採用調査とは?
採用調査とは、候補者の能力や適性に問題がないかを採用時に調査することです。前の勤務先の人事評価の確認だけでなく、経歴詐称や、犯罪歴、処分歴などがないかを確認することが一般的です。いわゆる「バックグラウンドチェック」や「リファレンスチェック」を包括する概念として採用調査という言葉が使用されるケースが多いです。
「採用調査」と似た言葉との違い
採用調査と近い意味で使われる「バックグラウンドチェック」や「リファレンスチェック」、「身辺調査」という言葉があります。以下でそのニュアンスの違いをご紹介しますので、人事活動で使用する際の参考としてください。
「バックグラウンドチェック」との違い
バックグラウンドチェックは採用調査と同じ意味として使われることも多い言葉で、採用候補者の背景調査を指す言葉です。候補者の経歴や身辺に詐称や問題がないか、第三者機関の調査や候補者本人による証拠書類の提出によって確認します。バックグラウンドチェックは、候補者にマイナスな要素がないか確認するネガティブチェックの意味合いが比較的強い、といえるでしょう。
「リファレンスチェック」 との違い
採用調査=「採用に際しての候補者に対する調査」の中でも、候補者の関係者(上司や元同僚などのリファレンス先)からの情報取得に特化した手法がリファレンスチェックです。リファレンスチェックは経歴等の事実確認以外にも、候補者の仕事ぶりや人柄などのポジティブな面も含めて確認して、採用企業とのマッチ度を見極めることに役立ちます。
「身辺調査」との違い
採用調査は、企業の採用活動のプロセスとして行われる調査だけを指す言葉ですが、身辺調査は、採用に限らない「特定個人の経歴や背景を確認する調査」のことを意味します。調査対象は、結婚相手、債務者、取引相手、保険の適応者など、多岐にわたります。
採用調査の調査項目
採用調査は自社で行う場合もありますが、ノウハウを持った調査会社などへ委託することが一般的です。ここでは、調査会社へ依頼した場合にどのような内容を調査してくれるのか、主要な項目を紹介していきます。 学歴
履歴書に記載の学校に実際に在籍していたか、どの期間在籍していたか、卒業したのかなどを調査し、本人申告の内容と差異がないか調べます。ここで学歴詐称や年齢詐称が明らかになるケースがあります。
職歴
職歴についても学歴同様、在籍していた事実の有無、期間などを自己申告の内容と照合します。実際には所属していない会社を申告したり、期間を偽るなどしている場合は経歴詐称になりますので、そのリスクをチェックすることができます。
前職での勤怠状況・トラブル
前職での勤怠に問題がなかったか、また、トラブルがあったり、それによって処分を受けていないか、が調査対象になります。一般的には処分を受けた経歴などは質問されていなければ候補者に申告の義務はないため、こういった調査で発覚することも少なくないでしょう。
反社チェック
犯歴照会
日本の警察の犯歴記録は、原則非公開であり、職歴調査が理由であっても開示してもらえないため、基本的にはメディアサーチによって調査することが多いようです。また、同様に訴訟記録も照会が難しく、現状では最高裁判所の判決記録のみが公開されていますので、地方裁判所などでの訴訟歴については調査が難しいのが実情です。
債務照会・破産歴照会
クレジット情報の照会や、官報に掲載の破産記録などで調査します。特にお金を扱う金融業界などでは調査対象になることがあります。
アメリカにおける採用調査
アメリカでは採用調査はごく一般的なもので、正社員だけでなくパー トタイム従業員についても行われています。その背景には、「ネグリジェント・ハイヤリング」という考え方があります。日本語では過失採用、怠慢雇用などと訳され、企業が労働者を雇用するときに採用調査を行わなず、その労働者が事故や事件を起こした場合、採用時にチェックを怠った企業にも責任がある、ということを意味します。
実際に、従業員が社用車を運転中に事故を起こした後、その従業員が過去に飲酒運転で免許取り消しになっていた事実が明らかになり、雇用する企業が賠償金の支払いを命じられたという事例があるなど、ネグリジェント・ハイヤリングの考え方は社会に浸透しています。
また日本でも昨今、コンプライアンス意識の向上を背景に「不適格な者を雇用しないようにすることは企業の責任である」という考え方が一般的になりつつあり、採用候補者への適切な範囲でのチェック実施が求められています。
日本での採用調査のリスク
採用調査で得られる情報は日本において個人情報 に該当するため、個人情報関連法や、職業安定法、厚生労働省の指針など複数の関連する法律に沿った調査の実施、及び情報の慎重な取り扱いが求められています。また、上述した通り、調査する内容には個人情報が含まれるため、候補者に利用目的を説明し、本人の同意を得て実施する必要があります。以下で、厚生労働省が示す『公正な採用選考の基本』の「採用選考時に配慮すべき事項」を紹介しますのでご参考にしてください。 <a.本人に責任のない事項の把握>
・本籍・出生地に関すること (注:「戸籍謄(抄)本」や本籍が記載された「住民票(写し)」を提出させることはこれに該当します)
・家族に関すること(職業、続柄、健康、病歴、地位、学歴、収入、資産など)(注:家族の仕事の有無・職種・勤務先などや家族構成はこれに該当します)
・住宅状況に関すること(間取り、部屋数、住宅の種類、近郊の施設など)
・生活環境・家庭環境などに関すること
<b.本来自由であるべき事項(思想信条にかかわること)の把握>
・宗教に関すること
・支持政党に関すること
・人生観、生活信条に関すること
・尊敬する人物に関すること
・思想に関すること
・労働組合に関する情報(加入状況や活動歴など)、学生運動など社会運動に関すること
・購読新聞・雑誌・愛読書などに関すること
<c.採用選考の方法>
・身元調査などの実施 (注:「現住所の略図」は生活環境などを把握したり身元調査につながる可能性があります)
・合理的・客観的に必要性が認められない採用選考時の健康診断の実施
引用元:厚生労働省『公正な採用選考の基本』
このように、現在の採用調査においては、個人情報を中心として把握する情報に十分に注意を払う必要があり、その管理コストや事故リスクは小さくありません。そのため、個人情報関連法が制定される以前に日本企業が行っていたような企業本位での採用調査は下火になり、法律に沿って、かつ管理コストが小さい調査手法が求められています。
注目される「リファレンスチェック」
前述のとおり、リファレンスチェックは、候補者の上司や元同僚、あるいは取引先などの関係者(推薦者)から候補者の情報をヒアリングする採用調査です。候補者の同意のもとで行われるリファレンスチェックでは、推薦者から候補者のポジティブな側面を引き出すことも可能で、単なるネガティブチェックとは一線を画す性質 を持っており、導入する企業が増加しています。
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