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リファレンスチェック後の内定取り消しは法律的に有効? 「内定」の法的拘束力を解説

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リファレンスチェックとは、採用候補者の前職の上司や同僚などに、過去の仕事ぶり、人柄、経歴などを問い合わせるもので、面接や職務履歴書だけではわからない客観的な情報を取得できることが特徴です。

リファレンスチェックを行った結果、候補者の採用に関わる問題が発覚することもありますが、その場合、すでに出してしまった内定を取り消すことはできるのでしょうか?

「内定取り消し」という企業イメージにも影響する大きな意思決定に関して、正しい知識をもっておきたいものです。本コラムでは、法的な観点から、「リファレンスチェック後に内定取り消しができるのか」「どういった場合に取り消しが認められるか」を詳しく解説します。




リファレンスチェック後の内定取り消しはなぜ発生する?

そもそもリファレンスチェックの結果、内定取り消しをせざるを得ないケースとはどのような状況なのでしょうか。代表的なケースを3つご紹介します。

【内定取り消しケース①】経歴詐称

本人が提出した職務経歴書などの書類、あるいは面接での発言が虚偽であること、いわゆる経歴詐称の発見は、リファレンスチェック実施の代表的な期待効果です。候補者の虚偽申告が意図的なものであった場合、正式な入社を快く思わないのは企業として当たり前の感覚です。しかし、一言で経歴詐称といっても程度には幅があり、企業としてはその悪質性を法律観点も加味して見極める必要があります。

【内定取り消しケース②】前職でのトラブル・悪評

経歴詐称はしていないが、リファレンスチェックで候補者の前職(現職)の同僚や上司にヒアリングをした結果、「悪い評判・評価」が発覚するケースや、事実として社内外でトラブルを起こしていたことが明るみに出る場合があります。採用企業としては、高い水準でスキルマッチしている場合でも、カルチャーマッチの観点から正しい採用となるか悩むことになるでしょう。

【内定取り消しケース③】面接での印象とのギャップ

明確な経歴詐称や前職でのトラブル履歴がなくとも、面接で受けた候補者の印象や業務スキルの修練度が、リファレンスチェックで関係者から聞いた話と乖離しているケースがままあります。面接で印象をよくするために意識的に「盛っている」場合や、無意識に自己評価が高い場合など背景は様々ですが、これらのギャップをどの程度重要視すべきかは判断が難しく、ましてや内定提示後に内定取り消しの根拠とすることには法的なリスクが伴います。

では次は、内定の法的拘束力、内定取り消しの違法性について見ていきましょう。


内定の法的意味合いと効力



まず、内定取り消しが違法にあたるかを知るには、「内定」の法的な扱いを知る必要がありますので実際の判例と併せて解説します。

内定は条件付きの労働契約の成立とみなされる

内定は、法的には「始期付解約権留保付労働契約」として扱われています。簡単に言えば、企業が正式な内定通知を出し、候補者と企業間で採用・入社の意思を確認した段階で条件付きですでに労働契約が成立する、ということになります。「条件付きで」というのは、内定から入社までは一定期間があるため、その期間中にやむを得ない事由が発生した場合に内定を取り消す可能性がある、ということを指します。

合理的な理由がない内定の取り消しは違法

内定とその承諾は条件付きの労働契約の成立とみなされますので、その取り消しには試用期間中の労働者を解雇するのと同等の妥当性が必要です。つまり、内定取り消しが認められるのは、内定を出した時点で知っていたら採用しなかっただろう、と社会通念上認められるような重大な理由がある場合に限られるということです。それ以外の理由での取り消しは解約権の濫用にあたるため、違法とされるのです。



内定取り消しとその妥当性に関する過去事例



このような内定についての法的な扱いを確立するきっかけとなった大日本印刷事件(最高裁二小 昭54.7.20判決)を紹介します。

事件の概要

昭和43年、会社が翌年卒業予定の新卒採用を行い、候補者に対して内定を通知しました。候補者は内定承諾書を提出しましたが、会社は2か月後に内定を取り消しました。その後、内定取り消しの理由が「当初から感じていた候補者のグルーミー(陰気)な印象が拭えなかったため」と明かしましたが、候補者はこの取り消しを無効にすることを求めて提訴しました。この訴えについて最高裁は、留保解約権に基づく大学卒業予定者採用内定の取り消しが解約権の濫用にあたるとして無効とし、候補者の主張を認める判決を下しました。

内定の扱いについて

このケースでは、企業側が採用内定通知のほかに労働契約締結のための意思表示を予定していなかったことや、候補者が企業の求めに応じて大学卒業後は間違いなく入社する旨などを記載した誓約書を提出していたことなどを理由に、内定通知と誓約書の提出をもって条件付きの労働契約が成立した、と判断されています。

内定取り消しの事由の妥当性について

次に、内定取り消しの理由となった「当初から感じていたグルーミーな印象が拭えなかったため」という企業側の主張が妥当だったか、という点についての裁判所の判断を見てみましょう。

前述のとおり、内定が条件付きの労働契約と認められたため、内定の取り消しは試用期間中の労働者を解雇する場合と同じレベルでの妥当性が求めらることになりました。そのため、内定取り消しの理由として認められるのは「採用内定当時知ることができず、また、知ることが期待できないような事実であって、これを理由として採用内定を取り消すことが解約権留保の趣旨、目的に照らして客観的に合理的と認められ、社会通念上相当として是認することができるものに限られる。」とされました。

この条件に照らし合わせると、企業側は当初から候補者が「グルーミーな印象」であるとわかっていたため、「採用内定時に知ることができないような事実」にはあたらず、企業側がその段階で従業員としての適格性を判断できたはずである、と指摘されました。結果、その印象が拭えなかったことを理由に解雇することは解約権の濫用にあたるとして、内定取り消しが無効であると認められたのです。


リファレンスチェック後に内定は取り消せるのか

このように、内定取り消しは法的には解雇と同じ扱いになるため、リファレンスチェック後の内定取り消しが許されるのは、社会通念上認められるような重大な理由がある場合に限られます。

では、リファレンスチェック後に内定取り消しが妥当と認められる理由とは、具体的にはどのようなものなのでしょうか?

リファレンスチェック後に内定を取り消し“できる場合”

先の判決に照らすと、内定取り消しが認められる理由のポイントは「内定通知の時点で企業側が知ることができなかった事実であるか」という点と、「知っていたら内定を出さなかったと客観的に認められる事由か」という2点です。
この条件に当てはまるような理由は多くなく、一般的には、以下のような場合が想定できます。
・新卒者が大学を予定通りに卒業できなかった
・社会的に重大な事件を起こした
・応募に必要な資格や業務経験を本当は保持していなかった
・前職で重大な懲戒処分を受けていたことを隠していた
・経歴に詐称があった
・正常な勤務ができないような健康上の問題が発覚した

リファレンスチェック後に内定を取り消し“できない場合”

上記のような重大な理由がなければ、基本的に内定の取り消しをすることは難しいと言えるでしょう。特に、リファレンスチェック後に以下のような内容が発覚するのはよくあることですが、これらを理由に内定を取り消すことは違法となる可能性が高く、注意すべきです。
・面接時の印象と人柄が違った
・前職の同僚から聞いた仕事ぶりが期待していたものと違った
・単に前職を解雇されているという理由だけで内定を取り消す


「内定承諾書」に法的拘束力はある?

ここまで、企業が内定取り消しができるケース・できないケースを見てきましたが、逆に、学生側が内定を受け入れる意思を示す「内定承諾書」には法的拘束力はあるのでしょうか?

結論からいうと、内定承諾書に法的な拘束力はありません。なぜなら内定承諾書は、あくまでも採用活動における求職者と企業が交わす「約束」の意思表示にすぎないからです。

しかし、その約束は即ち労働契約の成立とみなされるので、承諾書提出後に辞退することは契約違反と判断できる可能性があります。内定者が入社する前提で備品の調達を進めていたり、予定に組み込まれた研修費が発生している場合などは、損害賠償を請求できるという解釈も成り立ちます。

このように、「(求職者の)内定承諾書提出後の辞退」と「(企業の)内定取り消し」には、法的拘束力や、労働契約の実効性などの観点で違いがあり、採用担当者としてはこれらを正しく認識した上で、現実の事象に対応する必要があります。


リファレンスチェックは内定前に行うことが推奨される

このように、内定承諾をもって労働契約が成立しているとみなされるので、リファレンスチェックの内容により内定の取り消しを行うには相当な理由が必要です。また、リファレンスチェックの本来の目的としては、候補者のスキルや仕事ぶり、人柄が、会社にマッチしているかどうかを見極めることにありますので、リファレンスチェックをきちんと機能させるためには、内定を出す前に利用することが重要です。

▼「リファレンスチェックは内定前・内定後どちらで行うべき?」の詳しい記事はこちら
リファレンスチェックは内定前・内定後どちらで行うべき? 内定取り消しは違法?


リファレンスチェックサービス選びのポイント

リファレンスチェックは採用候補者の見極めに大いに役立ちますが、ここまで述べたように、活かし方によっては、法律上のリスクを生む可能性もあります。実施の際は、正しいノウハウを持って採用フローに組み込まれるべきでしょう。

昨今では、オンライン型のリファレンスチェックサービスを導入する企業も増えていますが、導入においては、サービス運営会社の信頼性や導入実績、採用業務自体のノウハウが充実した運営元か否か、を慎重に精査することをおすすめします。


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ASHIATO編集部

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