多様化する事業。多様化する組織ニーズ。多様化するキャリア。そのすべてをつなぐ、小田急不動産の人材見極め術。

小田急不動産株式会社
小田急不動産株式会社

ASHIATO導入背景

入社後に多様なキャリアを社員に歩ませることで、弾力性のある組織づくりを進めている小田急不動産。

その中で一時期早期離職が相次ぐことに。自社に合う人材の見極め精度を改善するために、『ASHIATO』の導入に至った。

この記事のポイント

幅広いキャリアパスを歩むことに好意的な人材。それが小田急不動産の求める人物像。

実現には選考上のコミュニケーション量の増加が不可欠。しかし中途採用では難易度が高かった。

『ASHIATO』導入で、組織ごとに微妙に異なる人材ニーズに応えることに成功。早期離職も軽減した。

「小田急線」だけじゃない。総合不動産会社として、多様性のある事業ポートフォリオを。

ASHIATO

「小田急不動産」といえばその名の通り小田急線沿線を事業エリアとしているイメージです。沿線の街の注目度も高まっていますが、今後はどのような事業展開を構想しているのでしょうか。

溜池:もちろん小田急グループの一員として、今後も沿線の開発や価値向上に向けた取り組みを行なっていく方針ではあります。一方で、今後は従来の枠組みにとらわれない形で事業を広げていくことを指向しています。その一つが、物流拠点の開発です。千葉県や愛知県、福岡県といったエリアにおいて、すでにロジスティクスセンターの開発事例が豊富にあります。市場が求めるニーズに応じて自社の強みやノウハウを活用し、新たな領域やエリアに進出している最中なんです。

ASHIATO

もはや「小田急線」のイメージではくくれないほど事業が多様化しているのですね。その狙いはどこにあったのでしょうか。

溜池:もともと小田急電鉄をはじめとしたグループ会社から移管された用地を活用して開発することが多かったわけですが、時代の変遷とともにその余地が少なくなってきたことも背景にあります。既存の資産を活用することで安定した経営は可能ではあるものの、それだけでは発展性に限りも出てきてしまいます。総合不動産会社として事業基盤をさらに強めていくためにも、新しい領域へ踏み出す必要がありました。ですので、現在では戸建てやマンション、オフィスといった従来の不動産の活用方法に加え、レンタルスペースやコインランドリーなどの事業も続々とスタートしている状態にあります。

新卒でも中途でも。人材に求めるのは、「多様性のあるキャリアパス」を愛せるか。

ASHIATO

事業が多様化を迎えるなかで、採用を担う立場としてはどのような点を重視しているのでしょうか。

加藤:ジョブ型雇用といった言葉が取り沙汰される中で、当社としてはむしろ正反対の方向性を持っています。何か一つの職能を突き詰めるというよりは、幅広い業務や領域を経験することでキャリアを築いていってほしいと考えているんです。一つの部署の中に多様な知見を持つ人材がいることで組織としての弾力性が生まれ、それが事業としての強みにもなっていきます。実際、新卒採用では建築学科卒の学生であっても、営業部門に配属される…ということが少なくありません。ですので、そのような幅のあるキャリアにプリファレンスを持つ人材を集める・獲得する…ということが、私たち採用担当に求められていることだと認識しています。

ASHIATO

変化に富んだキャリアを肯定的に受け止められる人材を集める…難易度が高い印象を受けます。

加藤:ある意味このスタンスが、自社に合う人材をスクリーニングする機能を持っているのではないかと考えています。新卒採用の場合では3日間ほど体験入社してもらい、実際にどんな仕事をするのか、どのような社員たちと一緒に仕事をするのかを知ってもらう機会を設けています。その結果、建築学科などの専門領域を学んだ学生でも、「営業部門で働きたい!」という希望を持ってくれるケースは多いんですよ。逆に、「私は企画をずっとやっていきたい!」といった志向性の方だと、当社とはマッチしないな…という判断になります。このスタンスは新卒採用のみならず、キャリア採用においても同様です。中途入社であっても、数年後には異なる職種・役割を担っている…ということは可能性として大いにありえます。
 
ですから、当社は「有能だから」という理由だけで採用するわけではなく、自社に合うか否かを重視しています。「この人だったら当社の雰囲気に合うのではないか」「この人がいてくれたら、周りが喜んでくれそうだな」といった、人柄やポテンシャルの部分を選考過程で見極めていくことになります。ただ、新卒採用に関しては選考期間も長いですし体験入社もあるので、人柄やポテンシャルを見極める充分な余裕があるものの、キャリア採用においては同じようなフローを選考過程に含めることは現実的ではありません。ここをどのように解決するか…という点は、引き続き課題になると感じています。

不足しがちな選考上のコミュニケーション。自社に合う人材の獲得に、その解決が不可欠だった。

ASHIATO

『ASHIATO』に関しては中途採用領域で活用いただいていると思いますが、新卒採用と比べた際に少なくなってしまう候補者とのコミュニケーション量を担保する狙いがあったのでしょうか。

加藤:そうですね。『ASHIATO』の導入を決めたのは、私が人事に異動して1年ほど経った時期でした。当時、入社1年以内の離職が相次いでいました。面接や適性検査などの見直しも進めてはいたものの、私自身が経験や知見で乗り切れるほどの人事経験がありませんでした。「本当にこのやり方で改善されるのか…」と不安を感じ、第三者的な視点で相談に乗ってもらいたいと思っていたところに、声をかけてくださったのが『ASHIATO』だったんです。
 
会社全体として求める人物像がある一方、募集を行なう部門によってもカラーや大切にしている考え方に違いはあります。たとえば、仲介部門における営業職募集です。不動産業界の営業といえば、「稼ぎたい」ということを動機にする人は多いと思います。ただ、弊社の仲介部門に関しては「稼ぎたい」といった動機のバックグラウンドに、どのような想いがあるかを重視した採用を行なっています。面接だとどうしても「良いこと」を言ってしまいがちですので、候補者の持つ想いと実際の働きぶりがきちんとリンクしているかを知ることのできる『ASHIATO』が、弊社の抱えていた課題の解決の一助になると考えたのです。

面接時から入社後まで。『ASHIATO』のあますところのない活用が、早期離職の軽減に。

ASHIATO

『ASHIATO』を導入したことで、考え方の部分でのミスマッチは軽減されたのでしょうか。

溜池:『ASHIATO』を活用するタイミングとしては、最終面接の実施前としています。その際、面接で感じた印象の答え合わせをできる点が非常に心強いところです。たとえば「丁寧で細かい仕事には向いていそうだけど、臨機応変な対応は苦手そう」と感じた部分が、同僚や上司の方も同じようにコメントしていた場合、個人の印象ではなく確信を持つことができるんですよね。導入前は面接官に情報を引き継ぐ際にの難しさを感じることもありましたが、今は確度高く情報を共有できていると感じます。また、欠点みたいなものが見えていてもだから不採用ということではなく、コメントの内容から入社後にフォローできる範囲だから大丈夫、と判断できるようになったのは大きいですね。
 
加藤:一緒に仕事をしている方からの客観的なコメントがもらえるため、価値観の部分でのミスマッチはずいぶん減りました。以前であれば「思ったより稼げなかったから辞める」といった早期離職もあったのですが、価値観と実際の働きぶりのすり合わせができるようになってからそのようなケースもほとんどありません。
 
もちろん採用時の話だけではありません。『ASHIATO』のレポート結果から、前職の上司や同僚の方々のコメントによって「このような環境だと力を発揮する」「このようなコミュニケーションは避けたほうがいい」といった情報も得られるため、入社後のオンボーディングにも活かすことができています。そのような相乗効果によって、早期離職の軽減につながっているのだろうと考えています。

ASHIATO

面接時だけでなく、オンボーディングにおいても活用いただけているようで嬉しく思います。ほかにも「こんな活用方法がある」といったTIPSはありますか?

溜池:個人的にはレポート結果が見やすい点も気に入っています。最終面接の際に部長陣などの最終決定者に対して候補者の説明を行なう際に、ひと目見て要点を説明しやすいレイアウトやデザインになっているんですよね。このようなレポートって複雑になりやすいイメージなのですが、シンプルでわかりやすいんです。
 
また、上司や同僚の方がどのくらいの熱量でコメントを記載してくれたか、という点も重要な情報になります。たとえばコメントの分量が少ないと、コミュニケーションが少なかった会社なのかな…といったことを想像するんですよね。で、転職理由を確認してみるとチームワークや社内の人間関係という点になっていたりする。すると、「前の会社の風土が合わなかったのかな…」と感じられるんですよね。そのような点を面接で確認したり深掘ったりすることで、仕事にどのようなことを求めているのかを把握できるのかが把握できると感じます。


<取材/編集>小野山伸和/橋本真吾
<取材/文章>遠藤孝幸
小田急不動産株式会社

小田急不動産株式会社

会社概要

「分譲業」「賃貸業」「仲介業」「投資開発業」「買取再販業」を主体とした総合不動産会社。60年以上にわたり、小田急線沿線の発展とともに歴史を積み重ねてきた。近年では沿線外への事業エリア拡大、事業ポートフォリオの多様化など、企業としての基盤強化を果たしている。

https://www.odakyu-fudosan.co.jp/

従業員数

399名(2024年3月末時点)

インタビュー
加藤 浩二(かとう こうじ)
KATO KOJI加藤 浩二(かとう こうじ)

新卒で小田急不動産株式会社に入社後、新築戸建ての販売を7年ほど経験する。その後、広告やマーケティングを中心としたバックオフィス業務を経て、再び販売部門へ。2021年より経営企画本部人事総務部人事グループへと異動となり、現在では採用領域の責任者を務める。

溜池 紗奈(ためいけ さな)
SANA TAMEIKE溜池 紗奈(ためいけ さな)

新卒で同社に入社し、新築マンションや新築戸建ての販売部門へ配属。営業としてキャリアをスタートさせる。2023年からは現職である経営企画本部人事総務部人事グループに着任。新卒領域を中心としながらも中途領域もカバーするなど、人事として幅広く活躍している。