人事調査とは
「人事調査」という言葉で表される企業が行う調査には、「従業員に対して行う調査」と、「採用候補者に対して行う調査」の2種類があります。
既存従業員への人事調査
従業員に対する人事調査には、トラブルを抱えている社員への「素行調査」から社内向けの「エンゲージメントサーベイ」や「ストレスチェック」まで、幅広い調査が含まれます。
これらの調査はあえて調査という言葉は 使わず、「アンケート」や「チェック」と呼ばれるケースもありますが、どちらにせよ、既存社員の現状を知り、人的資源を最適化する基礎となるデータを収集することが目的になっています。
採用候補者への人事調査
採用候補者に対する人事調査には、「雇用調査」から「前職調査」、「バックグラウンドチェック」など様々な呼称が存在しますが、主には候補者の過去や現在に問題行動がないかを確認するネガティブチェックを目的として行われてきました。
しかし最近では、欧米企業で一般的な、候補者のポジティブな特性も合わせて確認する「リファレンスチェック」が広まりつつあります。
人事調査の必要性が増す背景
各企業がどれだけ人事関連の調査にコストを割いているのか、というデータは基本的に公開されていません。しかし、以下のような社会背景から、HR領域における人事調査コストの割合は年々増加していることが推測されます。背景を理解し、適切なコスト感覚で調査を実施できるようになりましょう。
データドリブン人事の盛り上がり
2000年以降、2010~20年代において、急速にデータの利活用が企業経営のあら ゆる領域で重要視されるようになりました。人事領域も例外ではなく、採用から既存社員のリテンション、果ては退職者のイグジット・マネジメントにまで継続して収集・分析した人事情報を活用するようになっています。
今まで採用責任者や人事担当者の経験や勘に頼った属人的な人事管理が行われてきましたが、抽象的な事項が多いHRにおいても、できる限りの定量化・データ化が進んでいます。
HRテック
データドリブン人事を支える要素として、いわゆるHRテックの存在があります。HRテックとは、「Human Resources」と「テクノロジー」を合わせた言葉で、その名の通り、人的資産のマネジメントにテクノロジーを活かす取り組み全般を指します。
HRテックにはAIやビッグデータの活用から、導入ハードルが低い人事系のSaaSサービスまで幅広いソリューションが存在しますが、総じて効率化や意思決定のスピードアップ、判断精度の向上に寄与します。
採用手法の多様化
昭和から平成初期にかけては、日本企業の採用と言えば新卒一括採用が主流であり、終身雇用を前提に、転職市場は大きな規模を持っていませんでした。しかし近年、少子高齢化や グローバル化など社会情勢の変化を背景に、転職が当たり前化し、それに応じて採用手法も多様化しました。
採用仲介サービスや、採用・転職エージェント、ヘッドハンティング、ダイレクトリクルーティング、リファラル採用など、多数の採用チャネルを組み合わせて採用計画をたてる必要が強まっており、同時に、履歴書や職務経歴書と面接という従来の採用手法のみでは多様な人材を見極められない、という現実が生まれています。
この困難を解決する手段として、リファレンスチェック等で採用段階から人材の多角的な情報を収集し、入社後も各種の意識調査を実施し、戦略的に人事マネジメントを行うことが一般化しつつあります。
人事コストの削減
人を扱う人事にまつわるコストは、会社の経理全体の中でもその額が大きくなる傾向があります。また、社員をいつ採用できるか、いつ辞めるか、といったことは予想が難しく、人事関連コストは変動を前提にマネジメントする難しさがあります。
そんな中、たとえば「社員が入社後3ヶ月で離職した場合」の損失は、1人あたり187.5万円と非常に大きな金額になるという試算さえあります。
このようなデータからも、採用と離職を適切にコントロールし、無駄な人事コストを抑える必要性がわかります。
人事調査・採用調査を行う際の注意点
個人情報保護が重要視される昨今においては、あらゆる人事調査で「本人の同意」を得ることが重要となります。日本企業では過去、本人同意を取らない採用時の身辺調査や、既存社員への信用調査が行われるケースが散見されましたが、コンプライアンスが重視される現在では、これらのグレーな調査はご法度と言えます。
また、採用時の調査では、候補者の能力とは関係がない以下のような事項の把握は「就職差別につながる恐れがあり配慮すべきだ」と、厚生労働省のガイドラインで定められています。
<a.本人に責任のない事項の把握>
・本籍・出生地に関すること (注:「戸籍謄(抄)本」や本籍が記載された「住民票(写し)」を提出させることはこれに該当します)
・家族に関すること(職業、続柄、健康、病歴、地位、学歴、収入、資産など)(注:家族の仕事の有無・職種・勤務先などや家族構成はこれに該当します)
・住宅状況に関すること(間取り、部屋数、住宅の種類、近郊の施設など)
・生活環境・家庭環境などに関すること
<b.本来自由であるべき事項(思想信条にかかわること)の把握>
・宗教に関すること
・支持政党に関すること
・人生観、生活信条に関すること
・尊敬する人物に関すること
・思想に関すること
・労働組合に関する情報(加入状況や活動歴など)、学生運動など社会運動に関すること
・購読新聞・雑誌・愛読書などに関すること
<c.採用選考の方法>
・身元調査などの実施 (注:「現住所の略図」は生活環境などを把握したり身元調査につながる可能性があります)
・合理的・客観的に必要性が認められない採用選考時の健康診断の実施
引用:厚生労働省『公正な採用選考の基本』
採用候補者への調査ならリファレンスチェックがおすすめ
ここまで述べたような社会情勢の中で、採用候補者のネガティブチェックとしてだけでなく、強みや特性まで客観的な情報が得られる「リファレンスチェック」に注目が集まっています。リファレンスチェックとは「採用候補者をよく知る人物(前職の上司、部下、同僚など)に候補者の業務経験や仕事ぶり、人柄などについて問い合わせること」であり、既に欧米では95%もの企業が導入している採用手法です。本人同意が前提のサービスが一般的で、最近では候補者や推薦者(リファレンスチェックの回答者)とのやりとりがWEB上で完結するオンライン型サービスを導入する企業が日本でも増えています。>リファレンスチェックサービス「ASHIATO」について詳細はこちら リファレンスチェックでよくある質問
リファレンスチェックでは、どのようなことを調査されるのでしょうか。よくある質問について紹介します。
実績・スキル
・当時の業務内容を具体的に教えてください。
・最も評価している実績はなんですか?
・業務のキャパシティは他の人と比べてどうですか?
仕事のスタイル
・どのような目標やミッションを追っていましたか?
・どのような仕事に対して特に前向きでしたか?
・チームと個人、どちらで働くことが得意ですか?
勤務状況
・在籍期間や役職を教えてください。
・欠勤や遅刻など、勤怠が乱れることはありましたか?
・欠勤や遅刻をする時はどんな理由でしたか?
コミュニケーション・対人関係
・周りの同僚とのコミュニケーションはどうでしたか?
・上司や部下との関係はどうでしたか?
・業務上で相性のよかった人、よ くなかった人はどんな人物ですか?
人物像・性格
リファレンスチェックサービス検討時のチェックポイント
採用に際しての人事調査・リファレンスチェックを実施する場合、時間的なコストやノウハウの無さを背景に、調査会社への委託、もしくはオンライン型サービスを検討している人事担当者様も多いかと思います。検討するにあたっては以下のようなポイントをチェックすべきでしょう。・運営会社の信頼性・セキュリティ観点・本人同意の取得などコンプライアンス観点・手軽さ(金銭面・導入コスト面)の観点・オンボーディング、定着まで見越したサービスであるか、という観点>リファレンスチェックサービスの選び方については、こちらも参考にご覧くださ い
リファレンスチェックガイド ーリファレンスチェックサービスの選び方ー リファレンスチェックならエン・ジャパンの 『ASHIATO(アシアト)』