将来的には人口減に伴って税収も減少することが見込まれる中、つくば市は税とは異なる資金調達手法として「寄附」への注力を開始。特に近年規制が緩和された「企業版ふるさと納税」など、企業をターゲットに寄附を推進する専任ポジションを公募していた。しかし複数職種の選考活動を同時並行する中、面接1件にかけられる時間は30分。人物面を深掘りする時間的余裕がなかったため、面接時間を増やさずとも人物面の深い部分まで知れる『ASHIATO』の導入を決定した。
1件30分。限られた面接時間の中で 高次元のフィッティングを実現した、つくば市の秘策とは?
ASHIATO導入背景
- この記事のポイント
同ポジションの公募を複数回にわたって行 なうも、採用に至らず。
面接1件あたり30分という、時間の制約による深掘り不足が選考上の課題だった。
『ASHIATO』によって面接時間はそのままに、人物面の深い情報を得ることに成功。
『持続可能なまち』の実現に必要な、新たな資金調達方法。
税金に頼らない資金調達方法を模索するという、ファンドレイジング推進監。 どのような背景から公募に至ったのでしょうか。
袴田:今回ファンドレイジング推進監を採用するに至った背景は、簡単に言えば近い将来の人口減および税収減の時代に備え、新たな資金調達方法を確立するためです。この点については、エン・ジャパンさんがリリースしてくださった、特設ページに詳しく解説されています。
※研究学園都市・つくばに持続可能な資金調達を。「ファンドレイジング推進監」公募
※つくば市が「ファンドレイジング推進監」1名の採用に成功!
もう少し、つくば市特有の課題について補足します。現在、国としては「各自治体が各自で財源を確保せよ」という流れをつくりつつあります。つくば市も 、つくばエクスプレスの沿線開発に当たっては税収が増えるよう計画的なまちづくりを行なうなど、対策をしてきました。
しかし、それだけでは不充分だった、と。
この現状の解決に、職員がほかの業務を担当しながら片手間で取り組んでも成功するビジョンは描けません。そこで、民間の力を取れ入れようと、数年前に個人向けふるさと納税のファンドレイジング推進監の公募を行ない、採用に至っています。そして今回、企業版ふるさと納税の規制が緩和されたことで自治体側の運用がしやすくなり、企業向けの資金調達手段の確立を推進する専任ポジションを新たに採用することになりました。
限られた時間でのフィッティングが、最大の課題だった。
なるほど、そこでエン・ジャパンで支援させていただいた、『ソーシャルインパクト採用』となるわけですね。
高橋:実はエン・ジャパンさんにご協力いただく以前にも公募を行なってはいたんです。しかし、優秀な人材とは巡り合うことができなかったり、あるときは全然応募が来なかったり…試行錯誤を繰り返していました。
一番の課題は、人物の見極めに十分な時間をかけられないことでした。多いときだと1日に20件もの面接をこなすこともあって、かけられる時間は1件30分ほど。その中では十分にその人物を見極めることは困難です。しかもその1回で合否を判断しなくてはいけません。
特に今回はファンドレイジング推進監というつくば市内でも比較的新しいポジションであり、かつ企業向けの資金調達方法を確立するという難易度の高いミッション。能力の高さが必要なことは言うに及ばず、さらにはつくば市の実現したいビジョンへの共感も不可欠です。どうすればよいか…と悩んでいたときにご提案いただいたのが、『ASHIATO』でした。
リファレンスチェックを導入している官公庁は多くないと思いますが、導入に際して懸念や不安はありませんでしたか?
確かにそうですよね。むしろ『ASHIATO』は、「悪いところを探す」といったリファレンスチェックとは一線を画すため、求職者にとってネガティブな印象にはならないはず。担当者さんの言葉に納得し、導入を決めました。
無から有へ。『ASHIATO』で、面接の質が変わった。
1日に20件の面接をこなすこともあるというほどお忙しいようでしたが、『ASHIATO』の導入によって工数などが減った感覚はありましたか?
高橋:むしろ今までにない選考過程でしたので、導入によって工数は逆に増えていますよ(笑)。そもそもリファレンスチェック自体をしたことがなかったので、どのような質問を設定すれば知りたい情報が得られるのか、そういった点を考えるのは手間だとは思っていました。
ただ、『ASHIATO』の担当者さんに丁寧にサポートしてもらえたので、負担感はほとんどなかったですね。書類選考通過率や辞退率なども分析し、どんな質問なら欲しい情報が得られるのか、選考過程のどのタイミングで実施するのがベストか…といった運用の設計まで手伝ってもらえました。
一方、これまで全くと言っていいほど知ることができなかった、「前職でどのような仕事ぶりだったのか」という情報が単純にプラスされたので、「質」の面では格 段に改善されました。第三者からの客観的な意見が得られることで、求職者の持つ強みやどんな部分で貢献してもらえそうなのかを把握できるようになったのは大きい変化です。
実際、『ASHIATO』で回答を依頼した側としては、どのような印象でしたか?手間に思う部分などはありましたか?
高橋:でも、粟井さんの上司の方からのレポートはすごく印象的でしたよ。数多く回答結果を見ていると、読みやすいものとそうでないもの、分量の多いものと少ないものなど、色々あるんですよ。粟井さんへの回答は、文量も多かったですし、何よりユーモアがあって読みやすかったです。最後に「お菓子を食べ過ぎないか心配です」って書いている方もいましたよ(笑)。
粟井:それすごく恥ずかしいやつじゃないですか(笑)
高橋:そういった「読ませる文章を書ける人」というレベルの高い方々に囲まれて仕事をしていたというのが伝わりましたし、何より粟井さんの愛されキャラが伝わってきましたよね(笑)。
採用にあたり、チーム内で意見が割れた。その判断軸でも、『ASHIATO』が活きた。
粟井さんの入職後、レポート結果とのギャップなどは感じましたか?
袴田:いい意味でのギャップとしては、思っていた以上にコミュニケーションに長けているな、という点です。聞けば、工場で生産管理をしていた時期などは特に、いろんな立場や年齢の方と一緒に仕事をする経験が多かったそうです。ファンドレイジング推進監も庁内で様々な部署を横断して業務に臨む必要があるので、粟井さんのそのコミュニケーション能力がすでに発揮されていると思います。
そもそも、今回の公募では非常に優秀な方からの応募が多かったんです。さらに『ASHIATO』の結果を見ても、申し分ない方ばかりで。実は最後の最後まで、どなたを採用しようか…というのはチーム内でも意見が割れていたくらいなんです。
そのときに、面接での印象はもちろん、『ASHIATO』の回答結果から判断できるコミュニケーション力の高さも踏まえた上で、粟井さんに内定をお出しすることにし たんです。
庁内でも新たな取り組みですし、入職前も「庁内の調整は部門によって業務への考え方が違うので、すごく大変ですよ」と結構脅し気味で話したんです。けれど、今では粟井さんが動いて各部署とコミュニケーションを取ってくれていることで、関係各所からポジティブな反応を引き出せています。きっと、経験してきた場数も違うのでしょうね。粟井さんと一緒に仕事ができることを、本当に嬉しく、そして頼もしく思います。
粟井:今はまだ動き出したばかりなので、これからたくさんの壁にぶつかるのだとは思っています。現時点でも、できると思っていたことが制度上できなかった…ということも味わいました。袴田さんにも色々教えてもらいながら、つくば市にとって新しい資金調達の形をつくっていけるよう、引き続き尽力していきます。
<取材/文章>遠藤孝幸
つくば市
- 会社概要
茨城県南西部に位置し、約25万人が暮らすつくば市。官民の研究機関が集い、最先端の研究が行なわれる研究学園都市である。ネット投票実験・ドローン物流実験など、“日本初” とされる取り組みを次々と試行するなど、先進的な自治体として知られる。住みやすい街としても人気が高く、人口は増加傾向。2018年には内閣府から「SDGs未来都市」に選定され、「持続可能なまち」を目指す。
- 従業員数
2000名(2022年11月末時点)
- インタビュー
- HAKAMATA NOBUYOSHI袴田 修由(はかまた のぶよし)
2008年の入職以降、文化振興業務や障害者福祉業務、企画調整業務、市民相談業務などを歴任。2022年4月から、現任である持続可能都市戦略室長を務める。持続可能都市戦略室では、官民連携組織である『つくばSDGsパートナーズ』の事業展開をはじめ、SDGs に関する庁内の調整およびSDGsの普及・啓発のほか、『ふるさと納税』など税収に頼らない新たな資金調達の企画をも担う。
- TAKAHASHI HIROSHI高橋 啓(たかはし ひろし)
大学卒業後、つくば市内の研究所に就職。人事労務などのバックオフィス 業務を担当する。転勤の打診をきっかけに、地域に根ざした働き方のできるつくば市役所に入庁。中央省庁への出向や福祉、産業振興に関する業務を経験後、現任である人事課へ着任する。
- AWAI YUKI粟井 祐樹(あわい ゆうき)
2011年、新卒で重電系メーカーに就職。生産管理や工場運営、及び新規事業開発・推進などを担う。茨城への移住をきっかけに転職活動を開始。なかでも、裁量を持って、組織の持つ強みを生かし、価値を生み出すようなミッションを担いたいと考えていたところ、つくば市のファンドレイジング推進監の公募に出会う。現在は、企業版ふるさと納税や、ソーシャルインパクトボンドなど、新たな資金調達手法の確立に向け、邁進する日々。