成長や成功は本当に努力次第?「ステレオタイプ脅威」とは
コラム公開日
もう10年ほど前のことになるが、母が入院していた病棟には当時にしては珍しく、大勢の女性に混じって若い男性の看護師さんが2名だけいた。
「男性の看護師さんたち、どう?」
母にきくと、
「みんな力持ちで優しいのよ。でも、注射はね、やっぱり女性の看護師さんの方が、ね?」
「ふーん。2人とも?」
「そう、2人とも」
母はクスリと笑いながらそう答える。
「そうなんだ・・・」
なんということはない会話で、当時は気にもかけなかったが、後になってそのことの意味を深く考えることになった。
それはなぜか。
「男性の看護師さんたち、どう?」
母にきくと、
「みんな力持ちで優しいのよ。でも、注射はね、やっぱり女性の看護師さんの方が、ね?」
「ふーん。2人とも?」
「そう、2人とも」
母はクスリと笑いながらそう答える。
「そうなんだ・・・」
なんということはない会話で、当時は気にもかけなかったが、後になってそのことの意味を深く考えることになった。
それはなぜか。
社会的アイデンティティは人生に大きな影響を与えうる
著名な社会心理学者、クロード・スティール博士の著書『ステレオタイプの科学』には、私たちがふだん頻繁に遭遇していながら、それと気づかずにいる問題が、科学的実証に基づいて明かされている。*1
その内容をご紹介しながら、社会的なアイデンティティが私たちの人生に大きな影響を与えているという事実をみていきたい。
その内容をご紹介しながら、社会的なアイデンティティが私たちの人生に大きな影響を与えているという事実をみていきたい。
社会的アイデンティティとステレオタイプ
社会にはさまざまな人々が住んでおり、その属性も実に多様だ。例えば、若者、高齢者、金持ち、女性、男性、LGBTQ+、外国人、障害者、政治的保守派、リベラル、病人・・・。
もし、そのそれぞれについて、
「あなたのイメージを挙げてみてください」
と言われたら、どうだろう。
おそらくそれぞれの属性について、多くの人が似通ったことを答えるのではないだろうか。
それは、私たちが、特定のアイデンティティに対してステレオタイプ(固定概念)を抱いているからだ。
ここで連合が行った調査結果をみてみよう。
この調査は、約5万人を対象として、アンコンシャス・バイアス(無意識の思い込み、偏見)に関係のある20の設問を示し、自分に思い当たるものをチェックしてもらうという形で行われた。
すると、1問でもチェックを入れた人、つまりアンコンシャス・バイアスを認識したことがある人は95.5%に上った。平均件数は、男性が5.9件、女性が5.0件、全体では5.7件。*2
そのうち、割合が高かった4件と回答者の割合は次のとおりである。
もし、そのそれぞれについて、
「あなたのイメージを挙げてみてください」
と言われたら、どうだろう。
おそらくそれぞれの属性について、多くの人が似通ったことを答えるのではないだろうか。
それは、私たちが、特定のアイデンティティに対してステレオタイプ(固定概念)を抱いているからだ。
ここで連合が行った調査結果をみてみよう。
この調査は、約5万人を対象として、アンコンシャス・バイアス(無意識の思い込み、偏見)に関係のある20の設問を示し、自分に思い当たるものをチェックしてもらうという形で行われた。
すると、1問でもチェックを入れた人、つまりアンコンシャス・バイアスを認識したことがある人は95.5%に上った。平均件数は、男性が5.9件、女性が5.0件、全体では5.7件。*2
そのうち、割合が高かった4件と回答者の割合は次のとおりである。
- 「『親が単身赴任中』というと、父親を想像 する(母親を想像しない)」 66.3%
- 「介護しながら働くのは難しいと思う」 58.4%
- 「体力的にハードな仕事を女性に頼むのは可哀そうだと思う」 51.5%
- 「『普通は〇〇だ』『それって常識だ』と思うことがある」 46.2%
この結果からも、特定のアイデンティティとステレオタイプが結びついていることがわかる。
では、もし自分のアイデンティティのステレオタイプがネガティブなものだったら?
例えば、女性は理数系に弱く、リーダーシップがとれないとか、あるいは男性は家事や子育てが苦手だとかといった類いのステレオタイプだ。
そのことも私たちは十分承知している。そして、そのステレオタイプに当てはまることをすれば、「やっぱり、そうか」と評価され、そういう人間として扱われるおそれがあることも知っている。
このことは私たちにとって重大な意味をもつ。
「ジェンダX学業」に関するステレオタイプ脅威
よくあるステレオタイプについてみていこう。
「女性は数字に弱い」というステレオタイプだ。
理数系の成績に男女差が生じる根本的な理由は、遺伝的な数学能力の差にあるという考えが以前からあった。つまり、理数系の学問に関する女性の成績不振は、女性性に由来するという考えだ。
スティール博士たちの研究グループは、女性の数学の成績に影響を与える原因は、例えばジェンダに関する「ステレオタイプ脅威」にあるのではないかと考えて実験を行った。
「ステレオタイプ脅威」とは、社会的なアイデンティティがネガティブなステレオタイプと結びつき、人々にプレッシャーを与えることだ。
例えばこの場合なら、もし数学の点が悪ければ、そのネガティブなステレオタイプが、自分自身の特性としても自分が属する集団、つまり女性の特性としても正しかったと思われてしまうのではないかという不安だ。
その不安が彼女たちを動揺させ、パフォーマンスの低下を招く。
もし、こうしたステレオタイプ脅威が、本当に女性の数学の成績を低下させるのだとしたら、女性はテストを受けるとき、それをいつも経験しているはずだ。
したがって、実験では、さらに対象者にプレッシャーをかける必要はない。
逆に、難しい数学のテストの前に女性たちのプレッシャーを和らげ、もし成績がアップすれば、それまでの成績不振はステレオタイプ脅威に関連したプレッシャーのせいだといえる。
そこで、研究チームはプレッシャーを抑える方法として、女性たちがテストを受ける前にこう説明することにした。
「みなさんも『難しい数学のテストでは男性の方が女性よりも点数が高い』という説を聞いたことがあるでしょう。しかし、これから受けてもらうテストは違います。これから受けてもらうテストでは、女性の成績はいつも男性と同じです」
彼女たちがそれまでジェンダにまつわるステレオタイプ脅威からフラストレーションを抱えていたとしても、こういう説明を受ければ、そのプレッシャーから解放されるはずだ。
こうした考えに基づいて、ミシガン大学で実験が行われた。数学が得意な男子学生と女子学生を集め、難しい数学の試験を個別に受けてもらったのだ。
その結果は劇的なものだった。
テストの前に、「このテスト結果には性差がある」と言われた女子学生の点数は男性学生よりも低かった一方、「このテストの結果に性差はない」と説明を受けた女子学生の点数は、基礎学力が同レベルの男子学生の点数と同等だったのだ。
つまり、この実験のような条件下では、女子学生の成績不振は消滅したということになる。
この結果からわかったのは、女性の数学の成績が振るわないのは、女性の能力ではなく、ステレオタイプ脅威によるプレッシャーからであるということだ。
それだけでなく、この実験結果は、そのような成績不振が改善可能であるということをも強く示唆している。
もし、数学に取り組む女性たちからステレオタイプ脅威を取り除けば、その成績を劇的に改善させることができるかもしれない。
これまで、女性は理数系の分野で、地位が上がるほど生き残るのが難しくなることが多くの調査で指摘されてきた。しかし、ステレオタイプ脅威を取り除けば、そうした状況を変えることができるかもしれないのだ。
「女性は数字に弱い」というステレオタイプだ。
理数系の成績に男女差が生じる根本的な理由は、遺伝的な数学能力の差にあるという考えが以前からあった。つまり、理数系の学問に関する女性の成績不振は、女性性に由来するという考えだ。
スティール博士たちの研究グループは、女性の数学の成績に影響を与える原因は、例えばジェンダに関する「ステレオタイプ脅威」にあるのではないかと考えて実験を行った。
「ステレオタイプ脅威」とは、社会的なアイデンティティがネガティブなステレオタイプと結びつき、人々にプレッシャーを与えることだ。
例えばこの場合なら、もし数学の点が悪ければ、そのネガティブなステレオタイプが、自分自身の特性としても自分が属する集団、つまり女性の特性としても正しかったと思われてしまうのではないかという不安だ。
その不安が彼女たちを動揺させ、パフォーマンスの低下を招く。
もし、こうしたステレオタイプ脅威が、本当に女性の数学の成績を低下させるのだとしたら、女性はテストを受けるとき、それをいつも経験しているはずだ。
したがって、実験では、さらに対象者にプレッシャーをかける必要はない。
逆に、難しい数学のテストの前に女性たちのプレッシャーを和らげ、もし成績がアップすれば、それまでの成績不振はステレオタイプ脅威に関連したプレッシャーのせいだといえる。
そこで、研究チームはプレッシャーを抑える方法として、女性たちがテストを受ける前にこう説明することにした。
「みなさんも『難しい数学のテストでは男性の方が女性よりも点数が高い』という説を聞いたことがあるでしょう。しかし、これから受けてもらうテストは違います。これから受けてもらうテストでは、女性の成績はいつも男性と同じです」
彼女たちがそれまでジェンダにまつわるステレオタイプ脅威からフラストレーションを抱えていたとしても、こういう説明を受ければ、そのプレッシャーから解放されるはずだ。
こうした考えに基づいて、ミシガン大学で実験が行われた。数学が得意な男子学生と女子学生を集め、難しい数学の試験を個別に受けてもらったのだ。
その結果は劇的なものだった。
テストの前に、「このテスト結果には性差がある」と言われた女子学生の点数は男性学生よりも低かった一方、「このテストの結果に性差はない」と説明を受けた女子学生の点数は、基礎学力が同レベルの男子学生の点数と同等だったのだ。
つまり、この実験のような条件下では、女子学生の成績不振は消滅したということになる。
この結果からわかったのは、女性の数学の成績が振るわないのは、女性の能力ではなく、ステレオタイプ脅威によるプレッシャーからであるということだ。
それだけでなく、この実験結果は、そのような成績不振が改善可能であるということをも強く示唆している。
もし、数学に取り組む女性たちからステレオタイプ脅威を取り除けば、その成績を劇的に改善させることができるかもしれない。
これまで、女性は理数系の分野で、地位が上がるほど生き残るのが難しくなることが多くの調査で指摘されてきた。しかし、ステレオタイプ脅威を取り除けば、そうした状況を変えることができるかもしれないのだ。
ステレオタイプ脅威が人生に与える大きなダメージ
これまでご紹介した実験結果は、無視できない事実を示している。
それは他者からの差別や偏見、悪意がなくても、ステレオタイプ脅威が生じる可能性があるということだ。
人は、実際に偏見や差別、あるいはバイアスにさらされなくても、社会一般のステレオタイプを意識するだけで、そのことに自縛状態になり、萎縮して、自らパフォーマンスの低下を招いてしまうことが実証されたのだ。
そのアイデンティティを持っているがゆえに、自分に何か悪いことが起こるかもしれないと思うだけで、人は脅威にさらされてしまう。
社会的アイデンティティは、私たちの想像以上に人生の重要な局面で大きな影響力をもつ。
例えば、学校の成績、入学試験や資格試験、記憶力、運動能力、それらを発揮する際のプレッシャー、さらには異なる集団に属する人と一緒にいるときの緊張レベルなどだ。
それらは、個人の才能や選択、モチベーションによって決まると一般に考えられてきた。
アイデンティティにまつわる現実を無視すれば、個人の成長や成功は本人の努力次第だという間違った信条を肯定し、助長させてしまうのではないかと、スティール博士は危惧する。
それは他者からの差別や偏見、悪意がなくても、ステレオタイプ脅威が生じる可能性があるということだ。
人は、実際に偏見や差別、あるいはバイアスにさらされなくても、社会一般のステレオタイプを意識するだけで、そのことに自縛状態になり、萎縮して、自らパフォーマンスの低下を招いてしまうことが実証されたのだ。
そのアイデンティティを持っているがゆえに、自分に何か悪いことが起こるかもしれないと思うだけで、人は脅威にさらされてしまう。
社会的アイデンティティは、私たちの想像以上に人生の重要な局面で大きな影響力をもつ。
例えば、学校の成績、入学試験や資格試験、記憶力、運動能力、それらを発揮する際のプレッシャー、さらには異なる集団に属する人と一緒にいるときの緊張レベルなどだ。
それらは、個人の才能や選択、モチベーションによって決まると一般に考えられてきた。
アイデンティティにまつわる現実を無視すれば、個人の成長や成功は本人の努力次第だという間違った信条を肯定し、助長させてしまうのではないかと、スティール博士は危惧する。
ステレオタイプ脅威を縮小させる方法
では、私たちがステレオタイプから解放され、誰もが平等に質の高い人生を送ることができるようにするにはどうしたらいいのだろうか。
スティール博士の提案から2点ご紹介したいと思う。
スティール博士の提案から2点ご紹介したいと思う。
クリティカルマスについて理解する
ひとつ目は、クリティカルマスだ。
クリティカルマスとは、学校や職場など特定の環境で、少数派が一定の割合に達した結果、その人たちが少数派であるがゆえの居心地の悪さを感じなくなることをいう。
ただ、クリティカルマスは相対的な概念であり、ケースバイケースで数字が異なる。
例えば、こんな調査結果がある。
ハーバード大学の組織心理学者が世界のオーケストラにおけるクリティカルマスを調べたところ、女性の割合が全団員数の10%以下のオーケストラでは女性団員たちが激しいプレッシャーを感じていることがわかった。
彼女たちは、自分たちが男性団員と同じようにいい団員であることを証明するために、自分の実力を示さなければならないと思いつめていたのだ。
女性の割合が20%前後になると、今度はジェンダ間の摩擦が大きくなってしまった。
男女ともに満足度の高い経験を得ることができたのは、女性の割合が40%に達したとき だったという。
マイノリティが実力を発揮するためには、クリティカルマスについて理解し、改善することが必要不可欠なのだ。
クリティカルマスとは、学校や職場など特定の環境で、少数派が一定の割合に達した結果、その人たちが少数派であるがゆえの居心地の悪さを感じなくなることをいう。
ただ、クリティカルマスは相対的な概念であり、ケースバイケースで数字が異なる。
例えば、こんな調査結果がある。
ハーバード大学の組織心理学者が世界のオーケストラにおけるクリティカルマスを調べたところ、女性の割合が全団員数の10%以下のオーケストラでは女性団員たちが激しいプレッシャーを感じていることがわかった。
彼女たちは、自分たちが男性団員と同じようにいい団員であることを証明するために、自分の実力を示さなければならないと思いつめていたのだ。
女性の割合が20%前後になると、今度はジェンダ間の摩擦が大きくなってしまった。
男女ともに満足度の高い経験を得ることができたのは、女性の割合が40%に達したとき だったという。
マイノリティが実力を発揮するためには、クリティカルマスについて理解し、改善することが必要不可欠なのだ。
自己肯定化や「能力は伸ばせる」というマインドセットを伝える
次は、自己肯定感を高めると、ステレオタイプ脅威が縮小し、潜在的な実力が発揮できるようになるという事実だ。
これも実験によって実証されている。
アメリカテキサス州の農村部に住む中学1年生の中から、低所得家庭出身のマイノリティの生徒を無作為に選び、1年間にわたって大学生のメンターをつけた。
メンターはこの期間中に生徒に2回会い、日常的にメールをやり取りして、学業に関するアドバイスを与えた。
ただし、中学生を2つのグループに分け、一方のグループには「知性は伸ばせる」ということを強調するアドバイスを与えた。
メンターは、脳の働きを毎回説明し、難しい問題を解こうとすると神経細胞の樹状突起が伸びることを示すウエブサイトを見せた。
一方、もうひとつのグループには、知性に関することではなく、薬物の乱用防止を強調するアドバイスを与えた。
その結果、メンターが「知性は伸ばせる」とアドバイスした方のグループは、もう一方のグループより、男女ともに読解問題で大幅に優れた成績を上げた。
また、女子生徒の数学の点数は男子と同レベルだった。
一方で、メンターが薬物乱用防止を強調したグループでは、女子生徒の点数は男子よりも大幅に低かった。
これに類する研究結果は他にもある。
自己肯定化や「人間の能力は伸ばせる」というマインドセットを伝えると、ネガティブなステレオタイプを持たれている人たちの脅威を縮小することができるのだ。
これは家庭においても教育現場においても有益な知見ではないだろうか。
これも実験によって実証されている。
アメリカテキサス州の農村部に住む中学1年生の中から、低所得家庭出身のマイノリティの生徒を無作為に選び、1年間にわたって大学生のメンターをつけた。
メンターはこの期間中に生徒に2回会い、日常的にメールをやり取りして、学業に関するアドバイスを与えた。
ただし、中学生を2つのグループに分け、一方のグループには「知性は伸ばせる」ということを強調するアドバイスを与えた。
メンターは、脳の働きを毎回説明し、難しい問題を解こうとすると神経細胞の樹状突起が伸びることを示すウエブサイトを見せた。
一方、もうひとつのグループには、知性に関することではなく、薬物の乱用防止を強調するアドバイスを与えた。
その結果、メンターが「知性は伸ばせる」とアドバイスした方のグループは、もう一方のグループより、男女ともに読解問題で大幅に優れた成績を上げた。
また、女子生徒の数学の点数は男子と同レベルだった。
一方で、メンターが薬物乱用防止を強調したグループでは、女子生徒の点数は男子よりも大幅に低かった。
これに類する研究結果は他にもある。
自己肯定化や「人間の能力は伸ばせる」というマインドセットを伝えると、ネガティブなステレオタイプを持たれている人たちの脅威を縮小することができるのだ。
これは家庭においても教育現場においても有益な知見ではないだろうか。
身近な問題として捉える
さて、ここで冒頭の問題について考えてみたい。
大勢の女性看護師が働く職場のマイノリティ、男性看護師の問題だ。
彼らは本当に注射が苦手だったのだろうか。
それは母の思い込みだったのかもしれない。
だが、もし母の言うとおりだったとしたら、それはステレオタイプ脅威のせいだった可能性もある。
さらに問題なのは、母から「男性看護師は女性看護師より注射が下手だ」と聞かされて以来、筆者はなんとなくそうしたイメージを抱き、医療現場で男性看護師に遭遇するたびに、そのイメージを増幅させてきたことだ。
社会のステレオタイプは、こんなふうに形成され、いつのまにか増強されていくものなのかもしれない。
ステレオタイプ脅威は、私たちの人生に深く関わる問題だ。
そのことを認識し、まずは自分の身の周りを見回すことから始めてみるのはどうだろう。
資料
*1
クロード・スティール著 藤原朝子訳(2020)『ステレオタイプの科学 「社会の刷り込み」は成果にどう影響し、わたしたちは何ができるのか』(EPUB版)英治出版株式会社
pp.20-21、pp.48-61、p.96、pp.163-166、pp.211-212
*2
日本労働組合総沿う連合会(連合)(2020)「5万人を超える回答 アンコンシャス・バイアス(無意識の思い込み、偏見)診断」 pp.1-4
https://www.jtuc-rengo.or.jp/info/chousa/data/20201204.pdf?2585
大勢の女性看護師が働く職場のマイノリティ、男性看護師の問題だ。
彼らは本当に注射が苦手だったのだろうか。
それは母の思い込みだったのかもしれない。
だが、もし母の言うとおりだったとしたら、それはステレオタイプ脅威のせいだった可能性もある。
さらに問題なのは、母から「男性看護師は女性看護師より注射が下手だ」と聞かされて以来、筆者はなんとなくそうしたイメージを抱き、医療現場で男性看護師に遭遇するたびに、そのイメージを増幅させてきたことだ。
社会のステレオタイプは、こんなふうに形成され、いつのまにか増強されていくものなのかもしれない。
ステレオタイプ脅威は、私たちの人生に深く関わる問題だ。
そのことを認識し、まずは自分の身の周りを見回すことから始めてみるのはどうだろう。
資料
*1
クロード・スティール著 藤原朝子訳(2020)『ステレオタイプの科学 「社会の刷り込み」は成果にどう影響し、わたしたちは何ができるのか』(EPUB版)英治出版株式会社
pp.20-21、pp.48-61、p.96、pp.163-166、pp.211-212
*2
日本労働組合総沿う連合会(連合)(2020)「5万人を超える回答 アンコンシャス・バイアス(無意識の思い込み、偏見)診断」 pp.1-4
https://www.jtuc-rengo.or.jp/info/chousa/data/20201204.pdf?2585