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定着率とは? 計算方法と上げる方法について解説

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入社した社員がどのくらい定着しているかを示す「定着率」。高ければ高い方が良いようにも思えますが、どのくらいの値が理想なのでしょうか? 本コラムでは、定着率の計算方法や雇用形態・業種別の平均定着率、定着率低下の対策について解説していきます。



定着率とは? 離職率とは違う?

「定着率(Retention rate)」とは、入社した社員が企業にどのくらい定着しているかを表す指標です。入社から一定期間経過後に在籍し続けている従業員数から計算されます。

社員の離職した割合を示す「離職率(Turnover rate)」と対となる指標であり、「離職率」と「定着率」のいずれかの値がわかれば、もう一方の値が算出できます。

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定着率の計算方法は?

定着率の計算方法として、一般的には以下の式があります。

定着率  =  一定期間終了時の残在籍者数 / 一定期間開始時の入社人数 × 100(%)

式中の一定期間や対象者についての明確な決まりはなく、基準は企業や算出目的により様々です。また、算出されている離職率から、以下のように計算することも可能です。

定着率 = 100 - 離職率(%)

実際に計算すると、以下のようになります。

例1
2021年4月時点で100人の新入社員が入社し、2022年3月末時点で90名在籍していた場合

2021年新入社員の1年間の定着率 = 90人 / 100人 × 100(%)= 90%

そこから更に2年経過した時に、2021年の新入社員が70名在籍していた場合

2021年新入社員の3年間の定着率 = 70人 / 100人 = 70%

と算出できます。


例2
離職率が15%のとき 定着率は 100- 15(%)で85%と算出できます。

どのくらいが理想? 適切な定着率とは


どの程度の定着率がよいのかは企業の状況や業界により異なるため、明確な基準はありません。一般的に、定着率が高い(離職率が低い)企業が良いとされることが多いですが、単純に値の大小だけで、企業の良し悪しを判断することは難しいです。

業種や企業の規模、事業フェーズによって、企業が重要視する目標は変わり、その目標設定に紐付いて人材の流動性の許容度合いも変わってきます。また、残ってほしい人材が残っているのか、という観点も重要です。見かけ上の定着率は高くとも、少数の優秀な人材が離れやすい状況であれば、自社の組織環境を見直すべきです。

求職者は、その値が業界平均や他社と比べてどうか、過去の値と比べてどうか、などを見ることで、数字がどういった意味を持つか考える必要があります。

雇用形態や業界によって異なる定着率



雇用形態や業界ごとの定着率は、厚生労働省が調査した『令和2年雇用動向調査』の離職率をもとに確認することができます(定着率= 100% - 離職率)。

ちなみに厚生労働省では、離職率を「1月1日を起算日として」算出しています。

離職率 = 離職者数 ÷ 1月1日現在の常用労働者数 × 100(%)

※「常用労働者」次のいずれかに該当する労働者をいう。
① 期間を定めずに雇われている者
② 1か月以上の期間を定めて雇われている者

引用元:『厚生労働省 雇用動向調査:調査の結果 用語の解説』

就業形態別の定着率

上述の厚生労働省の調査から、就業形態別で定着率にどんな違いがあるかを見てみましょう。(参考『令和2年雇用動向調査: 入職と離職の推移』〈厚生労働省〉)

令和2年のデータでは、フルタイムで働く一般労働者の定着率は80.3%、パートタイム労働者の定着率は76.7%と、フルタイム労働者の雇用が比較的安定していることがわかります。またフルタイム労働者の定着率は直近15年は87~89%程度で推移しており、同じ15年間でパートタイマーの定着率が73~77%程で下振れを含んでいることと比較しても、フルタイム雇用の安定性が伺えます。

【業種別】定着率が高い業界、低い業界

定着率は業界によっても異なります。


出典:『令和2年雇用動向調査: 産業別の入職と離職』(厚生労働省)
この離職率データから逆算すると、定着率が高い業界、低い業界は次の通りです。

定着率が高い業界

定着率が高い業界は上から順に「鉱業、採石業、砂利採取業」、「金融業、保険業」、「複合サービス事業」で、それぞれの定着率は90%以上です。

定着率が低い業界

定着率が低い業界は下から順に「宿泊業・飲食サービス業」、「サービス業」、「生活関連サービス業、娯楽業」です。サービス系の業種の定着率が低くなっており、中でも「宿泊業・飲食サービス業」の定着率の低さが際立つデータとなっています。

注目されるリテンション・マネジメント


定着率重視の潮流を表す言葉として「リテンション・マネジメント」があります。これは、「優秀な人材や将来的に成果をあげることが予想される従業員が、長期間組織にとどまって能力を発揮するために、企業が実施する人事施策全般」を指す言葉です。

優秀な人材の離職は、企業にとって財務的な損失になるだけでなく、残った従業員のモチベーションにも悪影響を与える可能性があります。これを防ぐためにリテンション・マネジメントでは、「人材の定着は単一の人事施策で実現できない」という考えのもと、複数の人事施策を組み合わせた人材マネジメントが大切だと考えます。

参考:優秀人材が辞めない会社とは?青学山本教授に聞いた「リテンション・マネジメント」

定着率を上げるメリット

「業界や会社の状況によって基準は異なるが、一般的には定着率は高い方が良いとされている」と解説しましたが、実際に定着率を上げることでどのようなメリットがあるのでしょうか。

採用・教育コストを削減

定着率向上による財務的なメリットとしては、採用・教育コストの削減があります。

エン・ジャパンの試算では、社員1名が入社3ヶ月で退職してしまった場合、一人あたり187.5万円相当の損失が生じます。


参考:エン・ジャパン『なぜ人は辞めるのか?退職を科学する

また、早期離職に限らず、代替人材の育成や採用のための費用も生じます。
定着率を上げ、離職者を減らすことでこれらのコストを抑えることができます。

企業のイメージアップ

定着率向上には企業のイメージアップ効果もあるでしょう。「定着率が高い=離職者が少ない」ことで、求職者や取引先に「働きやすい」「社員を大切にしている」などのイメージを持たれやすくなります。

組織力の強化

定着率向上は組織力強化にもつながります。組織力とは「構成員が団結することで生まれる相乗効果・力」と考えられます。人材が長期的に活躍できる職場では、ノウハウの蓄積が進み、企業カルチャーも醸成されやすくなります。

一方、社員の中でも特に優秀な人材が離職してしまうと「優秀な人が辞めるということは、会社に何か問題があるのではないか」と周りの社員が考え、モチベーションの低下や連鎖的な退職へとつながり、組織力も低下してしまいます。

人材および企業の情報流出防止

定着率向上は、自社の直接的な人的リソースの不足を防ぐだけでなく、企業情報の流出防止にもつながります。入社の際には秘密保持について契約を交わす企業がほとんどですが、社員が業務内で身に着けたスキルや経験を他社で活用するのを止めることはできません。離職による情報流出を完全になくすことは難しいですが、定着率向上によって抑制することはできるでしょう。

定着率が下がる要因とその対策


定着率が下がってしまう場合には、どのような理由があるのでしょうか。考えられる3つの要因とその対策をご紹介します。

【要因1】キャリア・給与に対する不満

定着率を向上させるうえで、社内でのキャリアとそれに紐付く給与に関する不満は、重要な対策事項といえます。実際に対策を検討する時は、具体的にどんな不満を持っているか把握したうえで実施することが大切ですが、ここでは一般的な対策について紹介します。

対策1:給与・昇格制度の見直し

給与決定の基準を明確化し、適切に社員に伝えることで、社員の納得感を向上させられるでしょう。優秀な成績を出した社員に対する金銭的なインセンティブ・賞与などの設定も、モチベーション向上に寄与します。

例えば、中堅層の社員の給与設定を上げることで、若手が将来的な目標を持ちやすくなった事例や、同業種の中で相対的に高い給与基準を持つことで定着率が向上した事例もあります。従業員の生活に直結する給与や昇格の制度設計は、特に重要な事項として、不満が顕在化している場合は優先的に見直されるべきでしょう。

対策2:配属・業務内容の適正化

従業員にとって配属される部署や業務内容は重大な関心事です。一方的な印象を与えないよう、入社前や人事異動前に本人のスキルや希望について十分にヒアリングしたうえで配属先や業務内容を決定することが、社員のモチベーション向上に寄与します。

対策3:キャリアプラン作成の支援

キャリアへの意識が高い人材ほど、納得できるキャリアプランを描けない企業に長く在籍することを避けようとします。人事評価制度を整備して、社内でキャリアアップする道筋を提示することが重要です。合わせて、上司・人事とのキャリア面談やキャリアプラン作成の研修などを導入することも、キャリアに関する社員の不安を取り除くことにつながります。

【要因2】労働環境への不満

「労働環境への不満」があることも定着率の低下につながります。これらの不満はモチベーション理論で「衛生要因」と言われるものです。従業員が職場で働くことに苦痛や不快を感じたり、仕事と生活のバランスがとれていない状況は、退職の直接的な原因になります。そういった不満に対しては以下のような対策があります。

対策1:多様な働き方が可能な環境を目指す

法律で定められた労働時間内で就業することはもちろんですが、“適切”な労働時間や場所は、社員各人によって異なると考えるのが昨今の潮流です。ライフステージが変わっても長く勤められる会社を目指すことで、定着率向上が期待できます。

「育児・介護休暇がとりやすい環境」や「テレワークなどの多様な働き方が選択できる制度」などを用意しておくことで、社員が育児や出産、病気や介護などで働き方を変えざるを得ない場合でも、勤め続けることができるようになります。

また、その制度や環境を活用する先輩社員の姿を見て、「長く働き続けられる会社」であることを実感することは、若手社員の定着率向上にもつながるでしょう。

対策2:福利厚生の充実

福利厚生の充実も、就業満足度の向上に寄与します。社会保険加入や交通費支給、退職金制度など一般的な制度はもちろん、家庭環境に合わせた住宅手当、家賃補助、家族手当や慶事休暇などを用意している会社もあり、その種類は様々です。

社員食堂導入や社員旅行の実施、懇親会費用の負担など、社内交流にもつながる制度が社員エンゲージメント向上の有効な施策となる場合もあるでしょう。

対策3:社内コミュニケーションの促進

社内コミュニケーションを促進することは、社員の定着率の悪化を防ぐだけでなく、様々なメリットがあります。

企業の目標や価値観、現場のノウハウの共有が進むことによる生産性の向上や、人間関係の不信から発生する不正やコンプライアンス違反を防ぐ作用も、考えられるメリットです。

コミュニケーションを促す施策は多くの種類があり、解決したい課題ごとに適切な施策を選ぶ必要があります。チャットツールの活用や社内イベントの実施、社内報の発行、フリーアドレス制度の導入、1on1ミーティングの設定などの様々な選択肢から、自社の現在や今後のために適した施策を検討しましょう。

【要因3】企業の方針や将来性に不安がある

社員が、所属企業の社会的な存在意義や、成長戦略を理解できていないことで就業モチベーションを低下させることもあります。「パーパス経営」という言葉が注目を集める昨今ですが、従業員にとっても「働く意味」の重要度は高まっています。

対策1:採用のミスマッチをなくす

採用段階で企業の方針を明確に伝え、それに賛同する人材を獲得する重要性が高まっています。いわゆる「採用のミスマッチをなくす」というお話です。

ミスマッチを防ぐ対策には、採用時に詳細な情報を発信する「RJP理論」の活用や、採用候補者の前職での仕事内容や人柄について前の上司や部下、取引先などに問い合わせて客観的な情報を得る「リファレンスチェック」の実施が有効です。両施策とも、入社前後でのイメージと現実のギャップを少なくし、ミスマッチを防ぐ方法という点で共通しています。

対策2:企業の方向性や長期目標の共有

会社のビジョンや目標を社員に十分に共有し、全社一丸となって目指すものとして浸透させることで、社員が自分事として捉え、やりがいを感じやすくなります。

また、中長期の経営計画について詳しく説明する機会を設けることも、社員各人のキャリアプランと会社の方向性を一致させる一助になるでしょう。

エンゲージメント調査の実施

エンゲージメント(愛着心、思い入れ)を調べる調査を実施し、「所属組織の方針が適切に伝わっているか?」「方針に納得感はあるか?」といった質問を定期的に投げかけることで、社員の方針理解度を把握することができます。「理解度」「納得度」といった数値化しにくい情報をできる限り定量的に把握することは、今後のコミュニケーション発信の精度向上につながるでしょう。

定着率向上にリファレンスチェックサービス『ASHIATO(アシアト)』という選択肢

定着率向上のためには、そもそも自社にマッチしない人材を採用しない、ことが重要です。ミスマッチは、採用活動が、採用担当者と候補者双方の主観的な情報に依存して行われることが要因の1つですが、そこに客観的な情報を提供するのが前述の「リファレンスチェック」です。

エン・ジャパンが提供するリファレンスチェックサービス「ASHIATO」は、運用が簡単で、企業側の事前準備が5分程度で完了するという手軽さが特徴です。オンライン完結型で、スピーディーに第三者の意見を獲得でき、職務経歴書からは分からない人柄や仕事のスタイルを把握することができます。



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ASHIATO編集部

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