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オミクロン株で病欠取得が減少? 米国の事例から働き方を考え直そう

コラム公開日
オミクロン株の流行で、アメリカのビジネスパーソンの働き方に思わぬ影響を及ぼしているようです。悪影響と言えます。
リモートワークの普及がひとつの原因ですが、感染したときの症状が人によって違ったり、これまでになかった事態に対して企業の対応が追いつかなかったりしていることも背景にあります。

どのような変化が起きているのでしょうか。
この変化をきっかけに、働き方について改めて考えてみたいと思います。


アメリカ人が休みを取らなくなった理由

1月17日付のウォール・ストリート・ジャーナルは、コロナ下で働くアメリカのビジネスパーソンの変化についてこのように紹介しています。

新型コロナウイルス流行で浸透した遠隔授業は「スノーデー(大雪による休校)」を事実上消滅させたと言われる。在宅で働く米国民にとっては、新たな変異株「オミクロン株」の出現が病欠の終わりをもたらしつつある。

<引用:「オミクロンで病欠消滅? 在宅勤務で休まぬ人たち」ウォール・ストリート・ジャーナル>*1
https://jp.wsj.com/articles/for-remote-workers-the-sick-day-is-over-11642373538 

オミクロン株の流行下では、在宅勤務者がコロナに感染しても休まずに仕事を続けるケースが増えているというのです。
体調が許せば働いて欲しいと会社から言われる人もいれば、任された仕事が遅れる、同僚に負担をかけるとの思いから休みを避けるケースがあるようだということです。

また、他の理由として在宅ワークならではの特徴があります。
オミクロン株への感染は比較的症状が軽い上、症状がどの程度深刻であれば病欠に値するかという基準が変化していることが背景にある。感染した社員はせきやくしゃみをしたり鼻をかんだりしている間、ズーム会議の音声をミュートにしつつ、なんとかやり過ごしている。

<引用:「オミクロンで病欠消滅? 在宅勤務で休まぬ人たち」ウォール・ストリート・ジャーナル>*1
https://jp.wsj.com/articles/for-remote-workers-the-sick-day-is-over-11642373538 

在宅ワークへの「慣れ」がもたらした思わぬ現象とも言えるかもしれません。
アメリカのコンサルティング会社が405社を対象に実施した2021年の調査では、約半数の企業が通常の有給とは別に平均8日の病気欠勤を認めていますが、社員が使った病欠は平均4日だったと記事は伝えています。

陽性反応が出ても症状が軽ければ在宅ワークで働く、陽性だから病欠を取っておとなしく休養する…
皆さんはどうしますか?


さらに休まない日本人はどうする?

この記事について、筆者ならどうするかなあと考えてみました。
筆者は自営業ですし、仕事場は日常的にほぼ自宅です。対面での仕事は月に数えるほどしかありません。さすがに対面での取材はリモートに切り替えてもらうでしょう。
自営では定時や有給、病欠といった概念はありませんし、出来高制のため休んだ分はまるごと収入減として跳ね返ってくることが最大の理由です。

よって、コロナに感染したとしても症状が軽ければ上述のアメリカ人のように、仕事を続けることでしょう。

その立場から言えば、会社員の皆さんの場合は、軽い症状でも仕事に集中できないようであれば、病欠や有給は取得した方が良いと考えます。

というのは、下の図を見てください(図1)。


図1 平均有給取得率の推移
(出所:「令和3年就労条件総合調査の概況」厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/jikan/syurou/21/dl/gaikyou.pdf p6

先ほどの記事では、アメリカ人は仕事を休まないことで知られており、コロナ前は有給の約4分の1が未消化だったと言います。

日本人の場合はそれを超えています。コロナ禍に入って有給の取得率は急上昇していますが、それでもまだ56%程度であることが上図からわかります。

「体調が悪い、コロナかもしれないので大事を取りたい」といった理由で休暇が取れることを価値に思い、そういうときにこそ休むくらいで良いのではないかと筆者は感じてしまうのです。
「陰性だけど具合が悪いから休もう」でも良いはずです。
ここに罪悪感を感じさせる文化のほうが、不健全ではないでしょうか。


他にもある「仕事?」「仕事に含まれない?」疑問

「どこまでが仕事でどこからが休み時間なのか」。
世の中が便利になるほど、その垣根が曖昧になっています。

携帯電話の出現はその最たるものでしょう。
どちらかが休日であっても、上司は部下を、部下は上司を捕まえることができるのです。
また、電車の中でメールチェックもできてしまえば、スマートフォンでビジネス書類のチェックまでできるようになってしまいました。

さて、これらの時間は「休み」にあたるでしょうか?
ずっとメールチェックをしながら過ごす通勤時間は「仕事ではない」のでしょうか?

じつは、このような取り組みがあります。
NHKがある建設会社について取材しています。

通勤時間も勤務時間という会社

本州でいちばん面積が広い岩手県にあるこの建設会社は、マイカーで長時間かけて出勤する社員が多い地域にあります。

その事情を逆手に取ったのがこの建設会社でした。
「若手社員がどういうことを望んでいるか。岩手がどうして東京に勝てないかを考えたときに、車の移動がいちばんいけないと思ったんですね。マイカーで通勤している時間は生産性ゼロで、車がいくら走ったって仕事の成果は上がらないわけですね。車を運転している時間を有効活用できないかということで、こういう発想になってきたんです。車が減れば渋滞や事故も減るし二酸化炭素の削減にもつながる。いいことづくめじゃないですか。」

<引用:「通勤時間も勤務中! “若手が6割” 驚きの建設会社」NHK>*2

通勤時間も勤務中! “若手が6割” 驚きの建設会社 | NHK | ビジネス特集

【NHK】「通勤時間が勤務時間に」人手不足が深刻な地方で、大胆な働き方改革を進め若手社員をひきつけている建設会社があります。

www3.nhk.or.jp

通勤時間も勤務中! “若手が6割” 驚きの建設会社 | NHK | ビジネス特集
 

そこで、乗り合いの社用車や公共交通機関での出勤を推奨し、一方で移動中にスマートフォンやタブレットで業務を行った場合、それを勤務時間とみなすという制度です。

この会社の定時は8時から17時20分ですから、朝8時に社用車や公共交通機関で業務を開始し、帰りも同様に移動した場合、会社にいる時間はだいぶ短くなります。

筆者も、今でこそ寝床から職場まで徒歩5秒という生活になってしまっていますが、地震や大型台風のたびに駅に長蛇の列ができているをテレビで見るたびに「これには別手当を支払うべきではないのかなあ」と感じています。この行列、その後には満員電車という状況ではいくらスマホがあるとはいえ生産性を感じられないからです。


あやふやな「休み」でリフレッシュはできますか?

アメリカで起きている現象、そして岩手の建設会社の事例を通じて私たちが考えるべきは、情報通信技術が私たちの「オン・オフ」の境界線を曖昧にしてしまったということです。

休日に「電話の1本くらいなら・・・」から始まり、「ちょっとパソコンを触るくらいなら・・・」となり、仕事が休日をどんどん侵食していく現象は、あまり好ましいとは言えません。

筆者は決まった休日のない自営ですが、それでも休むと決めたときは事前に伝え、その日はパソコンの電源を切って過ごす、メールには返信しない、というスタンスを取っています。
そこではじめて純粋に「休む」ことができますし、少ない日数とはいえその休み方には満足しています。むしろ、そのような休み方をするので少ない休日でも心底リフレッシュできています。

周りの顔色をうかがって自分の休暇を決める…
そのようにして獲得した、なんとなく罪悪感のある休暇にどれほどのリフレッシュ効果があるのか筆者には疑問が残ります。

「休むときも一生懸命休む」。
そのほうがはるかに生産性を高めるのではないかと筆者は思っています。


*1
「オミクロンで病欠消滅? 在宅勤務で休まぬ人たち」ウォール・ストリート・ジャーナル
https://jp.wsj.com/articles/for-remote-workers-the-sick-day-is-over-11642373538 

*2
「通勤時間も勤務中! “若手が6割” 驚きの建設会社」NHK

通勤時間も勤務中! “若手が6割” 驚きの建設会社 | NHK | ビジネス特集

【NHK】「通勤時間が勤務時間に」人手不足が深刻な地方で、大胆な働き方改革を進め若手社員をひきつけている建設会社があります。

www3.nhk.or.jp

通勤時間も勤務中! “若手が6割” 驚きの建設会社 | NHK | ビジネス特集
 
清水 沙矢香

この記事を書いた人

清水 沙矢香

2002年京都大学理学部卒業後、TBS報道局で社会部記者、経済部記者、CSニュース番組のプロデューサーなどを務める。ライターに転向後は、取材経験や各種統計の分析を元に幅広い視座からのオピニオンを関連企業に寄稿。<br> 趣味はサックス演奏。自らのユニットを率いてライブ活動を行う。<br> <a href="https://twitter.com/M6Sayaka "target="_blank">https://twitter.com/M6Sayaka </a>