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「45歳定年制」の時代 40-50代に人気の転職に有利な資格は?

コラム公開日
サントリー新浪剛史社長の発言で注目された、「45歳定年制」。
大企業で相次いだ「令和の大リストラ」では、まさに40代、50代の社員がメインターゲットになっています。

もちろん、全ての企業がこのような大リストラに出るわけではありませんし、現在ある終身雇用制度がすぐになくなるとも考えにくいものです。
しかし、コロナ禍という新たな危機に直面し、45歳前後というのはビジネスパーソンとして自分の価値を上げていかなければならない年齢の節目でもあります。

そこで今回は、この世代にとって価値がある本当の資格取得について、考察していきましょう。
自分自身のキャリアを考えるうえで、ぜひ参考にして下さい。


黒字でも大型リストラ実施

東京商工リサーチによると、2021年に早期・希望退職募集を開示した上場企業は84社にのぼりました。
2020年の93社よりは減ったものの、リーマン・ショック後の2009年、2010年以来、2年連続で80社を超えるのは11年ぶりです(図1)。


図1 主な上場企業の希望・早期退職者募集状況
(出所:「2021年上場企業『早期・希望退職』募集状況」東京商工リサーチ)
https://www.tsr-net.co.jp/news/analysis/20220120_01.html 

またこの中で、1000人を超える規模のリストラを実施した企業が5社ありました。
コロナ禍で人件費等のコスト削減に着手した大型募集が散見されたほか、中小事業者では赤字が原因となって早期・希望退職の募集が実施されたと、東京商工リサーチは分析しています*1。

50代以降では役職定年・再雇用による収入ダウンも

また、意識したいのはリストラの可能性だけではありません。役職定年と定年後再雇用です。
まず、役職定年による収入ダウンについては、下のような調査結果が出ています(図2)。


図2 役職定年後の年収の変化
(出所:「50代・60代の働き方に関する調査 報告書」ダイヤ高齢社会研究財団、2018年) 
https://dia.or.jp/disperse/questionnaire/pdf/questionnaire_20180831_01.pdf p5

役職定年後の年収は「25〜50%未満」「50~75%未満」にまで減る人が多いようです。

また、こちらは定年後再雇用による賃金の変化です(図3)。


図3 定年後継続雇用による給与水準の変化(平成26年)
(出所:「高年齢者の雇用・就業の現状と課題Ⅱ」厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-11601000-Shokugyouanteikyoku-Soumuka/0000073845.pdf p9

3割から5割程度の減少、という人が多くなっています。

これでは老後の安心が得にくいという人は少なくないでしょう。そこで、自分の市場価値を高め、何らかの形で収入を維持したいと考える人は多いことと思います。


収入ダウンを防ぐ方法としての資格取得

さて、自分の市場価値を高める手段のひとつに資格の取得があります。

ただ、資格などの「学び直し」については、このような壁があるようです(図4)。


図4 学び直しなど自己啓発を行う上での課題
(出所:「イノベーション創出のためのリカレント教育」経済産業省)
https://www.meti.go.jp/shingikai/sankoshin/sangyo_gijutsu/kenkyu_innovation/pdf/021_02_00.pdf p13

時間や費用といった物理的な問題はそれぞれの中で解消しなければなりません。
しかし、注目したいのは
「どのようなコースが自分の目指すキャリアに適切なのかわからない」
「自分の目指すべきキャリアがわからない」
という人が少なくないことです。

逆に言えば、目指す方向を明確に絞って学ぶべきものをシンプルにすれば、時間や費用についての考え方もすっきりすることでしょう。
そこで、各種資格と目指す方向の関連を紹介していきます。


何を目指すのかに応じた各種資格

まずは45歳~50歳以降、どのような「第二の働き方」をしたいのか、明確にする必要があります。形態ごとにみていきましょう。

主な選択肢は、
・独立、開業
・転職
・副業
となります。

独立・開業を目指したい人向けの資格

独立・開業の代表格と言えば「業務独占資格」(=資格取得者にしか業務が認められない)です。

以下のようなものがあります。

1)税理士
2)不動産鑑定士
3)行政書士・司法書士

これらの資格の場合、取得が難しいという特徴がありますが、数年かけて計画的に取得するのもひとつの手段です。

他には、

4)ファイナンシャルプランナー
5)中小企業診断士
6)社会保険労務士

といった資格が挙げられます。
筆者の会社員時代の先輩は50代でファイナンシャルプランナーの資格を取得し、定年前に退職して個人事務所を開業しています。
これらは、フリーランスとして複数のクライアントを持つこともできる資格です。

転職を有利に進めたい人向けの資格

転職を考える場合、DXに関する資格の需要は右肩上がりです。関連する資格としては、

1)ITストラテジスト
2)情報処理安全確保支援士
3)データベーススペシャリスト
4)ITパスポート試験

などがあります。情報処理安全確保支援士はIT系では初の「士業」です*2。

副業で収入アップを狙う人向けの資格

副業には様々な形があります。上でも紹介した独立・開業を目指す人向けの資格も、もちろん副業に生きることでしょう。その他としては、

1)電気工事士
2)気象予報士
3)ドローン検定
4)弁理士

などがあります。
特にドローンについては、2022年以降に国家資格になることで注目されています。また、知的財産の保護についての取り組みが強化されている中、弁理士もトレンドのひとつです。


資格の組み合わせで「オンリーワン」を目指すことも

ビジネスにおいて自分の価値を高めるために資格取得を検討する場合、やはり自分の経験値に箔をつける、といった考え方が無難です。現場である程度の知識を培っていれば、関連する資格は他よりも取得しやすいでしょう。「知っている項目が入っている」ことは、モチベーションの維持にもつながるからです。

一方で、複数分野を横断する資格を組み合わせることでオンリーワンの存在になることもできます。

筆者の知人は介護福祉士であると同時に、協会認定のアロマコーディネーターの資格を持っています。
これらを組み合わせ、高齢者の施設や自宅などを訪問してアロママッサージを行うというビジネスを計画しています。アロママッサージの利点を提供しつつ、同時に介護福祉士の資格もあるため、体を動かすときの注意点などを熟知しているのです。
もちろん、高齢者以外の顧客も獲得することが可能です。

「イノベーション人材」の需要も高い中、比較的取得しやすい資格の組み合わせで他の人と差別化をはかり、新たなビジネスを立ち上げる。
そんなことも、アイデア次第で実現できるのです。



*1
「2021年上場企業『早期・希望退職』募集状況」東京商工リサーチ
https://www.tsr-net.co.jp/news/analysis/20220120_01.html 

*2
東洋経済 2022年2月5日号 p58
清水 沙矢香

この記事を書いた人

清水 沙矢香

2002年京都大学理学部卒業後、TBS報道局で社会部記者、経済部記者、CSニュース番組のプロデューサーなどを務める。ライターに転向後は、取材経験や各種統計の分析を元に幅広い視座からのオピニオンを関連企業に寄稿。<br> 趣味はサックス演奏。自らのユニットを率いてライブ活動を行う。<br> <a href="https://twitter.com/M6Sayaka "target="_blank">https://twitter.com/M6Sayaka </a>