理念と評価・表彰制度の連動が、自立した組織をつくる。不動産業界の変革者ライナフが語る、企業カルチャー論。

株式会社ライナフ
株式会社ライナフ

ASHIATO導入背景

エンジニア採用を積極化させる上で、スキル以上に「自社のカルチャーにフィットするか」「チームとして開発を進められるか」という素養を重視していた同社。面接では採用担当者や管理職だけでなく、現場社員も同席してもらうなどの工夫を行なっていた。しかし、面接ではなかなか知ることのできない「実際に一緒に働いたときの、周囲の印象」を知るべく、ASHIATOの導入を決めた。

この記事のポイント

企業としての理念や行動指針を取り入れた評価・表彰制度により、社員のエンゲージメントをアップ。

今後既存事業だけでなく新たなサービスを立ち上げる上で、カルチャーフィットの質が課題に。

採用時のほか、評価時の『ASHIATO』活用など、高い次元でのカルチャーフィットの実現を目指す。

「暮らす人」「使う人」を味方につけ、不動産業界に変革を起こす。

ASHIATO

スマートロック『NinjaLockM』など、革新的なプロダクトを提供されていますよね。

松原: 私たちの土台になっているのは、スマートロックの『NinjaLockM』です。IoTを駆使してセキュリティを向上させることはもちろんですが、鍵交換や追加工事が不要などコスト面でもプラスがあります。顧客である不動産管理会社や物件を所有するオーナーに対して、高い付加価値を提供できています。

さらに、多大な時間を取られる「物件確認」をAIで自動化させた『スマート物確』や、スマートロックなどと連携して予約から内覧までを効率化させる『スマート内覧』など、業務効率化につながるプロダクトを提供しています。

つまり、IoTの力で不動産業界の「付加価値の創出」「業務効率化の実現」をすることが、ライナフのビジネスにおける価値だと考えています。

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DXが遅れていると言われている不動産業界ですから、今後もニーズの拡大が望めそうですね。

松原:潜在ニーズは大きい一方、toC向けの強化が必要です。不動産は歴史のある業界だけに、新しいものを積極的に取り入れる土壌がありません。私たちのようなベンチャーが息巻いても、なかなか受け入れられないものです。そのため、入居者をはじめとした消費者から支持されることが重要なのです。

「このサービスが導入された物件に住みたい」といった消費者のインサイトが多くなれば、不動産業界の企業やオーナーも無視するわけにはいかなくなります。そして「他社がやっているなら、うちも導入する」と、業界のスタンダードを変えていくことができると考えています。

Amazonとの連携により実現した、『置き配 with Linough』はその一つです。置き配をより安全・安心に利用できるサービスであり、物件の入居者の生活の利便性を大きく高めます。近い将来、『置き配 with Linough』が利用できることが、物件のなくてはならない付加価値になるはずです。

私たちのサービスやプロダクトはtoBとtoCサービスの両輪です。この2つが相乗効果を発揮することで、業界に変革を促すことができるのです。


現場の「一緒に働きたい」を重視する面接。

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toCの領域にも進出する背景が非常に興味深いですね。一方でその分、組織として新たなケイパビリティも必要です。

佐々木:そうですね、事業計画上必要な人員数は毎年20名ずつ増えていく計算になります。一方、当社はまだ50名ほどの規模ですから、良くも悪くも人材の一人ひとりが社内で大きな影響力を持ちます。採用においても、カルチャーフィットが重要です。

そのため、当社では採用担当や採用部署のマネージャーだけでなく、メンバークラスも面接に同席します。候補者がチームに馴染めそうかをもっとも的確に判断できるのは、現場で実際に一緒に働くメンバーですからね。

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メンバークラスの面接同席は確かに珍しいですね。その際、メンバーの皆さんはどんな風に面接されるんですか?

松原:エンジニア採用の場合、当然ですが技術の話はしますね。知識だけでなく、どのように開発に関わってきたか…ということがわかるように。たとえば、今まで仕事の中で苦労したことやその克服の仕方などを、エピソードベースで聞くことが多いです。

ただ、その狙いはスキルセット以上に、コミュニケーションスキルの見極めです。コミュニケーションが成立しないと、実際に働き始めてから想定以上のマネジメントコストがかかってしまいます。そのため、メンバーとの世間話を通してコミュニケーションに問題がないか、そして何より「一緒に働きたいと思える人か」を見極めるようにしています。


評価・表彰制度とリンクさせることで、理念の浸透が進む。

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人間性を重視して判断することは採用の理想です。同時に、判断基準も難しいと思うのですが…。

佐々木:印象は大事ですが、当然それらを判断するための基準も設けています。それが『7つのEnough』という、行動指針です。たとえば…

・プロフェッショナル…常にオーナーシップを持ち、責任をもって行動する。
・リスペクト…相手にも自分にも敬意を払い、謙虚な気持ちを持つ。
・チームパフォーマンス…一人はみんなのために、みんなは一つの目的のために。

といった指針が7つの言葉で表現されています。面接ではこの行動指針の各項目を候補者がどの程度満たせているのかを見極めるようにしています。

入社後の評価制度にも、この指針は結び付けられています。たとえば、年1回社員から各行動指針に基づいたエピソードを集め、それに対して全社員で投票を実施。その結果で「プロフェッショナル賞」「リスペクト賞」の各賞や、社内で一番輝いていた人に贈られる「Enough大賞」などが選出されます。

昨年度は一人あたり20~30個ほど、全部で1000ほどのエピソードが集まりました。それらは全社員に公開されるため、受賞に至らなかったとしても「自分が周りからどのように見られているか」を知ることのできる機会になっています。

評価制度や表彰制度と行動指針を連動させることで、入社してからも社員が当社の理念や考え方にマッチした状態を維持できています。だからこそ、面接においても候補者が行動指針の基準を満たせているかを、現場がジャッジできるのだと思っています。

カルチャーフィットの質を高める。そこに、『ASHIATO』が必要だった。

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採用に関しては順風満帆のような印象を覚えます。 その中で『ASHIATO』を導入した理由は何だったのでしょう。

佐々木:もちろん課題はあります。たとえば、現在当社では自由度の高い働き方が可能ですが、それは性善説に基づき、社員を信頼しているから成立します。組織の規模を大きくしながら、社員一人ひとりへの信頼の純度を保ち続けるためには、採用時のカルチャーフィットの質を高める必要があります。

松原:面接において、 カルチャーフィットの質を高めるためにも、本来一番知りたいのは「周りの人が働きやすさを感じるか」という部分です。けれど面接の場合、どこまでいっても多少はよそ行きの雰囲気になってしまいます。“素”で働いている中で、候補者がどのような振る舞いをするのかは本来知ることができません。

そのため、候補者の前職の方々から「一緒にいて働きやすさを感じられたか」を知ることのできる『ASHIATO』は当社にピッタリだと思い、導入を佐々木にプッシュしました。

マイナスを見つけるためでなく、深堀りの“きっかけ”をつくる。

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実際、『ASHIATO』で得られた回答はカルチャーフィットに寄与しましたか?

松原:候補者がコメントを返してくれる相手を選択できるため、最初は客観的なコメントがもらえるか不安はありました。しかし、結果的に候補者と信頼関係のできている相手が回答してくれるので、良い面も悪い面もコメントがもらえるケースが多かったですね。特に面白いのが、後輩の方が客観的で率直なコメントをしてもらえるケースが多いですね。オブラートに包まないんです(笑)。

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それは興味深いですね。マイナスなコメントがあった場合、ライナフさんではどのように判断しているんですか?

松原選考上すぐにマイナス評価をするようなことはありません。「一次面接ではわからなかったから、二次面接でそこを深掘って聞いてみよう」という判断になります。

マイナスな点があったとしても、それを許容できるかは会社にもよると思います。たとえば、ある候補者についてのコメントに「タスクの量が多くなるとテンパる傾向がある」という旨が書いてありました。しかし、当社の場合、そもそも一人が多くのタスクを抱えないような業務設計になっているため、そのマイナスはそこまで重大なものにはなりませんからね。そのような広い意味でも、「当社にフィットするか」をジャッジできたと思います。

佐々木:また、当社の場合は一次面接後に『ASHIATO』を活用するのですが、面接の場で違和感を覚えた場合、それを深堀るための設問をカスタムして『ASHIATO』に設定することもあります。自分たちがなかなか解消し得ないその違和感を、前職の方々に聞くことができるのは便利ですね。

採用時だけでない、『ASHIATO』の発展性に期待。

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すでに『ASHIATO』を導入してから入社した方もいらっしゃるんですよね。

佐々木はい、『ASHIATO』導入後にすでに4名が入社しています。いい意味で、選考段階での印象とギャップがなく、すでにバリバリ活躍してくれています。

『ASHIATO』はただのネガティブチェックでなく、その対象者の「いいところ」や「こうすればもっと良くなる」という前向きなコメントが多いように感じます。だから採用の判断だけでなく、入社後のマネジメントや教育スタイルの検討などの参考にもなります。

今後は採用時だけでなく、社内の評価制度と連動させて『ASHIATO』を活用するのも面白そうだなと感じています。360°評価のような使い方で、対象者のより良いところや伸び代を見つけることができそうです。さらに幅広い使い方が期待できますね。

佐々木さん、松原さん、貴重なお話をいただき、誠にありがとうございました。

<取材/編集>福村知久
<取材/文章>遠藤孝幸
株式会社ライナフ

株式会社ライナフ

会社概要

住宅向けに特化した高品質スマートロック『Ninja LockM』をはじめ、AIによる物件確認の自動化サービス『スマート物確』など、不動産業界にデジタルイノベーションを促すプロダクトを展開。直近ではオートロックマンションにおける安全・安心な荷物の受け取りを可能にする『置き配with Linough』をスタートさせ、Amazonや大手宅配業者との連携を拡大し、導入を加速させている。BtoBだけでなく、BtoC領域でも新たな一歩を踏み出している。https://linough.com/

従業員数

51名(2021年4月末時点)

インタビュー
佐々木 剛
TAKESHI SASAKI佐々木 剛

会計事務所にて、100社以上におよぶ事業計画立案、決算業務、資金調達業務に従事。取引の中で起業したばかりの代表滝沢と意気投合し、ライナフ創業初期に参画して以降、経理、財務、人事、総務の責任者としてバックオフィスを統括する。このほか資金調達におけるエクイティファイナンスやデッドファイナンスも担当。2020年2月に同社取締役に就任。ライナフの組織拡大を裏側から支える。

松原 正和
MASAKAZU MATSUBARA松原 正和

ソフトウェアエンジニアとして、ロボットやシステム、Webサービスの企画・開発を経験した後、ヤフー株式会社に転職。新規Webサービスのプロダクトマネジャーなどを歴任する。その傍らで、弁護士資格を取得し、法律事務所でのキャリアもスタート。ライナフの特許申請に携わったことで代表の滝沢と親交が生まれ、2020年にライナフへ入社。現在では法律家としての経験を活かしながら、技術部門の組織統括とプロダクト開発全体の技術戦略を指揮する。