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就職面接の自己紹介 緊張しないコツは「相手を観察すること」

コラム公開日
ミャンマー西部の、アンダマン海沿いにある場末ビーチでのことだ。
まだコロナも民主化デモも起こっていなかった2018年、そこで海外沈没していた自分は、社会復帰をするためにオンライン入社試験を受けた。

先方は中国本土の企業であり、時差の関係で筆記テストは夕暮れ時。
ビーチに沈む夕日を眺めつつもメールで送られてきたテキストに取り組み、適当に仕上げて送信した。
さすがはダイナミズムが売りの中国と言うべきか、すぐさまオンライン面接の運びとなり、「スーツなんて持ってません」と返事すると、そんなの構わないというお返事。
仕方なく安ホテルのボーイに服を借り、どう見てもチンピラみたいな格好で挑んだのだが、兎にも角にも受かってしまい今は中華の大地で働いている。

何故こんなことから書き始めたかというと、企業の採用では面接がほとんど意味を持たないケースもあるということを伝えたいがためだ。
自分は言語関係の専門職であるのだが、その場合少々人格が狂っていようが何だろうが、決め手は実務上必要なスキルがあるかどうか。
逆に言えば世の中のほとんどのホワイトワーカー、つまり一般職の場合、試験でそう簡単に優劣は測れない。
協調性やコミュニケーション能力はどれほどのものか、自分で物事を考えるアタマはあるか、伸びしろは期待できるか等々、履歴書や筆記試験では見えてこない点を、面接でなんとか探ろうとしてくるわけだ。

そのため、雇用側は品定めとばかりにさまざまな角度から物を尋ね、時には変化球どころか大暴投を交えつつ反応を見て、貴方の実像を探ってくる。
それ対し、こちらは服装から言葉遣い、仕事に対する考え方など、さまざまな面でいかに相手にいい印象を与え、己の不利な情報を出さないようにするかで苦心する。
言わば、面接とは一種の情報戦なのである。

求職者としては、このゲームを少しでも有利に運ぼうと、つい自分のことで頭が一杯になりがちなもの。
だが、そこであえて言いたい。
面接では一方的に評価される立場に甘んじることなく、むしろ問答の中で企業の狙いや性質、クセなどをしっかり観察すべきなのである。

相手にどう見られているかという点について、一般的に求職者よりも雇用サイドの方がどうしても無自覚になりがちだ。
自分が働く(かもしれない)会社とは一体どんな組織であるのか、そのヒントを面接中に拾うことは、それほど難しくない。
苦労して面接に受かっても、その先に待っているのが地雷職場だったら全くの無意味。
アンテナを研ぎ澄まし、周波数を上げまくって相手を探り返すべし!
そんな思いを込めつつ、以下自分とその仲間たちの経験を中心に語っていきたい。


相手を観察し自分に合った組織かどうか見定める

筆者の10年来の親友が転職した際、面接でこんなエピソードがあった。
彼いわく、とある中堅メーカーの募集に応募し、最終面接で聞かれたのは「仕事で一番大事なのは何だと思いますか」というありがちな問い。

友人は自分の経験に照らし合わせ、「スピードですね」と言い、その論拠を語った。
そして帰り際、電車に乗ろうとするタイミングで、さっき会ったばかりの面接官から直電を受けたという。

「あなたは仕事で一番大事なのはスピードと言われたので、その思いに私たちもスピードで応えるべきだと判断しました」

はい合格、いつから来れますかというわけだが、この話から読み取るべきは粋な計らいであるとかマッチングがきれいに決まった成功例といったものではない。
むしろ、その会社に社内調整を経ず意見を通せる絶対権力者が君臨している証と読むのが正しい。

もちろん全員採用が前提という可能性もなくはないが、そうであるなら最終面接まで絞らない。
いずれにせよオファーを受けて行く先は超ワンマン企業であり、同時にそのキーパーソンのお眼鏡にかなったということを勘案して、さてどう決断を下すべきかという場面である。

ちなみにその友人の話では、入ってみたらパワハラどころか拳で語り合う社風で、鋼の規律はまさにどこかの将軍の国そのもの。
とは言えそんな彼も海外支社トップまで上り詰めたのだから、これはこれで幸せなマッチングだったと言えるのかもしれない。

この会社に限らず、採用面接で露骨に組織の内情を目の当たりにすることはまれとは言え、相手が出す「しぐさ」や「匂い」といったものであれば、いくらでも拾える。
そこに注目し、相手の性質を読み解くことが肝要である。

例えば、異論は多々あるだろうが筆者の私見を語るならば、面談でやたらと人数が多く、しかも明らかに「遊んでいる人」がいた場合、仕事で無駄の多い会社と見る。
業務の合理化なんぞをテーマに幾度となく会議を開き、何も発言しない人まで参加させて意味もなく仕事を止めるーーそんな職場光景が浮かんでしまうわけだ。

また、質問がやたらとビジョンや入社後にやりたいことといった未来の話に偏り、過去を掘り下げてこない場合なら、地に足のついていない会社だなと考える。
将来のことなど口が上手ければいくらでも言えるし、空手形だって切り放題。
それに対し、己が生きてきた過去は変えられない。
こういう会社ではコツコツ努力をする実務型より、おそらくノリとライブ感で生きているタイプ(それも能力の一つであり悪いということでは決してない)が評価されるのではと想像する。

はたまた圧迫面接を挑んでくるなら、なるほどこの企業は求職者の「地」を見るために、コワモテな手段もいとわないのだなと見る。
単に面接官の性根がひん曲がっているだけという場合もあるが、圧をかけてくる理由というのは普通、胆力やフレキシビリティ、はたまた不快な思いをした時の態度などを観察するためだ。
だが、その目的のためにパワハラまがいの言動を辞さないのであれば、業務上のさまざまな場面でも使ってくると考えるべきで、普通の方なら避けて当然。

ちなみに筆者の前職はまさにパワハラ会社でそれなりに不条理な思いをしたわけなのだが、とある新卒で入ってきた女子を見て、こういう場所でこそ輝くタイプもいるのだなと気付かされたことがある。
その娘さんは説教中やお葬式のように厳粛さが求められる場でつい笑ってしまうという、なかなかの大物。
鬼軍曹があだ名の部長殿にエンドレスで叱られながらもお公家さんのように笑みを浮かべ、最後は軍曹が根負けして終わるのが常だった。
きっと心の中で「阿呆がまたほざいとるわい」と思っているのだろうナァ……としみじみ感じたものだが、こういう特殊なタイプ、もしくは精神力と根性で修羅場を切り抜けられる方にとっては、周囲が脱落する中で生き残れる分、オラついた社風の企業も選択肢の一つと言えるかもしれない。


面接者にだって相手を値踏みする権利はある

「好きな惑星は何ですか」
今はライターをやめて会社勤めをしている後輩から、ガチでこんな質問をしてきた面接官の話を聞いたことがある。

「木星……ですッ……!」
そう答えた後輩は続けてトークをぶちかましたが、話はそれ以上広がらなかったという。

相手の心にとまる言葉を吐けなかった後輩が悪いのか、それとも面接側が奇襲を仕掛けたものの、回答されて今度はカウンターを受ける立場になり、自分は当意即妙できないことを晒してしまっただけなのか。
いずれにせよこういうやり取りが行われるのは、そもそも短い面談で相手を知ることには限界があるが、それでも採用側としてはその無茶を強行しなければならないからだ。

意味不明な質問は好意的に解釈すれば、想定外の問いにいかなる答えを出すか、またはお定まりの質問では出てこない個性を見たいという思い。
それは確かに、履歴書や筆記試験では分からない。
だが、「あなたを色に例えると何色ですか」と聞かれてうまいことを言える人間が、仕事で想定外の事態に陥った時に力を発揮できるとは限らないのもまた道理。
極論すれば大喜利をやりたいのなら落語研究会出身の新卒か中途を雇えばいい、それだけのことだ。

ゆえにこういう質問をしてくること自体ナンセンスとも言えなくはないが、自分としては相手を観察する機会として生かすことをオススメしたい。
予想しなかった問いには、相手が予想しない回答で返す。
内容などそれっぽければ何でもいいんである。

そこで面接官が深堀りし、あなたのパーソナリティに迫る追っかけ質問を投げかけてこないのなら、頭の中で相手に無能の烙印をそっと押してあげればよい。
こちらが出した情報を咀嚼できずエラーを起こしている時点で、まともに人材を評価する資格なしーーその程度の者が人事をしているのだなと考えれば、例え面接に落ちても何らダメージになることはないだろう。

さて、ここまでの話で何が言いたいかというと、面接ではあくまで心の中でのこととはいえ、相手を値踏みするくらいの心のゆとりを持って参じるべきということだ。
こちらが一方的にふるいにかけられる立場なのは事実だが、そのことに過度の緊張を抱いてしまい、本来のパフォーマンスを発揮できないようではあまりに惜しい。

だったらむしろ「こちらにも相手を値踏みする権利、当然あるよね」と心に秘め、意識上は対等の関係として面接に赴く。
そのくらい開き直り、堂々と己をアピールすることで、運命が切り開かれることもあると考えるのだ。

面接から会社のクセを読み解くと言っても、そこにはやはり限界もある。
企業側が面談でこちらの全てを探ることが不可能なのと同様、求職者とてその会社が自分に合っているかどうかは、結局のところ入社してみないと分からない。

相手がスキを見せ、どういう会社か分かれば儲けものーー次の面接ではそのくらいの気持ちで、目の前に居並ぶ面接官たちを冷静に観察してみよう。
周囲に目配りできる余裕が生まれれば、きっと今よりも自然体で面接に挑めるようになるはずだ。
御堂筋あかり

この記事を書いた人

御堂筋あかり

スポーツ新聞記者、出版社勤務を経て現在は中国にて編集・ライターおよび翻訳業を営む。趣味は中国の戦跡巡り。