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採用調査とは? バックグラウンドチェック・リファレンスチェックとの違いや調査内容、法律観点などを徹底解説

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多くの日本企業においては、書類審査と面接を併用することが一般的な採用手法となっています。そのため履歴書や数回の面接で得られる情報はいずれも候補者の自己申告によるもので、その真偽を把握するのは困難です。ましてや、候補者から発信のない情報について知ることは、さらに難しいと言えるでしょう。そんな不安を解消するために、欧米では一般的に採用調査が行われています。
本コラムでは、採用調査の概念から調査項目、実施の流れ、日本での採り入れ方まで詳しく解説していきます。



採用調査とは?

採用調査とは、候補者の能力や適性に問題がないかを採用時に調査することです。採用調査を通じて応募者の人物像や業務の遂行能力などを把握し、人材の見極め精度を高める狙いで行われます。調査内容は以前の勤務先での人事評価だけでなく、経歴詐称や犯罪歴、処分歴などがないかにも及びます。いわゆる「バックグラウンドチェック」や「リファレンスチェック」を包括する概念として、採用調査という言葉が使用されるケースが多いです。

採用調査の目的

一番の目的は、自社に適した人材の採用を成功させる確率を高めることです。入社後に活躍できるかどうかは、採用予定者の能力や経験にくわえて、組織の風土や価値観、既存社員や顧客との相性など、さまざまな要因に影響されます。そのため、以前の職場での評価や行動、考え方、関係性などの情報を踏まえて人材の見極めを行えるよう、事前に採用予定者を調査する企業があります。

基本的に採用調査は合法

個人情報保護法や職業安定法、厚生労働省が定める「公正な採用選考」などのガイドラインを遵守する限り、採用調査を行っても問題はありません。採用調査が違法なイメージをお持ちの人は、「身元調査の実施」が採用選考の際に配慮すべき事項として含まれていることが気になるかもしれません。しかし、身元調査は対象者のプライベートや家族状況なども調査することとされているため、採用調査とは範囲が異なります。そのため、採用調査を適切に実施する場合は、コンプライアンス上もリスクはないと言って問題はないでしょう。


「採用調査」と似た言葉との違い

採用調査と近い意味で使われる「バックグラウンドチェック」や「リファレンスチェック」、「身辺調査」という言葉があります。以下でそのニュアンスの違いをご紹介しますので、人事活動で使用する際の参考としてください。

「バックグラウンドチェック」との違い

バックグラウンドチェックは採用調査と同じ意味として使われることも多い言葉で、採用予定者の背景調査を指す言葉です。候補者の経歴や身辺に詐称や問題がないか、第三者機関の調査や候補者本人による証拠書類の提出によって確認することが一般的です。調査内容は学歴や職歴、資格、賞罰などの事実確認が中心で、採用予定者に同意をえたうえで調査を進めます。バックグラウンドチェックは、候補者にマイナスな要素がないか確認するネガティブチェックの意味合いが比較的強い、といえるでしょう。

関連記事:バックグラウンドチェックとリファレンスチェックの違いとは? おすすめはどっち?

「リファレンスチェック」 との違い

採用調査=「採用に際しての候補者に対する調査」の中でも、上司や元同僚などのリファレンス先からの情報取得に特化した手法がリファレンスチェックです。具体的には、職務遂行力や業績、コミュニケーション力、勤務態度などを調査します。リファレンスチェックは経歴等の事実確認以外にも、候補者の仕事ぶりや人柄などのポジティブな面も含めて確認して、採用企業とのマッチ度を見極めることに役立つでしょう。ツールを使用せず自社で調査を実施する際は、採用予定者に同意を得たうえで前職の上司や同僚の連絡先を聞き、ヒアリングします。

関連記事:バックグラウンドチェックとは? どこまで厳しく調査する? 調査内容や実施の流れを解説

「身辺調査」との違い

採用調査は、企業の採用活動のプロセスとして行われる調査だけを指す言葉ですが、身辺調査は、採用に限らない「特定個人の経歴や背景を確認する調査」のことを意味します。調査対象は、結婚相手、債務者、取引相手、保険の適応者など、多岐にわたります。


採用調査の調査項目



採用調査は自社で行う場合もありますが、ノウハウを持った調査会社などへ委託することが一般的です。ここでは、調査会社へ依頼した場合にどのような内容を調査してくれるのか、主要な項目を紹介していきます。

学歴

履歴書に記載の学校に実際に在籍していたか、どの期間在籍していたか、いつ卒業したのかなどを調査し、本人の申告内容と差異がないか調べます。ここで学歴詐称や年齢詐称が明らかになるケースがあります。調査によっては卒業証明書の代理取得なども対応することもあります。

職歴

職歴についても学歴同様、在籍していた事実の有無、期間などを自己申告の内容と照合します。実際には所属していない会社を申告したり、逆に未申告の就業先があったり、期間を偽るなどしている場合は経歴詐称になりますので、そのリスクをチェックすることができます。

前職での勤怠状況・トラブル

前職での勤怠に問題がなかったか、また、トラブルがあったり、それによって処分を受けたりしていないか、などが調査対象になります。一般的に、処分を受けた経歴などは質問されなければ候補者に申告の義務はないため、こういった調査で発覚することも少なくないでしょう。

反社チェック

暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律』(暴対法)とそれに基づく指針(『企業が反社会的勢力による被害を防止するための指針』)・条例によって、企業には反社会的勢力との一切の関わりを断つことが求められています。そのため、これから採用する人材が反社会的勢力との関わりがないかどうかという点も、調査項目に含めているところが多いようです。

犯歴照会

日本の警察の犯歴記録は原則非公開であり、職歴調査が理由であっても開示してもらえません。そのため、基本的にはメディアサーチによって調査することが多いようです。また、同様に訴訟記録も照会が難しく、現状では最高裁判所の判決記録のみが公開されていますので、地方裁判所などでの訴訟歴については調査が難しいのが実情です。

債務照会・破産歴照会

クレジット情報の照会や、官報に掲載の破産記録などで調査します。特にお金を扱う金融業界などでは調査対象になることがあります。


採用調査の流れ

採用調査を実施する場合の流れについて説明します。

採用調査の同意を採用予定者から得る

採用調査を行うには、対象者から同意を得る必要があります。これは、調査する項目が個人情報保護法における個人データに該当するためです。自社で調査する場合でも外部の企業に依頼する場合でも、対象者から同意を得なければなりません。仮に同意を得ずに調査した場合は、違法となるため注意が必要です。一般的には、採用調査の目的や調査方法を書面で用意し、口頭で説明したうえで同意を得ます。

採用調査会社に依頼する

外部に依頼する場合は、調査したい項目や手法、費用について調査会社とすり合わせを行います。調査会社によって対応している項目や調査の手法が異なるため、目的を達することが可能な依頼先を選定する必要があるためです。また、項目数などによって費用が変わるため、自社で調査できる範囲は自社で、難しい範囲は調査会社に依頼するなど、使い分けるケースもあります。

採用調査を実施する

調査会社は独自のデータベースを保持していることがあるため、それらのデータや関係機関への照会などを通して採用調査を進めます。自社で行う場合は、関係機関への問い合わせや前職の上司などに連絡することになるでしょう。先述の通り、事前に対象者から同意を得た項目、手法のみで調査を実施します。

調査結果を受け取る

調査会社に依頼した場合はレポートが納品されます。レポートは採用関係者のみに共有されるため、採用予定者などの目に触れることはありません。あくまでも採用の判断材料としてのみ活用される情報である点に留意が必要です。


採用調査の費用相場

調査する項目や対象人数、手法によって費用に幅はありますが、一般的な採用調査の場合は1人あたり3〜5万円程度が相場です。調査にかかる期間は約1週間みておくといいでしょう。上位役職者候補など重要なポストを任せる想定で、採用予定者について詳細に調査する場合は、1人あたり10〜20万円ほどかかるケースもあります。こちらも調査機関は約1週間と変わりありません。


アメリカにおける採用調査

アメリカでは採用調査はごく一般的なもので、正社員だけでなくパートタイム従業員にも行われています。背景には、「ネグリジェント・ハイヤリング」という考え方があります。日本語では過失採用、怠慢雇用などと訳され、企業が労働者を雇用するときに採用調査を行わず、その労働者が事故や事件を起こした場合、採用時にチェックを怠った企業にも責任がある、ということを意味します。
実際に、従業員が社用車を運転中に事故を起こした後、その従業員が過去に飲酒運転で免許取り消しになっていた事実が明らかになり、雇用する企業が賠償金の支払いを命じられたという事例があるなど、ネグリジェント・ハイヤリングの考え方は社会に浸透しています。
日本でも昨今、コンプライアンス意識の向上を背景に「不適格な者を雇用しないようにすることは企業の責任である」という考え方が一般的になりつつあり、採用候補者への適切な範囲でのチェック実施が求められています。


日本での採用調査のリスク


採用調査で得られる情報は日本において個人情報に該当するため、個人情報関連法や職業安定法、厚生労働省の指針など複数の関連する法律に沿った調査の実施、及び情報の慎重な取り扱いが求められています。
また上述した通り、調査する内容には個人情報が含まれるため、候補者に利用目的を説明し、本人の同意を得て実施する必要があります。
以下で、厚生労働省が示す『公正な採用選考の基本』の「採用選考時に配慮すべき事項」を紹介しますのでご参考にしてください。
<a.本人に責任のない事項の把握>
・本籍・出生地に関すること (注:「戸籍謄(抄)本」や本籍が記載された「住民票(写し)」を提出させることはこれに該当します)
・家族に関すること(職業、続柄、健康、病歴、地位、学歴、収入、資産など)(注:家族の仕事の有無・職種・勤務先などや家族構成はこれに該当します)
・住宅状況に関すること(間取り、部屋数、住宅の種類、近郊の施設など)
・生活環境・家庭環境などに関すること

<b.本来自由であるべき事項(思想信条にかかわること)の把握>
・宗教に関すること
・支持政党に関すること
・人生観、生活信条に関すること
・尊敬する人物に関すること
・思想に関すること
・労働組合に関する情報(加入状況や活動歴など)、学生運動など社会運動に関すること
・購読新聞・雑誌・愛読書などに関すること

<c.採用選考の方法>
・身元調査などの実施 (注:「現住所の略図」は生活環境などを把握したり身元調査につながる可能性があります)
・合理的・客観的に必要性が認められない採用選考時の健康診断の実施

引用元:厚生労働省『公正な採用選考の基本

このように、現在の採用調査においては、個人情報を中心として把握する情報に十分に注意を払う必要があり、その管理コストや事故リスクは小さくありません。そのため、個人情報関連法が制定される以前に日本企業が行っていたような企業本位での採用調査は下火になり、法律に沿って、かつ管理コストが小さい調査手法が求められています。


注目される「リファレンスチェック」

前述のとおり、リファレンスチェックは、候補者の上司や元同僚、あるいは取引先などの関係者(推薦者)から候補者の情報をヒアリングする採用調査です。候補者の同意のもとで行われるリファレンスチェックでは、推薦者から候補者のポジティブな側面を引き出すことも可能で、単なるネガティブチェックとは一線を画す性質を持っており、導入する企業が増加しています。


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