急成長フェーズにある、不動産テック企業。パーパス実現を見据えた採用戦略とは。

株式会社estie
株式会社estie

ASHIATO導入背景

2018年の設立以来、商業用不動産に特化したSaaSを展開し、事業拡大をしてきた同社。直近3年間で従業員数を約5倍に拡大するなど、急成長を実現している。

しかし人材獲得競争が激化する中、年々に採用の難しさを実感。急成長の勢いを止めないよう、スキル面だけでなく、カルチャー面でもマッチする人材を採用するのは簡単ではなかった。そこで、『ASHIATO』を導入することに。従来の選考スピードを維持しながら、採用精度の向上を実現した。

この記事のポイント

商業用不動産に特化したSaaSを展開するスタートアップ。2024年10月にはシリーズBラウンドで28億円の資金調達をするなど、右肩上がりで成長を続けている。

直近3年間で組織規模を5倍に拡大。急成長の勢いを止めないよう、スキル面とカルチャー面でマッチングを図りながら、事業拡大していけるかどうかが課題だった。

年々に競争の激しさを増す採用市場。『ASHIATO』を活用することで、面接回数を増やすことなく、採用精度の向上を実現した。

世界最大級の不動産市場を、データとテクノロジーの力でアップデートする。

ASHIATO

「商業用不動産に特化したSaaS」という新規性の高いサービスが印象的です。改めて、貴社の事業について簡単にご説明いただいてもよろしいでしょうか。

当社は、オフィスビルや物流施設といった商業用不動産に特化したSaaSを展開しています。具体的には、全国8万棟・40万フロアの建物情報などを提供する日本最大級の商業用不動産データ分析基盤「estie マーケットリサーチ」をはじめ、複数のサービス開発および提供をしています。不動産取引には多くの企業や関係者が関わっており、企業ごとに独自のデータベースを運用しているのが現状です。

そのため、社内で情報の更新や共有が遅れることがあり、タイムラグやコミュニケーションコストが生じています。そこで当社のサービスでは、アナログなデータをデジタル化し、統一的なデータベースを構築。リアルタイムかつ双方向の情報共有によって、滑らかな流通を可能としています。

ASHIATO

まさに、「不動産をDXする」サービスですね。こうしたサービスは、海外などでは主流なのでしょうか。

まだまだ日本では新規性の高い分野ですが、先行するアメリカでは兆円規模の上場企業や未上場ユニコーン企業が複数存在しています。中には、時価総額が約5兆円にもなる企業も台頭している状況です。日本と海外で大きな差が開いているようにも見えますが、実は、商業用不動産の都市別市場規模ではニューヨークやパリ、ロンドンなどを差し置いて東京が世界1位とされるデータがあります。
つまり、国内における商業用不動産テックのポテンシャルは計り知れず、当社がパイオニア企業として市場の創出および拡大を進めていきたいですね。

ASHIATO

ちなみに現在は、どのような企業で活用されているのでしょうか。

現在は、大手企業を中心に導入していただいています。総合不動産デベロッパーやJ-REIT資産運用会社のそれぞれ資産規模上位10社の7割以上に導入済みで、その割合を増やし続けています。今後のプロダクト拡張を通して、大手企業の導入率100%を目指すことはもちろん、より幅広いお客様にご活用いただきたいと思っております。

また、新しいお客様にご導入いただくことだけでなく、当社の展開している複数プロダクトを組み合わせでご活用していただけるよう営業・開発を推進しております。結果として、MRR(月次経常収益)は導入企業数と月額利用料の両軸によって伸長しています。

ASHIATO

新規性の高いサービスだと思いますが、競合サービスも現れ始めているのでしょうか。また、それらに対する強みも教えてください。

創業タイミングでは「不動産テック企業」というカテゴリーの企業は少なく、競合企業はゼロに等しい状況でしたが、現在は少しずつ増えていると感じています。しかし、当社のサービスのように、商業用不動産データを軸として幅広いニーズをカバーできるサービスは未だに存在しません。こうした状況を作り出しているのは、リリース当初より「不動産業界全体をDXする」という高い目標を掲げてプロダクト開発に注力していることが大きいですね。社員の半数以上が開発メンバーで、スピード感を持って顧客ニーズをもとにプロダクト開発やアップデートを行なっています。

ASHIATO

なるほど。ちなみに、今年10月にはシリーズBラウンドで28億円の資金調達を実現されました。今後の展望はいかがでしょうか。

調達した資金は主に、「M&Aの推進」「人材採用によるプロダクト拡張」「AI技術への積極投資」に活用します。不動産業界におけるデジタルインフラ構築を加速させることで業界のDXを推進し、パーパスの実現に向けてより一層尽力したいですね。

シリーズB 資金調達特設サイトはこちら:https://www.estie.jp/series-b/

急成長フェーズにあるスタートアップ。重視するのは、スキル・カルチャー両軸でのマッチング。

ASHIATO

直近3年間で従業員数を約5倍に拡大するなど、急成長を続けているかと思います。これまでの組織規模の推移を教えてください。

私が2021年に入社した際は、社員数20名ほどの小規模な組織でした。その後、年間20~30名のペースで社員数を増やし、現在では約100名にまで増えました。現在もプロダクト開発の人材を中心に、採用活動を行なっており、今年1年で30~40名ほどの採用に届く見込みです。

ASHIATO

パーパスやValuesも印象的ですよね。選考では、スキル面だけでなくカルチャー面でのマッチングも重視しているのでしょうか。

はい。スキル面よりむしろ、カルチャー面でのマッチングを重視しているかもしれません。というのも、現在当社は急成長フェーズにあります。この勢いを止めないためにも、会社の考え方や想いに共感し、ともに成長にコミットできる仲間を増やすことが重要です。不動産業界の知識といったハードスキルは、入社後に身に付けられれば問題ありません。

選考時には、ある程度のスキルを有していることは前提ですが、それ以上に当社のカルチャーへの共感度や仕事に対する価値観などを確かめています。今年9月にはValuesをアップデートしたばかり。考え方や想いを大事にする会社だからこそ、カルチャー面でのマッチングには特に注力しています。

ASHIATO

ちなみに、カルチャーに合うかどうかは、どのように確認しているのでしょうか。

マイパーパスを言語化できるかどうかです。マイパーパスとは、自分がやりたいことや実現したいこと。どんな時も魂を燃やして仕事に取り組むためには、そうした信念のようなものが欠かせないと考えています。もちろん、内容は何でも構いません。たとえば、「家族を大事にしたい」ということでも、それについて日々考えているか、自分の言葉で伝えられるかが重要。社員一人ひとりがマイパーパスを持って仕事に向き合うことが、当社のパーパスを実現する原動力にもなると考えています。

ASHIATO

採用担当としては、今後会社をどのようにしていきたいとお考えでしょうか。

やはり、パーパスの実現に近づきたいというのが一番。そのためには、スタートアップとして競争に勝ち続けることが重要だと考えています。常に1歩2歩先を見据えて行動できているかどうか。スタートアップはマクロにもミクロにも影響を受けやすいからこそ、先んじて行動することが欠かせません。

採用担当としても、中長期的に成長を続けていくにはどのような人材や環境が必要なのかを考え、本質的な採用活動のほか、労務体制や評価体制の整備をしていきたいと考えています。

競争が激化する採用市場。いかにして選考のスピードと質を両立するかが課題に。

ASHIATO

あらためて、『ASHIATO』を導入するきっかけとなった課題や出来事があればお聞かせください。

急成長フェーズにある当社では、スキル面だけでなく、カルチャー面でのマッチングも大切にしています。そのため、選考では候補者をきちんと見極める必要があります。しかし、年々に競争の激しさを増す採用市場では、選考スピードも競争力となるのが事実。特にエンジニアなど開発メンバーとして活躍できる人材は求人倍率が高く、採用がどんどん難しくなっていると感じています。

見極めのために面接回数を増やすことは簡単ですが、こうした状況では採用上の競合に対して不利になりかねません。そこで従来の選考スピードを維持しながら採用精度を高められる方法はないかと考え、『ASHIATO』を導入することになりました。

ASHIATO

現在、どのように『ASHIATO』を活用しているのでしょうか。

主に、最終面接前に全候補者に回答していただいています。レポート結果を踏まえて、最終面接でのコミュニケーションの取り方や見極めの仕方を工夫しています。また、面接では知り得なかった情報を知ることができるため、選考だけでなく、その後の受け入れ・フォローなどにも活かしている状況です。

時には、レポート結果から「選考で感じていた以上に活躍可能性が高いかもしれない」と感じられるような、サプライズな情報が出てくることも。そうした際には、オファー年収を上げるなど条件面を調整することで、マッチング確率の最大化にもつなげることができています。

レポート結果と実際の活躍度を照らし合わせ、採用精度を向上。

ASHIATO

『ASHIATO』の活用を通じて、採用活動の精度に変化はありましたか。

候補者を見極めるという点でもそうですが、「どのような人材を採用すればいいのか」という点でも精度向上に役立っていると感じています。具体的には、活躍している社員のレポート結果から共通点を見出し、「どのような特徴がある人材の活躍可能性が高いのか」がより明確になりました。また、カルチャー面でのマッチングを図るためにも、事前に当社のパーパスやValuesと候補者の生き方や考え方に通じるところはどこかと考えることで、最終面接でのコミュニケーションを最適化することもできています。

ASHIATO

最後に、『ASHIATO』への期待を教えてください。

「産業の真価を、さらに拓く。」というパーパスの実現に向けて、当社はこれからも成長を続けていかなければなりません。採用活動においては、引き続きスキル面とカルチャー面でのマッチングを両立させ、事業成長に貢献していきたいと考えています。『ASHIATO』は、採用においてだけでなく、さまざまなシーンで当社の意思決定に役立っています。今後も採用という枠に留まることなく、活用していきたいです。

ASHIATO

山本さん、貴重なお話をいただき、誠にありがとうございました。

<取材/編集>小野山伸和、橋本真吾
<取材/文章>大原正太郎
株式会社estie

株式会社estie

会社概要

「産業の真価を、さらに拓く。」をパーパスに掲げ、商業用不動産業界が抱えるデータ流通の課題をデジタルシフトにより解決し、業界の取引を滑らかにするサービスを展開するスタートアップ。日本最大級の商業用不動産データ分析基盤「estie マーケット調査」を中心に、未公表のプロダクトを含め計10個のサービス開発および提供をしている。2024年10月には、シリーズBラウンドで28億円の資金調達を実現。今後も、不動産業界におけるデジタルインフラ構築を加速させることで業界のDXを推進し、パーパスの実現を目指す。

https://www.estie.jp/

従業員数

93名(2024年10月時点)

インタビュー
山本 絢子(やまもと あやこ)
YAMAMOTO AYAKO山本 絢子(やまもと あやこ)

1992年兵庫県生まれ。上智大学卒業後、2015年にアクセンチュア株式会社へ入社し、中長期戦略・新規事業立案支援などに従事。2018年にベンチャーキャピタルにてスタートアップ投資・支援を経験。2021年4月よりestieへ参画し、2024年11月より執行役員 ピープル&コミュニケーション本部長を担っている。