近年、企業の採用活動で「カルチャーフィット」が注目されていることをご存じでしょうか? 採用活動においては、優秀な人材を採用することがゴールではなく、入社した人材が早期に現場にフィットして長期にわたって活躍することが本質的な目標となります。
一方、採用〜オンボーディング期の実践的かつ本質的なノウハウを得る機会は少なく、どの企業も定着率の高い採用活動を実現することに苦労しているのが現状かと思います。
本コラムでは、早期から活躍する人材を採用し、定着率も上げていく上で重要となる「カルチャーフィット」に焦点を当て、注目されている理由やメリット・デメリットを解説していきます。
カルチャーフィットとは?
カルチャーフィットとは、「企業文化と個人の価値観がマッチしているか」 を意味します。ビジネスの文脈における「カルチャー(企業文化)」という言葉に馴染みのない方もいるかもしれませんが、企業の事業成長を促進する上で重要視する価値観のことです。
組織心理学者でマサチューセッツ工科大学(MIT)名誉教授のエドガー・H.シャイン氏の『組織文化論』によると、「企業文化」 の構成要素は「商品・サービス」「ビジョン・ミッション・バリュー」「社員」の3つとなっており、つまりカルチャーフィットは、「商品・サービスへの共感」「ビジョン・ミッション・バリューへの共感」「既存社員との価値観が合う」と定義することができます。
「カルチャーフィット」と似た言葉として「スキルフィット」も企業の採用活動で考慮されます。スキルフィットとは「企業が求める能力と個人の能力がマッチしているか」 を意味し、従来の日本の採用活動ではこちらが重視される傾向にありました。企業の継続的な成長に鑑みた場合、カルチャーとスキルの双方にマッチした人材採用が重要だ、と考えるのが昨今の潮流です。
カルチャーフィットを重要視する企業が増えている理由
企業の採用活動における意思決定材料として使われるカルチャーフィットですが、なぜ注目度が上がってきているのでしょうか?その理由は、採用市場における2つの大きな変化が影響しています。
1. 中途採用市場の活性化
カルチャーフィットの注目度向上に影響を与えているものとして、中途採用市場の活性化があります。もはや終身雇用は当たり前ではなくなり、キャリア形成への 関心度は向上し、ライフプランに合わせた転職希望者が増加しました。転職そのものへのネガティブなイメージも薄くなってきています。企業側からすると、中途採用の促進により、教育コストの削減、即戦力採用による事業成長スピードの加速、社外ノウハウの吸収、等のメリットが享受できるため、中途採用を強化する傾向が強まっています。一方、中途採用では、「早期離職しない」という点も、採用コストの観点からとても重要です。例えば1人の社員を採用できたが、入社後3ヶ月で離職してしまった場合、187.5万円の損失が発生する試算も存在するほど、コストの負担は大きく、また社内の雰囲気が悪化するなど定性的な悪影響も懸念されます。退職理由に関するエン転職ユーザーへの調査によると”ホンネの退職理由”の3位が「社風や風土が合わなかった」(11%)となっており、カルチャーにフィットしていないことが退職に大きく影響することがわかります。これらの理由で退職してしまう人を減らし採用コストの損失を抑えるため、採用時のカルチャーフィットの見極めを重要視する企業が増えていると考えられます。
2. 新型コロナウイルスの流行による採用のオンライン化
新型コロナウイルスの流行で採用面談や面接、入社後のオンボーディングがオンライン化していることも、カルチャーフィットの注目度向上に影響しています。
9割近い企業の採用活動がオンライン化しているといわれ、内定後のオファー面談、入社後のオンボーディングについても、約8割の企業でオンラインへの移行が進んでいます。
採用のオンライン化は、転職市場における地域格差の解消などのメリットもありますが、一方で、候補者とのカルチャーフィットを判断する難易度が上昇している、という採用担当者の声が大きくなっています。
オンライン面接の場合、対面よりも表情や雰囲気が伝わりにくいことはもちろん、集団での面接や時差のないディスカッションの実施が困難なため、候補者のコミュニケーション力を客観的に判断することが難しくなっています。さらに、働いている社員の様子を見学してもらい雰囲気を伝えることも困難です。
これらが影響し、オンライン化によりカルチャーフィットの見極めの難易度が向上しているという課題感を持つ企業が増えているのです。
カルチャーフィットを重要視するメリット・デメリット
前述のように、カルチャーフィットを重視した採用で定着率を向上させることで、採用コストを低下させ、中途人材が早期に企業に貢献できる可能性が高まるメリットがあります。一方でカルチャーフィットを重要視しすぎるデメリットはあるのでしょうか。代表的なものとしては、画一的な価値観が重要視され、組織に多様性が失われてしまうことが挙げられます。新たな発想が生まれにくくなったり、意思決定が特定の方向に偏るデメリットが考えられます。必ずしもカルチャーフィットが価値観の画一化に繋がるわけではないので、多様性を加味したカルチャーの浸透が経営及び採用の現場で求められます。
カルチャーフィットを採用に活用するには
カルチャーフィットを採用活動に活用するために、以下のような事前準備や採用方法の工夫が必要になります。
1. 自社が重要視したいカルチャーを言語化する
まずは、自社のカルチャーとして何を重要視するかを整理し、言語化する必要があります。ミッション・ビジョン・バリューを言語化している企業も多いですが、浸透していなかったり、行動規範まで落ちておらず体現方法が曖昧になっている、といった場合もあるため、改めて、企業として大事にしたい価値観や行動特性を言語化しましょう。
また、言語化したカルチャーを、企業全体で共通認識を持つことや、社員への浸透を促していくことも、採用水準の統一を行なう上で重要となります。
2. 面接で見極めを行うための基準・質問を用意し、候補者の価値観を深堀りする
面談や面接で、候補者が言語化したカルチャーにマッチするのかを見極めるため、社内のカルチャー体現者をもとにペルソナを作成し基準を設けたり、価値観を聞き出しやすい質問を候補者に投げかける方法があります。また、質問をしていく際も、「何を」ではなく「なぜ」を掘り下げる質問を繰り返し行うなど、候補者の価値観を深堀りしていくこともポイントとなります。
3. ワークショップなどのイベントを開催し、招待する
面談や面接以外でカルチャーフィットを見極める方法として、ワークショップなどのイベントに候補者を招待して、社員や他の候補者とのコミュニケーションを観察してマッチ度を見極める方法があります。
4. リファレンスチェックを行う
その他に、リファレンスチェックを行うという手段があります。「リファレンスチェック」とは、内定候補者の前職の同僚や上司にヒアリングを行い、候補者の仕事に取り組む姿勢や、前職での経験、周囲からの評判など、客観的な情報を取得することを指し、採用時の意思決定や、採用後のオンボーディングに活用することを目的としています。
リファレンスチェックという言葉を聞き慣れない方もいるかもしれませんが、海外では約95%の企業が導入しており、日本でも昨今、採用におけるミスマッチ削減を目的としてリファレンスチェックを導入する企業が増えています。
リファレンスチェックなら、エン・ジャパンのASHIATO(アシアト)
精度の高いリファレンスチェックを行うには、どういった質問項目で実施するかが重要となります。せっかくヒアリングを行っても、カルチャーフィットを見極めることができなければ、採用コストが増えてしまうだけでリファレンスチェック導入の効用を得ることはできません。そのため、カルチャーフィットの見極めノウハウを十分に有したリファレンスチェックサービスの導入をおすすめします。ASHIATOはエン・ジャパンが提供するリファレンスチェックサービスで、2020年10月のリリースから約1年で300社を突破し、業界・業種を選ばず手軽に導入いただける点で人気です。カルチャーフィットを採用時の判断基準に組 み込み、定着率をアップさせたいとお考えの人事担当者様は、ぜひお問い合わせください。▼関連記事・
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