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多くの人を「仕事を辞めたい」に追い込むブルシット・ジョブの正体

コラム公開日

仕事に「やりがい必要」96%

エン・ジャパンが約9,300人から回答を得たアンケート調査では、96%の人が「仕事にやりがいは必要だと思う」としています(図1)。


図1 仕事にやりがいは必要か
(出所:「『エン転職』ユーザーアンケート調査 結果発表」エン・ジャパン)

9,000名に聞く「仕事のやりがいと楽しみ方」調査 男性より女性は「感謝」「仕事の成果」「尊敬できる人と働くこと」を重視。―『エン転職』ユーザーアンケート調査 結果発表― | エン・ジャパン(en Japan)

人材総合サービスを提供する、エン・ジャパン株式会社、ニュースリリースのページです。

corp.en-japan.com

9,000名に聞く「仕事のやりがいと楽しみ方」調査 男性より女性は「感謝」「仕事の成果」「尊敬できる人と働くこと」を重視。―『エン転職』ユーザーアンケート調査 結果発表― | エン・ジャパン(en Japan)
 

また、約8,600人から回答を得た別のアンケート調査では、退職を考え始めたきっかけについて以下のような答えが出ています(図2)。


図2 退職を考え始めたきっかけ
(出所:「『エン転職』ユーザーアンケート調査 結果発表」エン・ジャパン)

8,600名に聞いた「退職のきっかけ」調査。転職理由は「給与」「やりがいのなさ」「企業の将来性」。―『エン転職』ユーザーアンケート調査 結果発表― | エン・ジャパン(en Japan)

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8,600名に聞いた「退職のきっかけ」調査。転職理由は「給与」「やりがいのなさ」「企業の将来性」。―『エン転職』ユーザーアンケート調査 結果発表― | エン・ジャパン(en Japan)
 

「やりがい・達成感」は、「給与」とほぼ同じくらい大切だと考えられていることがわかります。


「ブルシット・ジョブ」とは

そのような中で、「ブルシット・ジョブ」の存在を指摘しているのが、人類学者のデヴィット・グレーバー氏です。

まず、グレーバー氏が述べている「ブルシット・ジョブ」の定義はこのようなものです。
最終的な実用的定義=ブルシット・ジョブとは、被雇用者本人でさえ、その存在を正当化しがたいほど、完全に無意味で、不必要で、有害でもある有償の雇用の形態である。とはいえ、その雇用条件の一環として、本人は、そうではないと取り繕わなければならないように感じている。
<引用:デヴィッド・グレーバー「ブルシット・ジョブ クソどうでもいい仕事の理論」p27-28>*1


自分でも無意味で不要だと思っているけれど、やる気があるフリをしていなければ社内で気まずい思いをする——
そんな経験をしたことがある人は多いのではないでしょうか。

そしてグレーバー氏によると、ブルシット・ジョブには以下の5種類があるといいます。


1)取り巻き=誰かを偉そうにみせたり、だれかに偉そうな気分を味わわせるという、ただそれだけのために(あるいはそれを主な理由として)存在している仕事

2)脅し屋の仕事=肩書きや行動によって他者を脅かすが、雇用主に自分の存在を全面的に依存している仕事

3)尻拭いの仕事=組織に欠陥があるために、その穴埋めだけのために存在している仕事

4)書類穴埋め人の仕事=誰も真剣に読まない書類を延々と作る人

5)タスクマスターの仕事=もっぱら他人への仕事の割り当てだけからなる仕事。


ムダな会議。その会議のために丁寧に読む人などいない書類を作り続ける仕事。本音を言えば出たくない宴会。発言権も得るものもないのに上司に同行する仕事。挙げればキリがありません。

また、コロナ禍では、リモートワークにも関わらずハンコを押すためだけに出社を強いられた会社員が多いことが話題になりました。それどころか、実は通勤そのものをしなくても良い人が一定割合いることも明らかになってしまいました。

筆者にも、これはブルシット・ジョブだと思った経験があります。
内輪の定例会議だけのために、出席者ひとりひとりが好む飲み物を把握して出すという仕事です。
それでなくとも異動直後は人の顔を覚えることでいっぱいいっぱいです。
お客様ではないのだから、飲み物くらい自分で持ってくれば良いのにムダな記憶力を使わされているのです。
参加者がペットボトルのお茶を持ち込もうものなら、完全なムダ仕事です(実際、そんなことは多々ありました)。無駄に使われた紙コップも可哀想です。

「これで給料をもらえているんだから、まあいいか」と思うくらいにしか、気持ちの持って行きどころがなかったことを覚えています。

あるいは、会社員なのだから仕方ない、という諦めに至る人もいることでしょう。


人類学者が主張する「仕事の本質」〜あなたの仕事は?

グレーバー氏はブルシット・ジョブの存在と同時に、労働とは何かについても語っています。労働とは「ケアリング」であると指摘しています。
労働とは、槌で叩いたり、掘削したり、滑車を巻き上げたり、刈り取ったりする以上に、ひとの世話をする、ひとの欲求や必要に配慮する、上司の望むことや考えていることを説明する、確認する、予想することである。植物、動物、機械などをケアリングし、管理し、保守する作業についてはいうまでもない。
<引用:デヴィッド・グレーバー「ブルシット・ジョブ クソどうでもいい仕事の理論」p305-306>*2

橋を架けることは、川を渡りたいという人の欲求や必要をケアする仕事である、といった具合です。

この指摘から、皆さんは自分の仕事についてどう思うでしょうか。

①客観的な尺度を見つけることは困難

グレーバー氏は「ある仕事がブルシット・ジョブかどうか」についてはこのようにも述べています。
客観的な尺度をみつけることは困難である。しかし、なんとなく感じるためのかんたんな方法はある。ある職種の人間すべてがすっかり消えてしまったらいったいどうなるだろうか、と問うてみることである。かりに看護師やゴミ収集人、あるいは整備士であれば、もしも、かれらが煙のごとく消えてしまったなら、だれがなんといおうが、その結果はただちに壊滅的なものとしてあらわれるだろう。教師や港湾労働者のいない世界はただちにトラブルだらけになるし、SF作家やスカ・ミュージシャンのいない世界がつまらないものになるのはあきらかだ。
<引用:デヴィッド・グレーバー「ブルシット・ジョブ クソどうでもいい仕事の理論」p8>*3

この指摘をどう感じるかは、人や置かれている状況によって異なることと思います。

②墓標には刻まれない

また、グレーバー氏はこのようにも述べています。
ヨーロッパやアメリカの人びとが、いざ永遠という視点に立たされて、みずからの職務をおのれの生きた証とすることはなかった。墓地をたずねてみればわかる。「蒸気管取付工」とか「エグゼクティヴ・バイス・プレジデント」、「公園管理者」、「事務員」といった文言の刻まれた墓を探しても無駄である。
<引用:デヴィッド・グレーバー「ブルシット・ジョブ クソどうでもいい仕事の理論」p311>*4

もちろんどんな文言を墓標に刻むかは個人の自由ですが、現代の労働のあり方についてひとつ問いを投げかける指摘です。


新しいドアを開くという選択肢も

労働とは、人生のうちで多くの時間を費やす対象です。

もちろん、何を目的に労働をするかについては、人それぞれの価値観があります。
ただ、自分が「耐えがたいブルシット・ジョブ」に人生の大半を費やされていると感じたとき、そこにとどまるのも新しいドアを探すのにもまた、それぞれの行動があります。

なお世界で世論調査を実施しているYouGovの調査では、イギリスの労働者の全体のうち、みずからの仕事に何の意味もないと感じていたのは三十七%であり、オランダに至っては四十%だったということです*5
決して少ない数字ではありません。

あなたの近くにも、同じ思いをしながら同じ仕事をしている人はいることでしょう。
何かがおかしい、そう考えたときは、他の部署の人と話題をシェアしてみるのもひとつの手段です。

「雇用条件の一環として、本人は、そうではないと取り繕わなければならないように感じている」。

あなたのエネルギーをそんなことに振り向けていられないと感じたとき、「誰かをケア」する別の場所があるかもしれません。
清水 沙矢香

この記事を書いた人

清水 沙矢香

2002年京都大学理学部卒業後、TBS報道局で社会部記者、経済部記者、CSニュース番組のプロデューサーなどを務める。ライターに転向後は、取材経験や各種統計の分析を元に幅広い視座からのオピニオンを関連企業に寄稿。<br> 趣味はサックス演奏。自らのユニットを率いてライブ活動を行う。<br> <a href="https://twitter.com/M6Sayaka "target="_blank">https://twitter.com/M6Sayaka </a>