CSR(企業の社会的責任)やESG経営(環境・社会・ガバナンスの3要素を重視する経営)という言葉が注目される昨今、企業には社会的責任を果たし、公正に経営を進める姿勢が求められています。そんな中、上場審査時はもちろん平時の企業経営にも必要とされるのが「コーポレートガバナンス」という考え方。本コラムでは、コーポレートガバナンスの意義や、その強化の方法についてご紹介します。
コーポレートガバナンスとは?意味や目的、強化する方法は? コーポレートガバナンスコードも解説
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CSR(企業の社会的責任)やESG経営(環境・社会・ガバナンスの3要素を重視する経営)という言葉が注目される昨今、企業には社会的責任を果たし、公正に経営を進める姿勢が求められています。そんな中、上場審査時はもちろん平時の企業経営にも必要とされるのが「コーポレートガバナンス」という考え方。本コラムでは、コーポレートガバナンスの意義や、その強化の方法についてご紹介します。
コーポレートガバナンスとは?
コーポレートガバナンスは「企業統治」と訳されます。金融庁によれば「会社が、株主をはじめ顧客・従業員・地域社会等の立場を踏まえた上で、透明・公正かつ迅速・果断な意思決定を行うための仕組み」と定義されています。つまり、コーポレートガバナンスは会社が適法かつ、各ステークホルダー(企業運営に関わるあらゆる利害関係者)に配慮した上で、優れたパフォーマンスを発揮するための企業統制のしくみ、と言えるでしょう。
参考:金融庁・東京証券取引所(2015)『コーポレートガバナンス・コード』
参考:金融庁・東京証券取引所(2015)『コーポレートガバナンス・コード』
コーポレートガバナンスが注目される背景
コーポレートガバナンスは、1960年代のアメリカにおける公民権運動や公害問題に対する社会運動の高まりを受けて、企業の社会的責任の問題として注目されるようになりました。日本でも、バブル崩壊後の1990年代に企業の不祥事が相次いだことを背景に、企業経営の監視体制としてのコーポレートガバナンスへの関心が高まりました。
コーポレートガバナンスと内部統制との違い
コーポレートガバナンスと類似した言葉に「内部統制」がありますが、両者の違いは以下の通りです。
コーポレートガバナンス
会社が適法かつ、各ステークホルダーに配慮した上で、優れたパフォーマンスを発揮するための企業統制の仕組み。
経営者の不正や暴走を防ぐことが目的。
内部統制
健全かつ効率的な企業経営を営むために、経営者を含む従業員が守るべき社内ルールや仕組み。
役員や従業員の不正行為の防止、業務改善や業務の効率化を行うことが目的。
コーポレートガバナンス・コードとは
コーポレートガバナンス・コードは、コーポレートガバナンスの基本となる5つの原則です。2015年に金融庁と東京証券取引所が東証プライム・スタンダード・グロース市場上場企業に対して取り決めており、とくに東証一部上場企業の中でも時価総額の大きな企業が対象となるプライム市場では、取締役会の独立性・諮問委員会の設置など厳しい条件が義務付けられています。以下で、5つの原則をご紹介します。
1. 株主の権利・平等性の確保
企業は、株主が問題なく経営に参加し、利益や資産の分配を受ける権利を確保する必要があります。株主総会ではこの権利を保障するため、株主の意思決定や利害に関わる情報を明示するなど、とくに十分な対応が求められます。
2. 株主以外のステークホルダーとの適切な協働
企業には株主のみならず、企業の顧客や従業員、企業の経営の基盤となる地域社会とも適切に協働していくことが求められます。たとえば具体的な取り組みとして、内部通報の体制の整備・女性や外国人人材の活躍の推進による社内の多様性の促進・ハラスメントの削減などによる労働環境の改善などが挙げられます。
3. 適切な情報開示と透明性の確保
とくに上場している企業は、財務情報や経営戦略をはじめ、経営陣・取締役などの選任や報酬決定の方法についての情報を開示する必要があります。非上場の成長企業でも、こうした透明性の確保によって、組織内での不正の防止・リスクの軽減に伴う経営改善が期待されます。
4. 取締役会等の責務
企業は取締役会などを通し、企業戦略など企業経営の大まかな方向性を社内外に共有する必要があります。取締役会は独立社外取締役の選任・役員報酬制度の整備なども受け持ち、分権的な経営を可能にします。
5. 株主との対話
企 業は、株主総会などの場で経営方針やリスクを説明し、株主の理解を得られるよう適切なコミュニケーションを取る必要があります。その際には、株主に対して経営方針などをわかりやすい言葉で伝達することが重要です。
成長企業にとってのコーポレートガバナンスの必要性
コーポレートガバナンスに則った経営は、上場企業にとくに厳しく課せられるものというイメージがあるかもしれません。しかし、非上場の成長企業にとってもコーポレートガバナンスを意識した組織体制づくりをすることには大きなメリットがあります。
社会的な信頼を得る
社外に対して経営の統制が取れていることを示すことで、各種ステークホルダーからの信頼が得やすくなり、顧客との取引も円滑になります。また、長期的には企業価値の向上にもつながります。
金融機関から資金調達をしやすくする
資金調達は成長途上の企業にとっての大きな課題です。コーポレートガバナンスを充実させることにより、金融機関から信用を得てよりスムーズに融資を受けることができます。加えて、金融機関との長期的な関係継続にもつながります。
IPO(新規上場)の要件をクリアする
上場審査等ガイドライン(東京証券取引所)の基準の中に「企業のコーポレート・ガバナンス及び内部管理体制の有効性」という項目があります。 上場を目指す企業においては、コーポレートガバナンス及び内部管理体制が適切に構築され、機能していることが求められます。上場に際して慌ててガバナンス体制を強化することは容易ではないため、非上場時の平時から管理体制を整備することには意味があります。
コーポレートガバナンスを強化するには
コーポレートガバナンスに則った社内体制を強化するために、以下のような方法が挙げられます。
社外取締役・監査役・独立委員会の設置
外部から、会社からの独立性が担保された社外取締役を設置することにより、第三者視点からの監視体制を構築します。2021年3月1日に施行された改正会社法の下では、上場会社と委員会設置会社において社外取締役の選任が義務付けられていることからもその重要性がうかがえます。またリスクや不正などの事案が発生しそうな場合、監査役などがすぐに把握・対応できるような仕組みづくりが重要です。
執行役員制度の導入
経営の決定権を持つ取締役・業務執行の権限を持つ執行役員を分離した形で設置します。それぞれの役員の役割と責任を明示するとともに、経営方針を執行役員が必ず審査する体制を敷くことにより、経営者による不正の抑止につながります。
内部統制の仕組みの整備
法令遵守を徹底して違反・不正行為をなくすとともに、社内規定としても明確に示し、企業としての考え方や方向性を社内外に共有することが必要です。その際には既存のワークフローや財政状態などを十分考慮し、現在かかえるリスクを低めるような社内規定を整えることにより、意味のある仕組みを作ることができます。また、コーポレートガバナンスについて活発に周知することで、従業員の遵法意識の向上につながります。
ワークフローを管理するシステムを取り入れるなど、内部統制を効率的に 実施するツールの導入も有効でしょう。
コーポレートガバナンスにおける人事制度の必要性
前述の通り、コーポレートガバナンスに則った経営体制が整っていることは、上場審査時に重要な条件となります。一方で、ガバナンスに関する専門知識のある人材の不足・社内体制整備にかかるコストの問題など、さまざまな障壁があります。実際、コーポレートガバナンスに適った社内体制は一朝一夕では構築できないと考えられます。
そんな中でも最も取り組みやすいのが、人事部門からのアプローチです。具体的には、勤務態度や問題行動のない人材を社員として採用・育成することで、ガバナンスの効いた企業経営が実現しやすくなります。とくに、ベンチャー企業など急速に人員拡大を目指す企業は、人員が増えても会社としての理念や社会的責任への理解が、常に共有されている人的環境づくりが重要です。
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