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「テレワークで意思疎通できない」は嘘 むしろ大きなチャンスである

コラム公開日
コロナ対策として根付きつつあるテレワークですが、働き方に対する意識の変化やICT技術の進歩を考えれば、このまま日常化していくと考えられます。
一方でデメリットと感じる人も少なくありません。なかでもコミュニケーションが減る、難しいと悩む人は多くいます。

しかし実は、テレワークはコミュニケーション能力の向上や活性化につながる大きなチャンスなのです。
「ちょっとした工夫」で個人や組織をコミュニケーション上手にする手段があります。
ご紹介していきましょう。


「コミュニケーション」課題は約4割

厚生労働省の資料によると、テレワークで「コミュニケーション」に関する事柄を課題やデメリットと感じている人は4割程度にのぼっています(図1、2)。


図1 テレワークの課題
(出所:「テレワークを巡る現状について」厚生労働省資料)
https://www.mhlw.go.jp/content/11911500/000662173.pdf p7


図2 テレワークのデメリット
(出所:「テレワークを巡る現状について」厚生労働省資料)
https://www.mhlw.go.jp/content/11911500/000662173.pdf p7

「対面の方がコミュニケーションを取りやすい」。
多くの人がそう考えているかもしれませんが、もしかしたらそれは「単なる偏見」かもしれません。
コミュニケーションとは本来的に難しいものではありますが、まずコミュニケーションが難しいと考えている人の「理由」を分解する必要があるのです。


コミュニケーションを因数分解してみる

当然のことですが、コミュニケーションに必要なものは「本人の資質」だけではありません。コミュニケーションにはどのような要素が隠れているかを検証してみる必要があります。

コミュニケーションの要素①人的環境

エン・ジャパンが約4800人から回答を得た調査では、職場でのコミュニケーションについて78%が、「上手く取れていると思う・どちらかといえば思う」と答えています*1。

まず重要なのは「なぜ」コミュニケーションが取れている/取れていないのかという部分です。
それぞれの理由についての回答は以下のようになっています(図3、4)。


図3 コミュニケーションがうまく取れている理由
(出所:「『職場でのコミュニケーション』意識調査ー『エン派遣』ユーザーアンケートー」エン・ジャパン
https://corp.en-japan.com/newsrelease/2020/24687.html 


図4 コミュニケーションがうまく取れていない理由
『職場でのコミュニケーション』意識調査ー『エン派遣』ユーザーアンケートー」エン・ジャパン
https://corp.en-japan.com/newsrelease/2020/24687.html 

両者で最も対照的なのは「気軽に質問・相談ができる上司・同僚がいるかどうか」です。これを最初のポイントとしましょう。

コミュニケーションの要素②場所

オフィスで人とコミュニケーションを取る形はさまざまです。
上司や同僚への「報連相」だけでなく、会議室での軽い打ち合わせ、隣席どうしでの雑談、休憩場所で出くわした人とのちょっとした会話もあります。

また、1対1のコミュニケーションもあれば、複数人でのコミュニケーションもあります。
同じグループでも、他のメンバーと個人的に話をしたい、というケースも出てきます。
ところで皆さんはLINEをどのように使っていますか?

個人間のやりとりはもちろんですが、グループを作ったり、グループ内のメンバーでまた別のグループを作ることができたり…と、コミュニケーションの様々な形態を可能にしています。このような「環境」はオフィスを離れても必要です。

上司のいないところで上司の愚痴を吐きながら飲みたい時だってあるのが人間です。
もちろん、一部の気の合う人間だけで将来を語ったり野心を共有したりすることは創造性の向上にもつながる有用な時間です。


オフィス同様のコミュニケーション網を構築

新型コロナ以前から積極的にテレワークを実践している企業のひとつにサイボウズがあります。

サイボウズはチャットツールに多くの「スペース」を設けています*2。
会社全体のスペース、課のスペース、プロジェクトチームなど部門ごとのスペースだけでなく、「お金の話」「急ぎの用件」「新しいアイデアの話」といった目的別のスペースも設けられています。

最も特徴的なのは、「雑談用のスペース」があることです。「分報」と呼ばれる、業務に関係ない、とりとめもない会話を気楽に交わすためのオープンスペースです。
「疲れたー」「お腹空いたー」というだけのつぶやきもアリな場所です。


「タバコ部屋」の効能

ところで筆者は、会社員時代ヘビースモーカーでもありました。

今は喫煙所自体が少なくなっているかもしれませんが、喫煙所には独自の特徴があります。
タバコを吸わない人の場合はピンと来ないかもしれませんが、最も大きいのは喫煙者どうしの「タバコを吸う人である」という妙な仲間意識です。

この仲間意識が、様々な繋がりを生んでいきます。
直接は知らない他部署の人でも、よく顔を合わせるようになると雑談が始まります。すると、自分の部署にいるだけでは分からない会社の側面を聞くようになります。部署や世代を超えた会話は、会社についてよく知る機会になります。
また、年齢に関係ない親近感が生まれます。年上の相手でも、ちょっとした愚痴や本音を言いやすい場所です。

そこから「こんなことやれたら面白いね」と新しいビジネスアイデアが生まれることもあるのです。

また、筆者が省庁の記者クラブに所属していたときは、喫煙所で偶然居合わせた当局の人と会話するようになり、そこから思わぬ裏話の入手に繋がることもありました。
これを「喫煙所外交」と呼ぶ先輩もいました。

サイボウズの「分報」はまさにこうした目的で作られたスペースです。
コミュニケーション力の基本でもある「雑談」を活発にする手法は、個人のコミュニケーション能力アップだけでなく、組織内のコミュニケーション活性化に繋がります。

また、ちょっとしたチャット場所を積極的に利用することで「気軽に質問できる相手」を見つけやすくなります。先述したコミュニケーションの2つの課題を解消する手段になり得ます。


感情表現のハードルを下げていくことも

また、「顔色をうかがう」という言葉どおり、面と向かってはなかなかものを言いにくいという人は少なくありません。ここは「顔が見えない」ことを利用するという手もあります。
出来事についての感想を上司の側から積極的に聞くことで、部下の本音や思わぬアイデアを引き出せる可能性もあります。

特に若者世代はSNSでの発信が盛んです。対面よりもチャットのほうが感情表現のハードルが下がることでしょうし、これを期に感情表現をお互いにしやすい関係や環境作りをおすすめします。

また、ツール選びも「部屋選び」と同様に大切です。
サイボウズの調査によると、年代ごとのコミュニケーション方法はこのようになっています(図5)。


図5 年代ごとのコミュニケーション手段
(出所:「在宅勤務者3,000人に聞く『テレワークのコミュニケーション』調査」サイボウズ)
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000157.000027677.html 

利用年代の意味でも機能面でも、チャットツールの利用が良いと筆者は考えます。コミュニケーションを「線」ではなく「網の目状」に繋ぐことができるからです。

上司側が慣れないツールだから敬遠されがち、という理由で導入が進まずにテレワークを不便にしている環境にはあまり感心できません。

新しいツールに苦戦する上司の姿もまた、雑談のきっかけ作りになる。
そんな関係作りができれば、オフィスに戻ったとき、より円滑なコミュニケーションができることでしょう。

全てのコミュニケーションが業務の話になってしまいがちな環境に、小さな「カフェスペース」を設けることは大きな効能を持ちそうです。


*1
「『職場でのコミュニケーション』意識調査ー『エン派遣』ユーザーアンケートー」エン・ジャパン
https://corp.en-japan.com/newsrelease/2020/24687.html 

*2
「テレワークの教科書」サイボウズチームワーク総研 p130、p157
清水 沙矢香

この記事を書いた人

清水 沙矢香

2002年京都大学理学部卒業後、TBS報道局で社会部記者、経済部記者、CSニュース番組のプロデューサーなどを務める。ライターに転向後は、取材経験や各種統計の分析を元に幅広い視座からのオピニオンを関連企業に寄稿。<br> 趣味はサックス演奏。自らのユニットを率いてライブ活動を行う。<br> <a href="https://twitter.com/M6Sayaka "target="_blank">https://twitter.com/M6Sayaka </a>